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第7話


 ぴろーん。


 サムキン(サムライキングダム:MMO完成形と言われるゲーム。サービス開始から11年目にして、まだ日輪国サーバーだけでも同接5万人超)をやっている時に、メッセージが届きました。

 テルクニ君は、現在レア素材を求めてダンジョン周回中です。


「誰だよ! めんどくせえなあ!」


 スマホを見る時は、敵の居ない所に移動してからです。

 ぴ。ぽん、ぽん。


(お?)


 『ももちゃん:明日行きます』

 ※ももちゃんはリアルニンジャ、カオルさんのコードネーム(アカ名)です。


(カオルさん、早いな)


 『Mr.TK:何時?』

 『ももちゃん:仕事終わったら。終電間に合わなかったら明後日』


(急いで来てくれんだ)


 ぴぴぴぴ!

 高速でテルクニ君の指が動きます。


 『Mr.TK:まだ何日か時間あるから休んでていいよ』

 『ももちゃん:こっちにいると新しい仕事が来る』


 忙しい事です。


(大変なんだ……)


 ぴぴぴぴ!


 『Mr.TK:ありがと』

 『ももちゃん:じゃ明日か明後日』


「ふーう」


 カオルさんも忙しそうです。情報省の仕事は大変ですね。


 ぴろーん。


 『ももちゃん:交通費は頼む』


「……」


 テルクニ君、そんな顔をしてはいけません。



----------



 翌朝の事。


 ぴんぽーん。


「はあーい」


 マツさんが玄関に行くと、知らない女の人が立っていました。

 金髪ロングのスーツの似合う素敵な女性です。

 でも、この独特の雰囲気は知っています。

 マツさんの目が細くなります。


「どちらのお方でしょう」


「情報省から参りました。カオル=サダマキと申します。18代目、カオル=サダマキです」


 マツさんの怖い顔が笑顔に!


「あら! あなたがカオルさん!」


「は。テルクニ様はおられますか」


「ごめんなさい、まだ寝てるんです。すぐに起こしてきますから……」


 ぱたぱたぱた……

 すぱーん!


「テルクニ! 起きなさい!」


「……」


 奥から聞こえるマツさんの声と、微かに聞こえるテルクニ君の寝ぼけ声。

 カオルさんも分かっています。

 昨夜は深夜までネトゲしてたに違いありません。



----------



 客間にて。


 ずずー……

 テルクニ君がお茶を啜る音が響きます。

 カオルさんは静かに飲んでいます。

 マツさんには、大事な話があるので、と席を外してもらっています。


「カオルさんはしばらく休み」


「と言いますと」


「受付やってくれない?」


「……」


「守り役、僕だけでいいから。魔神剣持ってくし」


 ぎく。

 カオルさんもびっくり。

 持つ者は神にも悪魔にもなれると言われる剣、魔剣を超える剣。

 それが魔神剣です。


「まっ、魔神剣ですか!?」


「うん。屋内でしょ。普通の刀で、振り回して欠けたり瑕が付いたりしたら嫌だもん。あれなら絶対に欠けないから」


「ま、まあ、それもありますが……」


「雷の力は使えないから。ほら、洞窟の中だし」


「あ、確かに」


 テルクニ君が湯呑を置き、テーブルに頬杖を付きます。

 面倒くさそうな顔!


「でさあ、カオルさんと先に相談したい事があって。やっぱり、契約書みたいなのいるかな? 死んでもOKみたいな」


「必要です。あと、爆発物の使用禁止は必要でしょう。崩落の恐れがあります」


「んー、まあ、だよね。じゃあ銃も使用禁止にしとく? 音出るし」


「それが無難です。サイレンサーならと言われましょうが、斬り落とされて発砲はありえます。ですが、軍人の皆様はどう致しましょう。見学席などはお作りに?」


「いや、全然。なーんもない部屋だけ! ただ掘っただけ! その辺は後かなー。資金がもう底尽きかけだし。お給料払ったら、すっからかん。お客さん呼ばないと」


 ふふ、とカオルさんが笑いました。

 これは何かありそうです。


「その点はお任せ下さい。お写真を宜しいですか?」


「写真?」


 カオルさんが立ち上がって、テルクニ君を手で招きます。


「ささ、こちらへ」


「?」


 言われるまま、カオルさんの前に。

 ぱ! とスーツを脱ぎ捨てると、カオルさんがメイド姿になりました。

 驚いたことに、髪がピンク色です。顔も変わってますね。

 どこから取り出したのか、カオルさんの手に自撮り棒。


「ほら、こちらへ」


「ええ? 恥ずかしいよ……」


 写真恥ずかしい病が出ています。


「宣伝の為です」


「ううん」


 がし。カオルさんが肩を組み、ぴーす!

 顔が全然違います。満面の笑顔です。


「笑って下さい」


「難しいね」


「はい」


「撮ったの? 音しないの?」


「しません。仕事道具でもありますから……」


 ぴ、ぴ、ぴ。

 写真をチェック。


「ううん、もう一度」


「まだ撮るのお? 恥ずかしいよ」


「笑って下さい」


 もう一度チェック。


「うん……まあ、良いでしょう」


「何に……」


 は! これはまずいですよ!


「ちょっともしかして!?」


「はい。Z(カオルさん使用のSNS)に上げます」


「やめてよ! 恥ずかしいよ!」


「宣伝になりますよ。私のフォロワーは1000万以上です」


 フォロワー1000万!? 凄いですね!


「む、むむ……」


 カオルさんは仕事の合間に、旅行や仕事先の食事、事故現場突撃取材などと偽り、色々な写真を上げています。

 動物系、子供系、飯テロ系、キャンプ系(実は屋外潜入中とか)もばっちり押さえていますし、変装も得意なので、コスプレ写真も上げてます。武術系も上げていますので、テルクニ君と写真を撮っても不自然ではありません。

 勿論、情報省の仕事に支障のない範囲でと配慮は完璧です。

 情報省のチェックも24時間体制で入っています。


「よしと。テルクニ=トミヤス、近日ダンジョン公開で……お宝は何を?」


「サダスケ。脇差」


「市場価格は?」


「金300くらいじゃない?」


「見せていただけますか? そちらの写真も上げましょう。美術家、古物商、刀マニアが飛びついてきます。刀は海外勢にもウケますよ。テルクニ=トミヤス秘蔵の逸品」


「別に秘蔵ってわけじゃないけど……」


 ぶつぶつ言いながら、テルクニ君が部屋に戻ります。

 その間に、カオルさんはしっかり写真をアップ。


 『今日はトミヤス道場に来ました! 剣聖候補テルクニさん!』

 『剣聖試験は写真を飾られるのが恥ずかしくて受けていないだけだそうですw』

 『凄く優しくて、お茶も頂き、写真まで! イケメンすぎ。お母さんも超美人』


(後でマツ様、クレール様の写真も……ええと、タグは……#剣術 #トミヤス流 #武術 #剣聖 #刀 #古刀 #侍 #サムライ #美術品……)


「はい、これ」


「失礼します」


 サダスケを受け取ったカオルさんの目は鋭いものです。

 拵えをチェック。

 抜いて刀身もチェック。


「この拵え、古く状態も良いです。300枚では安いですね。400枚でもいけます」


「あ、結構いけるね。拵え考えてなかった」


 一礼してテーブルに置き、写真をばしばし取ります。

 刀身、拵、金具のひとつひとつ。

 1枚1枚、細かくチェック!


「ううん、映りが綺麗に写りませんね。キホ物はそこらが大きな魅力なのですが」


「あー、カメラだとね。映りとか金線とか、中々綺麗に出ないよね。動画でも上手く出ないしね」


「仕方ないでしょう……この写真でいきますか」


 『これが最初のお宝! 脇差、銘サダスケ! 市場価格は金300枚以上!』

 『拵えもスゴイです! 金400はいくかも』

 『画像ではよく分かりませんが、映りが凄くキレイ! もろ古刀キホ物です!』

 『ダンジョン公開日は近日! まだ未定です! 腕に覚えありの人、募集!』


「よしと……これで大量の来客が見込めます。テルクニ様の腕もございますし、軍人も来られましょう」


「まじでえ……もう軍人相手はやだなあ」


「何故です? 認められれば補助金も貰えますし、訓練場としても使ってくれますよ。情報省も既に注目しています」


 テルクニ君、これは本当に嫌そうな顔。

 ダイヤ鉱床の護衛で散々相手してますから。


「ダイヤ鉱床行ってたの、知ってるでしょ……まあ、正規軍じゃなくて、PMC(傭兵の民間会社的なもの)だったけど。雇ったのは軍だろうけどさ」


「ああ」


 カオルさん、あの辺りは少年兵も大量にいます。味方にも、敵にも。あまり突っ込んで聞かない方が良いのでは……


「その、仕事の様子は……クレール様には? それで金を根こそぎ取られたのですか?」


 カオルさん、やめた方が良くないですか。


「話してないよ。ただの護衛で、たまに脅すくらいだと思ってる。トミヤスの名前出せば、ビビって逃げるだろ、みたいにさ。向こう、トミヤスって超有名だし。向こうの父さんのドラマの視聴率、知ってるでしょ」


「は……」


「そう思わせといた方が良いって。息子が何人も子供斬ってるとか、キツいでしょ。トミヤスは正義の味方じゃないのか、とかって言って死ぬんだ。やだよ。母さん付きの忍の皆にも、冒険者の人達にも、口止めしてる」


 テルクニ君は、銃ではなく、手で持った刃物で、少年兵達を直接斬っているのです。それはキツい……

 戦場で文字通りの問答無用で引き金を引いてくる相手に、話し合いがどうのとか馬鹿な事は言えませんよね。捕虜にしてからか、殺してから死体と話しましょう。

 そういうのは上の方々でやってて下さい。現場はそんな悠長な事は言ってられませんから。


「僕、傭兵の世界じゃ、首斬りサムライとかツジギリ悪魔とかって言われてるんだ。カオルさん、クレール母さんには話さないでね。キツい仕事してたから、取られた分のお金、返してあげてよとかさ。そういうのやめてくれるかな?」


「は」


 流石のカオルさんも言葉が出ませんでした。

 これはキツイです。


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