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異世界都市伝説大戦【改稿版】  作者: 知恵利一
第1部 死と生
16/33

第16章 嫉妬の眷属



 夜の嫉妬区。

 黒い雲が垂れ込め、月明かりさえ隠していた。

 湿った空気の中、双雷と水京は森を進む。


「……妙だな」

 双雷は立ち止まり、肌に走る感覚を確かめた。

 瘴気が渦を巻いている。


「来る……!」

 水京が弓を構えた瞬間、森の闇が蠢いた。



 現れたのは、人型とも獣ともつかない影。

 無数の眼が爛々と光り、どろりとした声が辺りに響く。


《妬ましい……妬ましい……!》


「……くそっ、またあの声か!」

 双雷は釘を構える。


「師匠が言ってたわ。化身の“眷属”よ」

 水京の顔が引き締まる。


 数は十を超える。

 しかも動きは速く、獣のように四肢を地につけ、森を駆け抜けて迫ってきた。



「まとめてぶっ飛ばす! ――【飛雷針・連弾】‼」


 双雷が放った稲妻が三体を貫き、眷属は絶叫を上げながら黒煙となって消えた。


「いい威力じゃない!」

 水京は息を合わせるように炎の矢を連射する。


「――【火焔矢・連射】‼」

 炎の雨が降り注ぎ、眷属たちを次々と焼き払った。


 だがその中で、一際大きな影が立ち上がった。

 腕が四本、顔が歪んだ嫉妬の塊。


「デカい……! こいつがリーダーか!」



 四本腕が地を抉るように振り下ろされる。

 双雷はバリアで防ぐが、衝撃で吹き飛ばされた。


「ぐっ……重てぇ……!」

「双雷!」


 水京が炎の矢を放つが、四腕の眷属は咆哮し、炎を吹き飛ばすほどの瘴気を撒き散らす。


「効かない⁉」



「なら……これだ‼」

 双雷はポーチから特注の釘を取り出した。

 鍛冶屋・鋼次が打った“強化済みの三寸釘”。


「――【飛雷針・集轟】‼」


 三本同時に放たれた雷撃が直撃。

 眷属の巨体が震え、頭部が爆ぜる。


「よっしゃ……決まった!」



 だが、霧散する寸前。

 巨影は最後の力で呟いた。


《……主が……妬みの王が……待っている……》


 その声に、双雷と水京は息を呑む。


「……やっぱり、本体は別格ってことか」

「ええ……でも今の連携なら、きっと通じる」


 互いに目を合わせ、頷き合う。

 前哨戦を超えた二人の心には、確かな自信が芽生えていた。



 ――だが。

 森のさらに奥から、圧倒的な瘴気が再び溢れ出す。

 それは先ほどの眷属など比べ物にならない、桁違いの存在感だった。


「……来るな」

 双雷の額に汗が伝う。


 嫉妬区を蝕む本体――【嫉妬の化身】との決戦は、もうすぐそこまで迫っていた。

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