新人ちゃん
よろしくお願いします
「へぇ、面白いわね、それ」
カトレアが三日月を見ながら、そんなことを言う
「まぁな、こんなことも出来るんだぞ」
俺は三日月を変形させて、マジックアームの形にする。そして近くにあった手軽な置物をマジックアームではさんで、自分の方まで持ってくる
「.........すごいんじゃないかしら?」
カトレアの反応は微妙だった、アンとレアに見せたら大喜びだったのに、おかしいな
(逆にそれでウケると思ってたアレウスさんに驚きですよ)
いや、一応実績あるからいけるんじゃないかと思ってたんだけど
よし、次はカグヤありにでもやってみようか
◇
結局その後カグヤ、シル、ミラの順に見せていったのだがみんな反応は微妙だった。とりあえずみんな少し同情的な目をしてたけど
終いにはミラに「流石ご主人様です、ですが外ではあまりやらない方がいいでしょう」とやんわりディスられた
とりあえずアンとレアに見せたら大ウケだったから、俺の心のバランスは保たれたで......たぶん
「まさかみんなに試すとは思ってなかったわよ......それでアレウス今日はアレウスも孤児院に?」
「そうだな、ギルドに行ってからいきたいんだがそれでもいいか?」
「いいけど、なんで?」
「まぁなんというか孤児院の依頼を受けたいんだよ。まぁあったらだけどな、あとドーラに少し用がある、顔を出しておくべきだと思うから」
正直ブリストンを出て以来1回も会ってない。何度か手紙のやり取りをやってはいたが、まぁ一応顔は出しておくべきだろう
「そういうことね、なら私たちはアンナのお手伝いして待ってるわ」
「あぁ悪いな、じゃあ行ってくるわ」
「早く帰ってきてね!」
「エレナとアリサと早く遊びたいです!」
どうならアンとレアはエレナやアリサたちと仲良くなったみたいだ、それは嬉しいことだ
◇
そして冒険者ギルドにつく、ここに来るのも久しぶりだ。酒場の方を見るけどカインたちはいないみたいだ。あいつら今どこで何してるんだか
俺はとりあえずギルドの依頼書が貼られている掲示板に向かう
「孤児院の仕事の以来はまだあったか」
あったのは嬉しいけど、よく考えてみらばまだ大変だってことだろう。どうにかして孤児院の人員を増やすべきだろう
そして依頼書を持って受付に向かう。
ソニアがいると思ったが別の女の子であった。久しぶりに会うのは少し楽しみにしてたがしょうがない話だろう
「この依頼を受けたいんだけど」
「わかりました、ではギルドカードの方を」
そう言って俺はS級上がった時の黒いギルドカードを出す。なんだかブラックカードを出しているみたいで少し気分がセレブになる。
「.........あの、これはふざけてるんですか?」
「はい?」
いや、たしかにふざけていた気持ちはあるけど、普通にギルドカード渡しただけなんだけど
「何なんですか、この真っ黒なカードは...?」
「いや、だからギルドカードだって」
「なんですかあなたは!私をバカにしてるんですか!」
(アレウスさん、いったいこれは何が起こってるんですか?)
「(俺に聞くんじゃないよ。俺も困ってるから)」
さて、これはどうするべきか。まぁ俺の方が年上っぽいし、大人の対応でいこう
「バカにしてないって、S級冒険者のギルドカードの色は黒だって知ってるだろ?」
「そんなこと新人の私でも知ってますよ!だから私が言ってるのはあなたみたいないかにも怪しそうな人がS級冒険者なわけありません!あなたの顔を見ればわかります!その特に特徴もない顔とか!!」
......何故か顔ディスられてんだけど...
いや、たしかに俺、特別イケメンじゃないけどさ、別に怪しい顔ではないはずなんだけど
「それにこの依頼です!わかりましたよ、あなたは小さな子が好きな変態です!!」
(あ、それは当たってますね)
......エリーナは黙ってような?な?
しかしマジでどうしようか、流石にここまで言われると俺も大人な対応ができないんだけど
この子自分が新人とか言ってたけど、この子を受付に立たせて大丈夫なんだろうか
「はぁ...らちがあかない、ドーラに話を通してくれ、それで済む話だから」
そうだ、最初からドーラに用があると言っておけばよかったんだ
「あなた、あれですね!どこかのお店にいって、ちょっと自分の気に食わないことがあったら責任者を呼べとかいう、クレーマーさんですね!」
いや、違うんだけど。てかこの世界にクレーマーとかあるのかよ
しかしその後俺がなにを言っても受付の女の子は文句を返してくるばかり、だんだん声の大きさも大きくなっていき、ちょっとした騒ぎになり始めたていた
(アレウスさん、どうするんですか、らちがあきませんよ?)
もうこれは諦めて帰るべき気がしてきたその時ーー
「ベティ!!」
どこからか女性の声が聞こえる。俺の知っている女性の声だ
「ソ、ソニア先輩!?」
なんとその女性はソニアだった。
「あなた何やってるの!」
「いえ、あの、この男が自分のことをS級だと嘘をつき、挙句の果てにドーラ様に会わせろって言ってくるんですよ!」
嘘もついてないし、会わせろとまではいってないだろ、おい
「この人が......って、アレウスさん?」
「よう、ソニア、久しぶりだな」
「アレウスさん!お久しぶりです!!」
ほんとにお久しぶりだ。それにしてもいつ見ても思うけど俺の年上には見えない。少し小柄だし、可愛らしい容姿なので年下にしか見えない
「......失礼な事考えてませんか?」
「いや、考えてないぞ」
「そうですか、ならいいんですけどね?」
まぁこのやりとりもなんか久しぶりな気がする。しかしバレるわけにはいかない、バレると怖いから
「え、ええ?これはいったい......?」
おっと、この新人ちゃんのことを忘れていたみたいだな。どうやら名前はベティというらしい
「ベティ、この人はアレウス・アーレンハルトさんっていって、S級冒険者であり、アピエダ、そしてこの街ブリストンの領主である侯爵様よ?」
「えぇ!?この怪しそうなこの男が!?」
どんだけお前は俺を怪しい男扱いしたいんだよ。決して口には出さないけどさ
「こら、ベティ!!失礼だからやめなさい!確かにアレウスさんはいつもやる気無さそうだし、ひょうひょうとしてるから怪しいかと思うけど、この人は本物よ!」
おい、ソニア、あんたも随分失礼な事言ってるぞ?気づいてないのかい?
(アレウスさん、この際言っておきますけど、アレウスさん結構普段はやる気無さそうですよ?)
お前までいうかエリーナさん。いいよ、別にミラとかカトレアとかカグヤとかシルはかっこいいって言ってくれるし......カトレアは結構微妙だけど
「ほら、ベティ、私がアレウスの受付をやっておくからあなたはドーラ様のところに行ってきなさい」
「すいません、先輩。休暇中に」
「構わないわよ、ほら」
ソニアがそう言うと新人ベティちゃんは行ってしまう
「アレウスさん、本当にすいません」
「いや、構わない。それより休暇中って聞いたんだけどよかったのか?」
「えぇ、少しこちらの方が心配でしたから、それに彼との時間も充分過ごしたので」
「ん、彼って付き合ってる人でもいるのか」
「はい......」
そう言ってポッとソニアが顔を赤らめる
ソニアお付き合いしてる人いたんだ、どんな人か興味あるな。時間があった時にでも教えてもらおう
「そうか、じゃあ悪いけどこの依頼頼むわ」
「わかりました、孤児院の依頼ですね。懐かしいですね、そういえばミラも来ているんですか?」
そういえばミラとかソニアは仲良くなっていた気がするな
「あぁ来てるぞ、今度はミラも連れてギルドにくるよ」
たぶんその場合はカトレアもカグヤもシルも来そうだけど、まぁ別に問題はないか
「ソニア先輩〜、ドーラ様が部屋に通せと」
依頼の受注が終わると、ちょっとしてベティちゃんが戻ってくる
「わかったわ、ではアレウスさん行きましょうか」
例のごとく俺はソニアのあとに従ってついていく。そのあいだベティちゃんにずっと睨まれてたけどめんどくさいから無視しといた
◇
「久しぶりだね、どうしたんだいらいきなり」
「特に理由があるってわけじゃないけどな。あ、でも聞きたいことがあったわ」
そういえば聞きたくても答えられる人が限られる質問があった
「なんだい、聞きたいことって?」
「あぁS級冒険者になるとなんか義務とかあるのか?」
「あぁあるよ」
あ、やっぱりあるんですね。そうですか
まぁないわけはないだろうとは思ってたけどめんどくさいな
「まぁなんか王様から依頼があるんじゃないかい?」
「カイゼル陛下から?」
「あぁ今はほら、教団だっけ?その関係もあるから、それに関する重要な問題とかは回ってくることがあるんじゃないのかい?」
「なるほど、まぁ簡単に言ってしまえば氏名依頼みたいなものだな」
「そうだね、あるのは極めて稀だけど。そうだなでもあとあるとすれば...」
「ん?何かあるのか?」
「あぁ4年に1度大陸会議が開かれるのは知ってるかい?」
「いや、知らない」
4年に1度かオリンピックみたいだな。そういえばこの国というか世界にスポーツというものはあるのだろうか。なかったら俺が普及させて見ようかな
「あんた、ほんとに常識知らずだね。大陸会議ってのはこの大陸の国のトップたちが集まる、4年に1度の会議だよ。だから大陸会議、ちなみに大陸会議開催国には商人とかが流れてきてお祭り騒ぎになる」
なるほど、オリンピックに似た所があるな。あれはスポーツの祭典だけど経済効果は計り知れない、そういう点では似てると言える
「前回開かれたのは二年前だから次は2年後だね。開催国はここイリヤ王国だよ」
「それでその大陸会議と俺になんの関係がある」
「あぁ国のトップたちが集まるんだ。だから連れてくる護衛は超一流、各国に1人はだいたいS級かA級冒険者がいるからね、そいつらがやってるのさ」
「なるほど、次回は俺がやることになると」
「まぁそうだろうね、現時点であんたがこの国で1番強いだろうし、国王からの信頼も厚いだろう?」
なるほど、なるほど。まぁお祭りになるってんなら別にいいかな。それに護衛とは言ってもカイゼル陛下の後ろにたってるだけで良さそうだし、楽そうだ
「ま、そんなの2年後の話だから今話しててもしょうがないけどね」
「そりゃそうだな。まぁありがとう、ためになったよ」
「まぁあんたを推薦したのは私だからね、それに「死神」と「悪鬼羅刹」仲良くやれそうじゃないか」
「.........」
うん、忘れてたことをぶち込まれたよね。
なんだよ、その仲間を見つけた!みたいな目は!やめてくれ、やめてくれよ!!
「......まぁいい、またなんかあったら顔だすわ」
「そうだね、次はお土産ぐらい持ってくるんだね」
「わかってるよ、それじゃあな」
そう言ってドーラの部屋を出ていく
その後は少しソニアと話して冒険者ギルドを出る。あの新人ちゃんまだ睨んでたけど飽きないのだろうか?正直鬱陶しいとかそういうレベルじゃなかった
◇
「らんららーん!」
「らららーんです!」
アンとレアが上機嫌に俺と手を繋ぎながら歩く。今はみんなで孤児院に向かっている所である
「なぁ、ミラ、今回はどう思う?」
「ふふふ、そうですね。エレナちゃんなら来ると思いますよ」
「そうだな」
エレナは何故か俺が孤児院に入る前に俺の存在に気がついて、俺を出迎えてくれる。そして今回もそうなる気がしている
そしてそんなことを話していればーー
「あ、アレウスお兄ちゃん!!」
「エレナ!!」
ほらね、やっぱりエレナはオレが孤児院に来る前に俺を迎えてくれる
「お兄ちゃーーーん!!......あれ?アン.........?レア......?」
走りよって近づいてくるエレナが何故かだんだん走るスピードが落ちてきて、呆然としている
何故かその視線は俺ではなく、アンとレアに向いている
「ふっふっふ、昨日の友は今日の敵!」
「今日はライバルです!」
こらこら2人は何を言ってるの
「あっちゃー......やっぱりこうなるか...」
後ろからカトレアの呆れる声が聞こえる
振り向けばカグヤも困った顔をしている
(あー、なるほどわかってきました)
どうやらエリーナは何か理解したらしい
「勝負よ......」
「エレナ、どうした?」
「アン、レア!!私と勝負しなさい!!」
え、なに!?どうなってるの?!
「ふっふっふ、かかってくるがよい!」
「相手になるです!!」
ほんといったいどうなってるの!?
お読みいただきありがとうございます
第3章はほんとにバトル要素がほぼないんです!すいません!バトルものが好きで読んでいてくれる人がいるかもと思って言わせていただきます!
あと長くても10話ほどで第3章は終わらせようと思うのでこれからもよろしくお願いします!