第9話
がらがらーっ。
「ただーいまー」
「おかえりなさーい」
奥からクレールさんの声。
次いで、ぺちゃくちゃ喋るクレールさんとマツさんの声。
さー、とリビングの襖を開けると、2人は楽しそうにお喋り中。
マツさんがにこやかな顔を上げました。
「あ、テルクニ、聞いて下さい。カオルさんのお仕事」
「そこまで」
「何?」
「母さん、情報省の仕事なんて、聞きたくない」
「でも、話してくれましたよ」
「母さん達に聞かれたら、答えないといけないから、話したんじゃない? あまり外で話さないでね。と言うか、聞いたらいけない事の方が多いよ。りっちーとかユキにうっかり話しちゃダメだよ」
「う、ううん……」
「んー……」
「細かい所は話さなくていいから、何聞いた?」
「あの宗教団体」
「はーいストップ! もう聞きたくない。他の人には絶対に話さないでね」
宗教団体絡みで情報省の出番とか、あまり聞かない方が良いですよね。
「母さん達は、桃ウォーターで良いよね……」
かちゃかちゃ。
コップを出して、ジュースを入れて。
コンビニで1リットル銅貨10枚ぴったりの物ですけど、ハズレなしです。
果汁1%!? 薄っ! と思うけど、美味しいですよ。しかもノンカロリー。
とん、とん。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「じゃあ、カオルさんにもジュースあげてくる」
「はーい」
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「カオルさん、スキル構成良くない」
「そうですか?」
「戦士系ヒーラーだったら……」
かちかち。
「あるじゃん。飛翔天斬の空中コンボは必須だって」
「これはコンボのタイミングがいまいち分かりづらくて」
「指が覚えるって。ガーキャンでぶっぱしてからの……」
「ヒール系はこれ?」
「状態回復は必須でしょ。全体回復とー……戦士スキルで枠埋まっちゃうし、単体はなしでいいんじゃないかな」
「装備はこれで良いでしょうか」
かちかち。
「うーん、出血付いてるから悪くはないけど……電気系は必須」
「電気? ダメ安定しないですけど」
「ダメより麻痺が強いから。連撃系でスタック貯まるから、相性良いんだよね。麻痺中に回復とかフルボッコとか」
「ああ! なるほど!」
「連撃系スキルと電気は戦士系に必須だよ。ボスは耐性持ってるのが多いけど、ザコ狩り凄い楽になるよ。出血はボス系相手にって感じだから、ヒーラーでサポートやるにはそんなに要らないかなー。野良ボスには100%誰か居るし、8割ヒーラーに徹するくらいで」
「ふむふむ」
「秒で解除する奴もいるけど、その秒が大事なんだなー。戦士系やるカオルさんには分かるよね」
「分かります」
テルクニ君のネトゲ講座です。
「装備これ一式で集めたいタイプ?」
「はい。これのセットボーナスが良いと」
「戦士系ヒーラーなら鉄板だね。この装備で固めるんだったらー……んー、うーん……」
頭から足まで、防具をひとつひとつ細かい数値までチェック!
「……」
「んー! イマイチかなー。サポは出来るけど、戦士役としてはちょい脆い。防御力+のボーナスに目が行っちゃうって、初心者あるある。このレベル帯まで来たら、物理より状態異常耐性と属性耐性が大事。今日、掘る? ボーナスチケ、まだ余ってるから」
「良いのですか」
「良いよ。僕も素材欲しいし、良いの引いたらあげるよ」
「ありがとうございます!」
「あとねー、珠が良くないね。これ変えると、がつんと火力上がる」
「中々良くないですか?」
「弱点特効と会心率着けないと。どうせ複数属性付けるんだから、それで大体は弱点突けるでしょ」
「あっ! そうですね!」
「ティア6はドロ率0.3%だから、周回頑張るしかないね。ドロ率2倍イベでも0.6%だもんねー。まーティア5で妥協しても良いかな」
「では、武器は」
「単純な物理攻撃は、槍ならURロンギヌスだけど、1個下のSSRグングニル。元から水属性付いてるから、あと他の属性付いてるの狙う。で、弱点特効珠が発動。ね? 火力、ロンギヌス超えるから」
「なるほど!」
「槍使いにロンギヌス少ないでしょ? こーいう事よね」
「はあー! そうだったのですか! 単純に出ないだけかと……」
「そうじゃないんだよねー。雷は必須として、次点で火は欲しいよね。ザコは火に弱いの多いし。これで水、雷、火で3属性じゃん。贅沢言えば、闇欲しいね。闇あれば出血はいらないかな。火で炎上つけれるし。火、ボスにはあんま効かないけど」
「闇ですか?」
テルクニ君、ドヤ顔でにやにやしてますよ。
「ははーん。やっぱ闇ってそうなるよねー。ボス系、意外と闇効くの多いよ。神様ばっかじゃん。耐性持ちばっかじゃねえかよ! って思いがちだけど、あれ? 闇が刺さるの? みたいな」
「そうだったんですか!?」
「意外と攻略サイトに載ってないんだよね、これ。光も着けば最高だけど、まーそこまで贅沢言ってたら、いつまで経っても出ないから。雷属性と火属性狙って掘ろう。スロット数増やせるアイテムある?」
「あります!」
「完璧! 掘り周回だね!」
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その頃、冒険者ギルド社長室では―――
「ワッツザファック! タナカ君、このニュースはウォッチしましたか?」
タナカ君は副社長です。
この方言ばりばりの人は、冒険者ギルドの社長、オオタケさんです。
「何の記事でしょう」
「ミスタートミヤスが、ダンジョンをビギンするみたいですよ!」
「おや? トミヤスさんがですか?」
「んー、これはメイビービッグチャンス!」
オオタケ社長は米衆連合の田舎生まれで、方言が凄いです。
タナカ副社長はこっちの都会生まれなので、たまに聞き取れない事があります。
「なるほど。何人か送ってみるのも、良い経験になりますか」
「バット、こっちのニュース。ボス部屋オンリーダンジョンみたいですね」
「ふむ……」
「まず、雑用人員がネセサリーか、アスクしてみましょうか? メニーのお客さんが来ます」
「何故です?」
「このニュース、トゥデイのナイトにはトゥーメニーアクセスになるでしょう。ももちゃんのZがソースなんですね……ドゥーユーノウももちゃん?」
「勿論」
「メイビー、こっちのニュースは、ミスタートミヤスのフレンドの、ヤンキーモンキーでしょう」
「ほう」
「もうリプがメニーついてますね。アクセスランキングに載ること間違いなし。アーリーなアクセスが良いでしょう。すぐテレフォン。ミスタータナカ、人員の候補を見積もって下さい。受付、医者、掃除……掃除はメイビーきついかもしれないですけど。デッドマンも出ると思いますからね」
「死人ですか?」
「ミスタータナカ、ドントノウ? ミスタートミヤスは、傭兵の間では首斬りサムライとコールされてるんですよ。傭兵時代、紛争地域でダイヤ鉱山にいたんです。何人キルしたかは、私もアイドンノウ。知りたくないですが」
「なんと!?」
面白い話し方をしますが、オオタケさんは頭も切れて、情報網も広いです。
「おっと、傭兵の話はシークレット。メニーの兵士を斬り殺してます。ミスタートミヤスは、これ隠してますから、検索しても出てきません。情報統制されていますね。ま、ミーには隠し通せませんけど」
と言うか、テルクニ君に頼まれて、冒険者さん達に口止めをしたのは、このオオタケ社長です。知ってて当たり前です。
「そうだったのですか……」
「サプライズしてる暇はナッシングですよ。人員の候補、頼みます。ビギニングはサラリーが出ないかもしれないですが、バット、ボランティア募集でオーケーです。ミスタートミヤスのヘルプなら、メニーの希望が出ます」
タナカ副社長が頷いて、社長部屋を出ていきました。
オオタケ社長がにこにこ笑いながら、電話を取ります。
かちゃ。
ぴぴぴ……電話帳を見て……
ぷるるるる。ぷるるるる。ぷるるるる。ぷるるるる。ぷる。
『トミヤスでーす』
「ハローオーウ、ミスタートミヤス。オオタケスピーキン」
『はい。何でしょう? 何かトラブル……あ、もしかしてダンジョンすか?』
「イーエース! うちから冒険者を送りましょうか?」
『いや、今の所は……何と言うか、受付の人と医者だけで良いかなって』
「しばらくボランティアでもオーケー! 少しシンクしてみて下さい! 雑用はネセサリーじゃないですか?」
『んー、受付や医者はもう決まってるんですが』
「ダンジョンルームの掃除は絶対ネセサリー! 流血もありますからね。集客、お客さんの案内、アザーもメニー」
『うーん、確かに! いや、そうですね』
「ナウ、ボスルームオンリーみたいですけど、アザーのルームの工事のヘルプも送りますよ! スポンサーもシンクしてます」
『む! スポンサーですか!』
資金の尽きかけている今、スポンサーの話はありがたいですね。
「リプライはナウではなくてもオーケーです。そのつもりはあるので、いつでもコールして下さい」
『ありがとうございます。少しメンバーと相談してみます。すぐ折り返します』
「イエス! ウェイトしてますよ! バイ!」
ぷつ。つー。つー。
ぴ。
「カオルさんに相談してみるか……」




