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40(ジョシュア視点)



エルヴィスが人間の少女を連れてきた時に、困惑や焦り…興味や好奇心も入り交じった感情と、同時に奴自身に不信感を抱いた。


散々妖精という者を、物扱いし利用して…

挙げ句の果てに独占したいという、醜い欲から争いになった弱者と一緒にいる奴は、頭がおかしくなったのではないかと。


ただ奴は、この少女からシャインという名を受け、契りを交わしていた。


その少女は今世では初の、俺たち妖精を見える純粋で安全な人間…なのだが、どこかこの世界とは違う風を纏っているような…他の人間とは違うかもしれないと錯覚しそうになる。




(はっ…どうせこいつも…端から裏切られるなら期待なんかしねぇ…)



そう心の中で呟くと、過去の人間達の行いを思い出し、嫌悪し…辟易し…悪感情を募らせていた。





すると心の中に耳障りにほくそ笑む声が聴こえてくる。



(ふふっ…君って結構デリケートなんだね?

言っとくけどジェシカは僕だけの主人だから、君は期待する必要はないよ)



ちなみにシャインだから、と俺をムカつくくらい、にこやかな顔で見てくる目の前の相手にどういう意味だと心の中で返すが、答えは返ってこなかった。



そんなやり取りがあるとは露知らず、何故か目の前の少女が苦しそうに謝罪をしてくる。



何に対しての謝罪なのか、というのは多分…人間を代表して今までの行いを詫びているのだろう。



そんな安い謝罪など要らない、そう思っていたはずなのに、髪が地面に着くほど謝り、真っ直ぐな黄金色の瞳でこちらを見つめてくる姿に、思わず胸が刺されているような痛みを感じる。

手を伸ばして…触れてみたいとも、思ってしまった。




(なんなんだ…このガキは…)




そう思っていると、過去にそんな人間もいたなと記憶を巡らせる。


ほんの些細な事に対し、謝り…相手を責めればいいのに自分を責めて、全ての負を背負い込む…


弱い人間ながら弱いことを取り繕ろうと、俺に作り笑顔を向けてきた人間が…




〘……………………しないで…〙





あまりにも昔の事で、誰が何を言っていたかは思い出せない。


歯痒い…とはこのことなんだろうか、憎みすぎて、大切だった大事だった思い出や記憶すらも霞んでいた。





すると目の前の少女が、俺に真っ直ぐな瞳をぶつけて、口を開いた



「……ジョシュアは、わたしが…人間が嫌いかもしれないけども、あなたにどう思われようがわたしはあなた達妖精をとても愛おしく思うわ…


白黒はっきりしていて人間以上に真っ直ぐで純粋…

でもね、人間と同じように嬉しいや悲しいという感情はあなたにもあるから…


だから…お願いだから、そんなに苦しそうな顔をしないで…」



〘……お願いだから…わたしの為なんかに、そんな苦しそうな顔をしないで…〙




「…………っ」


少女の言葉と、記憶の中での言葉が重なった。

偶然とは言えあまりの出来事に、瞼が自然に開いていくのが分かる。

誰が何を言ったのか、霞みが晴れていくように鮮明に思い出した。




記憶の中の少女は、目の前の少女より歳は上くらいの、村一番の美しい娘だった。


親はいなく一人、誰の助けも妖精の魔法でさえ当てにせず逞しく生きていた。


何にも頼らない、その少女の姿を俺自身は正直面白いと、そのうち少女をからかうようになっていた。


だが…はたから見たらその行為を面白くないと、俺の

上級魔法の恩恵を授かっていると嫉妬に駆られた他の人間達はその少女とは口を聞かなくなっていた。


ただでさえ一人で孤独に生きているのに、誰も助けずわざわざ手を差し伸べない、そんな人間達に嫌悪感を抱き始めていた。


だがその少女は、俺以上に辛いはずなのに…



〘わたしの為に、怒らないで…わたし為なんかに、そんなに苦しそうな顔をしないで…〙


そんな俺を気遣うように言われた、優しくも…これ以上踏み込んで欲しくないという拒絶を意味している言葉だったことを、当時は知らずにいた。



そう少女はその言葉だけを残し、どこか遠くへと言ってしまった。

少女の気配も風も、何も感じず…この世界からは消えてしまったのだと悟った。









そのまま暫く記憶を巡らせ、現実へと…目の前の少女へと向き直る。



あの時俺は、何と言ってやれば良かったのだろうか…

目の前の少女を見つめながら思う。


今更後悔しても遅いはずなのに、思い出せば思い出すほどあの時の記憶は鮮明で、歯痒い。



もう一度過去に戻れるのであれば、選択を間違えたくない。

だが、それは過去だ…今更塗り替えられはしない…


それならばせめて、次は選択を間違わないように行動したい。




(…少し、期待してもいいのかもしれない…)




そう思っている自分がいた。

今までの敵意はなく、今度は間違えないように…正面からこの少女に向き合ってみたいと、




(もう、あんな顔は二度と見たくないと思っていたが…)




意を決して、真正面から少女を見つめると俺自身が少し怖いのだろうか…我慢しながら俺を見つめてくるいじらしい瞳とかち合う。






(愛おしい、か…なるほどな……

確かにこれは、愛おしく思うわな…)



そう思い少女を抱き締めるシャインと目が合う。

腑に落ちない様なあからさまな敵意が向けられる。





「…決めたぜ」




そう決心すると、目の前で睨み続ける相手に思わず口角が上がり、笑ってしまう自分がいた。






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