第15章 命を削る修行
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翌朝――。
境内に朝日が差し込むと同時に、宮司・水京の号令が響いた。
「立て、双雷、水京! これから始まるのは、遊びではない。命を賭して挑む“修行”だ」
双雷は大きな欠伸をしながら立ち上がる。
「ったく……寝起き一発目からこれかよ」
「文句言ってる暇があったら走れ‼」
容赦なく投げつけられた御幣が双雷の頭にクリーンヒットする。
「いってぇーー!」
隣で水京がくすりと笑った。
「ほら、アンタ。師匠の修行は甘くないって言ったでしょ」
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修行は苛烈だった。
朝は神社の石段を百往復。
昼は滝に打たれながら神力を維持する瞑想。
夜は瘴気に満ちた森に入っての実戦訓練。
「ぐっ……はぁ、はぁ……足が動かねぇ……」
膝をつきそうになる双雷を、宮司の冷たい声が叩きつける。
「立て‼ その程度で潰れるなら、化身の瘴気に触れた瞬間に死ぬぞ!」
水京もまた限界まで弓を引き続けていた。
指先の皮は裂け、血が滴っている。
「うっ……くぅ……!」
「炎の矢を保て、水京! 痛みに耐えられぬ者が、この区を守れるか‼」
二人の悲鳴が境内に響き渡った。
だが、不思議と心は折れなかった。
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三日目。
夜の境内で双雷と水京は倒れ込むようにして息をついていた。
「……死ぬかと思った……」
「同じく……」
力なく笑い合う二人。
その様子を見ていた水神宮司は、厳しい顔を少しだけ和らげた。
「よく耐えたな。お前たち、少しは“器”が広がった」
「器?」
双雷が顔を上げる。
「神の力は器に注がれる水のようなもの。器が小さければ溢れて身を滅ぼす。だが――鍛えれば広がる」
「……ってことは、俺たちの体は……」
「以前より多くの神力を宿せるはずだ」
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宮司は二人に神具を差し出した。
「双雷、お前には雷神の力をさらに引き出す【雷の護符】を。
水京、お前には炎を増幅させる【火浄の腕輪】を与える」
双雷は護符を握りしめた瞬間、体内の雷が奔り出すのを感じた。
「おおっ……! 力がスムーズに巡ってる!」
水京もまた腕輪をはめ、炎の矢を試す。
放たれた矢は以前の数倍の輝きを放ち、夜空を照らした。
「……すごい……」
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その光景を見届け、水神宮司は言った。
「次に来るのは試練ではなく――戦いだ。嫉妬の化身との」
双雷と水京は互いに目を合わせ、力強く頷いた。
恐怖はあった。
だが今は、それ以上に燃えるものがあった。
「必ず倒す。俺たちで――!」
「この嫉妬区を守るために!」
境内に雷光と炎が交差し、新たな誓いが刻まれた。




