第6話
ダンジョンの基礎は掘ってしまったので、後は水道とネット回線。
今日は業者に相談です。
「場所、ここなんすけど」
テルクニ君が地図で洞窟の横を指差しました。
業者の人が首を傾げます。
「ここ?」
「あそこ、うちの土地なんすよ」
「ああ、町のじゃなかったんですね。名義は?」
「母さんです。マツ=トミヤス。許可はもらってます」
「ふんふん……現場行かないと細かい所は分からないけど、あそこに魔力回線引くのは無理だね。光になるけど」
この世界では、魔力を使ったネット回線が出来ているんです。
科学と魔術のハイブリッド技術です。
「光すか」
魔力回線は光より早いんです。凄いですね。
どういう仕組みなんでしょう。ファンタジーですから気にしないで下さい。
「洞窟前には、確か魔力回線は引いてたはずだから、そこから光で分岐するみたいな形かねえ。距離はないけど、山だし、工事は結構するよ。金20枚以上は見てね」
「んー……分かりました。じゃあ、取り敢えず見積もり立ててもらえますか」
「連絡先の番号は?」
「090の……なんだっけ。ちょっと待って下さい」
意外と自分のスマホの番号忘れてしまう人、いますよね。
テルクニ君もそのタイプです。
「あー、すません。090の……」
----------
水道も値段と評判をちゃんと調べて頼みました。
水道業者は気を付けて下さいね。
「さて……あと、なんだっけ」
お医者様ですよ。
あそこは魔術が使えない地域です。治癒師ではいけません。
「ああ、そうだった。ホルニさん所だ」
ぶぶん、ぶんぶん……びいーん……
ムハンマド号が走ります。
----------
ここはオリネオ市、ホルニ総合病院。
院長はソフィア=ホルニコヴァさん、32歳。この年齢で院長は超優秀です。
歳はちょっといってますが、まだまだいけます。少なくとも本人はそう思ってます。
ご先祖様譲りの巨乳ですけど、垂れないようにしっかり気をつけてます。
最近の悩みは年齢による乳糖不耐症で、お風呂上がりの牛乳でお腹が痛くなりがちなんです。
「ハァーイ」
「ちゃーす」
「何? 誰か怪我したの?」
「いや、今度、僕、ダンジョンやる事になったんすよ」
「……はあー?」
ぽかーん。
ソフィアさんもびっくり。
「場所がオリネオ洞窟の横なんで、治癒師無理なんで、誰かお医者さん居ないすか。ちゃんと給料出すんで」
「ん! んん、おほーん! え、何? テルクニ君、ダンジョンやるの?」
「そなんすよー! クレール母さんにやれやれ言われちゃって。もう掘っちゃったんで。やっぱ医務室とか必要だと思いますし」
「まじ!? えー、ちょっと待って。流石に医者は無理かなー。取り敢えず外科の医療技術あれば良い?」
「あ、それで良いすわ。よっぽどな感じの時は、手伝ってくれる人もいるんで」
自分と、スーパー・ニンジャ、カオルさんです。
「大体、来る人、怪我とか上等な軍人さんとか武術家とかだと思いますし、適当な感じで。僕も少しは出来ますし」
適当では良くないと思いますが、あまり厳しく言わないでおきましょう。
「んー……緊急扱いで通るかなあ。ちゃんとした医師免許持ちだと、ちょっとすぐには出せないねー。かといって治療ってーとねー。医師免許ないと、後で面倒だし」
当然ですよね。
「安いブラ◯ク・ジャック的なフリーの人、知らないすか?」
「いるわけないでしょ」
「ですよね」
「まあ、誰か見繕って送るよ。お給料次第かなー。テルクニ君の名前使って良い? その方が希望者増えるかもよ」
「いいすよ」
「そうねー。手続きもいるから、1週間待ってくれる?」
「大丈夫す。あと、ちょっと聞きたいんですけど、ちゃんとした医療器具とか揃えたら、どんくらい掛かりますかね」
「あはーん」
にやにやしてますよ。高いんですよね。
「簡単なので一式揃えたらー……いつ壊れるか分からない感じの中古で揃えても、金貨100枚くらいかな。上は上限ないね」
「上限なしっすか」
「メス1本。銀貨何枚ってやつもあれば、金貨何枚もするやつあるし。機材の値段見たらびっくりすると思うよ。いくらまで?」
「300枚以内で抑えてもらえますか?」
「おっけー。最初は一式の注文、出しといたげる。業者も紹介するから、次からは自分でね。私の名前出していいからね」
「あざす」
ソフィアさんが、まだにやにやしてますね。
「ね、ちなみに、お宝は何にするの?」
「最初はサダスケの脇差すかねー。市場価格で金300枚って所ですか」
「んー! サダスケ! 良いねえ!」
ソフィアさんの刀好きもご先祖様譲りです。
「僕は魔神剣使います」
「おいおい」
「いや、ダンジョンの部屋の中なんすよ。雲切丸、瑕ついたり欠けたりしたら、やじゃないすか。魔神剣なら安心ですし」
魔神剣とは!
トミヤス流開祖のカゲミツ=トミヤスの差料のうちの1本です。
900年程前に、海底から見つかりました。
これも、現代科学でも意味不明な力があるんです。
まず、どんなにぶっ叩いても平気です。
日輪国軍に協力してもらって、どこまで耐えられるか実験しました。
拳銃弾は平気でした。
アサルトライフルも平気。
スナイパーライフルも平気。
対戦車ライフルも平気でした。
最後には戦車を持ち出しました。44口径120mm滑空砲APDSDS(徹甲弾)が直撃しても平気でした。拵えは事前に外して、刀身のみで実験していたので、ちゃんと残ってます。軍にとっても非常に興味深い実験だったようで、好評でした。
当然ですが、持って受けたら肉片になって死んでしまうので、手で持って戦車砲は受けられません。残るのは無傷の魔神剣だけです。
ちなみに、それなりの日本刀でなら、銃弾は本当に斬れます。回転してるから斬れないというのはないです。勿論、欠けたりはします。
ですが、持っている人は大怪我するか、死にます。
斬れてもそのまま飛んできますから、当たり前ですね。
某泥棒アニメの白鞘で振っている人のように、足元にパラパラ落ちたりはしません。
石川某さん、白鞘で斬らない方が良いですよ。柄が割れてしまいますから。
鍔もないと怖くないですか? 柄巻してないと滑りませんか?
これ以上のツッコミはやめておきましょう。
フィクションですし、何よりこの世界はそれ以上にブッとんでますから。
魔神剣の話に戻ります。
もうひとつの力、天に向けると、雷が落ちてきます。
それを相手に向けると、雷が飛びます。怖いですよねえ。
残念ながらダンジョンは屋内なので、この力は使えないです。
もうひとつ力があります。投げても持ち主の所に戻って来るんです。うっかり落としても大丈夫ですから、紛失届を出さなくても平気です。便利ですね。
「えー! 見たーい!」
「まあ、ダンジョン開店したら、休み取って来て下さい」
「絶対行くー! 見積もり出来たら送るねー!」
----------
取り敢えずの注文は出しました。
今日は帰ってネトゲです。
(あーあ)
どっかり椅子に座って、マウスを持ちます。
勿論ゲーミングマウスですよ。銀貨で80枚もしたんです。
(そっかー。これも運ばないと……てー)
PCには電気が必要です。どうしましょう。
「んー……んー……」
電線を引いてきましょうか。また工事費が増えます。
ぽん! 思い付きました!
(大型バッテリー!)
クレールさんの危険なバイトから思い付きました!
でかいバッテリーを買いましょう!
充電はテルクニ君が……
(魔術使えねえー!)
そうです。
オリネオ洞窟の周りは、魔力異常で魔術が使えないんです。テルクニ君の魔術で充電は出来ません。工事しかないんです。
「うへえー」
これからサムライキングダムをやろうと思っていたのに、残念!
さらー。とん。
襖を開けて、さあ行こう!
「母さん。出掛けてくる」
「あら。またですか?」
「うん。ダンジョン、電気も引かないとね。部屋とか廊下とか真っ暗じゃ困るし」
「あ、そうですね……」
「あ、廊下はいいかな? ダンジョンだし……まあ、医務室は絶対必要でしょ。機械使うし。バッテリーで良いかって思ったけど、あそこ魔術使えないから、充電出来ないしさー」
マツさんが腕を組みました。何か閃きましたか?
「魔術が使える所まで電線を引っ張って、そこにバッテリーを置いたら良いではありませんか。工事費より安く済みませんか?」
「はっ!」
良い閃き! これなら電気代も掛かりませんよ! 大型バッテリーは高いですけど、電気代の事を考えると、長い目で見れば安く済みますね!
「あー! 流石、母さん!」
「おほほほ! もっと褒めてくれて良いのですよ!」
「天才! ナイスアイディアっ! それでいくわ!」
「おーほほほ!」
「注文しとく。いくらくらい掛かるかなー」
「よく知りませんけど、金貨10枚も出せば、一月分は持つ物が買えるんじゃないですか?」
「10枚かあ……どんどん金が出てくー!」
「うふふ。頑張って下さいね」
これは発電所の人に相談してみましょう。蓄電量は余裕のある物にしましょうね。いざと言う時、医療機器が動かないと大変ですから。




