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第8話


 カオルさんは部屋を貸してもらう事になりました。


 荷物を開けて、早速取り出したのは、最新のゲーミングノートPC。

 凄いマウスですよ! ボタンいくつあるんですか!?

 そのマウスは超高かったでしょう!


 ぱかっと開けて……いきなりゲームですか?

 早速引きこもり生活ですね。


(傭兵 PMC サムライ ツジギリ)


 違いました。検索です。


 どうやらテルクニ君の危険な情報がないか、検索するようです。

 クレールさんの配下には、やり手の忍の皆さんが大量にいるので、まあ大丈夫でしょうが、念の為です。


「……」


 『伝説の傭兵 悪魔と呼ばれたサムライ①』


 いきなりトップに出て来た記事がこれです。

 写真は……ちゃんと顔と差料が黒塗り加工されています。

 ぼかしやモザイクでは、AIに復旧されてしまう恐れがあります。

 黒塗りでも、画像によっては……


 『※個人が特定される恐れがある画像は加工しています。ご了承下さい』


 これはレイシクラン忍衆の仕事です。

 レイシクランとは、クレールさんの実家の姓。お抱えの忍を飼っているんです。


 『刀を研ぐツジギリ悪魔』

 『少年兵達にサインをするツジギリ悪魔』

 『出撃前の姿。ツジギリ悪魔は銃弾を躱すという』

 『彼は誤射も避けるので飛び出ても平気だ、と笑う傭兵』

 『休憩中のツジギリ悪魔。右は元米衆連合軍の傭兵。左は魔の国の冒険者』

 『斬った兵の墓に祈るツジギリ悪魔。建ててある墓標は100を軽く超えている』


 ころころとホイールを回して下まで流し読み。


 常に先頭を走って行くのに、彼には弾痕がない。それどころか、傷跡ひとつない。筆者のインタビュー中にも銃撃があった。彼はいち早く飛び出て行った。私もテントに飛び込んだが、塹壕の中に引きずり込まれた。声は聞こえなかったが、他の傭兵達も走って行くのが分かった。


 その後、銃声と爆発音が15分程続いた。静かになり、顔を出そうとしたが、隣の傭兵に押さえられた。その時、彼が戻って来て『もう大丈夫です』と言って、一度後ろを見てから、私を覗き込んだ。


 塹壕から這い登ると、彼に怪我はなかったが、真新しい血で汚れた顔と戦闘服は、戦闘が既に終わった事が伺えた。ほっとしてカメラを構えようとしたが『今はやめて下さい』と言われ……


 『この続きは有料です。アカウント作成はこちらをクリック』


「ち」


 小さく舌打ちをして、画像を全DL。

 おや? 何やら見た事のないソフトを立ち上げましたよ。

 ドラッグアンドドロップ。


(加工は完璧ですね。流石はレイシクラン忍衆)


 ちゃんと黒塗りの部分は復旧されません。黒塗りのままです。

 検索結果画面に戻って、画像検索結果を流して見ていきます。


(ふむ)


 大丈夫そうです。

 テルクニ君、凄い活躍をしていたようですね。



----------



 そのテルクニ君は……


 近くのコンビニです。

 近くと言っても、原付で10分の距離です。田舎ですから、仕方ないですね。


 あ、ちょっと待った。まずいですよ。

 駐車場に、ドヤンキーが……田舎ならではの風景です。


 すごいバイクです。もろ違法改造です。

 あんな風防着けてたら、前が見えませんよ。

 ハンドルは勿論チョッパーで、三段シートです。


 知らない読者の為に説明します。

 三段シートとは、暴走族が着けてる背もたれ付きの椅子の事です。

 シートの背が高ければ高いほど良いらしいですよ。


 ヤンキー座りで丸く並んで、タバコを吹かしている人達を見てみましょう。

 わお! リーゼントですよ!

 あれはパンチですよ!

 あの人、眉毛がないです! 細いんじゃなくて、無いです!

 短ランと長ランしか居ません。勿論、下はボンタンです。


 昭和ですねえ……筆者の学生時代も昭和でしたが、ほとんど居ませんでした。

 でも、隣のS市(市と言っても山のド田舎)には、大量に生息していました。

 鞄はぺらぺらに潰して、中に鉄板を入れている人も居ました。怖いですね。


 危ない! テルクニ君を見て、立ち上がりました。

 テルクニ君、のんびりしていないで、早く逃げましょう! 囲まれますよ!


「「「オス! テルさん、はよざっす!」」」


 テルクニ君。あなたは普段、何をしているんですか?


「おう。お前ら、学校サボんなよ」


「いや、それテルさんに言われたくないすけど」


「剣聖候補の大魔術師ナメてんのかテメー」


「すませんした」


 テルクニ君……もしかして、頭と書いて『ヘッド』と読む系の人ですか?

 良い言葉で言えば、まとめ役ですね。


「あ、や、何つーか、自分もうガッコやめるんすよ」


「なんで? ついに退学処分? 何やらかしたの」


「あーいやいや! ちっとカノジョ妊娠しちゃってですね、働かないと的な」


 やっちゃいましたね……若気の至りの勢いで、避妊忘れちゃうのは駄目ですよ。


「お前な、王道踏みすぎだぞ。ちゃんと避妊しとけよ……10年くらいしたら、テレビ取材に来るパターンだろ? 派手なジャージの野郎が、昔はヤンチャしてましたけど今は真面目に働いてます、みたいな」


「いっすよね、ああいうの」


「良さげなナレーションに騙されんなよ。あれ、今まで社会にとってマイナスの存在だったのが、0になったってだけだからな。お前、プラスになれるのかよ」


「……」


「プラスにならねえと、社会に対しての今までのマイナス分が減らねえぞ」


 テルクニ君、やめましょう。皆、目を逸らしています。

 分かっちゃいるけど認めたくない真実です。まだ若いんですから……


「あ、ああ! そいやテルさん、ダンジョンやるんすか!? さっきももちゃんのZに投稿されたの見たんすけど」


 う! まさか、さっき投稿したばっかのが、もう?


「ま……まあ、やるよ……」


 カオルさん、早いですね! 流石のフォロワー1000万人!

 このヤンキーの人達もフォローしてたんですね。


「まじすか!? 俺らも行って良いすか?」


「良いけど、お前、ダンジョンて死亡事故不問だぞ。俺も真剣持ってくし」


「いや真剣とか勘弁して下さいよ……大体、テルさんと喧嘩するわけないじゃないすか。見に行くだけす」


「1部屋しかないぞ。金ねーし」


「は!?」

「1部屋すか!?」

「それダンジョンすか!?」


「仕方ねーだろーよ……俺しかいねえの。ボス部屋しかねえダンジョン。脇差ほしけりゃ相手してやる。売れば結婚資金どころか、マンションくらい買えるだろ」


「そりゃそすけど、無理す。まだ子供の顔見る前に、死にたくないすよ」


「ま、世の中、上手い話はねーよな……じゃ、この辺でな。今、家に客待たせてるからよ」


「「「ウス!」」」


 うぃーん。

 自動ドアが開いて、テルクニ君が中に入っていきました。

 テルクニ君、ヤンキー共のボス猿だったんですね。



----------



「っしゃーせー!」


 凄い勢いの挨拶ですね。


「や、イマイ君。頑張ってるねえ」


「押忍!」


 イマイ君、コンビニでバイトしてたんですね。


「今日からしばらく、客が増えるからさ。道場にも顔出すかもしれないけど」


「え。あれすか、出稽古みたいな」


「いや。俺の仕事、手伝ってくれんだ。カオルさんていう、女の人。一応、ウキョウ支部でトミヤス流やってたから、道場に行ったら失礼するなよ。皆伝はいってないと思うけど、前に会った時は、中目録はもらってるって」


「ちょっと待って下さい。仕事? 道場を増やすとかですか?」


 イマイ君、まだももちゃん(カオルさんのアカ名)のZを見てないようですね。


「あ、仕事中だもんな。さっき、Zに投稿されちまったよ。ももちゃん」


「ももちゃん? 誰ですか?」


「知らないの?」


「知らないです」


「まあ、後で探してみろよ。Zで、フォロワー1000万超えてる、ももちゃんって検索してみて」


「押忍」


 てくてく……


(百々(どど)ティーのレモンならハズレないかな)


 無難な選択ですね。

 テルクニ君はコーヒーです。

 お母さん達の分は何にしましょうか。


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