第38話
さあ始まりました、教えてフギ先生チャンネルの撮影!
フギ先生のリクエストは、奥伝の無願想流を見せて!
奥伝なのに……あ、いいすよ。軽い返事!
というわけで、受け手はカオルさん。
テルクニ君は壁際。
「この辺なら見えるかな? カオルさん、行きますから、しっかり受けて下さいね」
「は、ははっ!」
びし! とカオルさんが構えた瞬間!
びゅーん! ばちこーん!
「ああっ!?」
受けはしましたが、竹刀が顔にモロに! これは痛い!
ごてーん。
受けきれずに、背中から落ちてしまいました。
「ごほっ……」
カオルさんをすっ飛ばして、反対側の壁際。竹刀を横に払うように回して、くるん、と回りながら、テルクニ君が立ち上がりました。
「あっ! ちょっと、ちゃんと受けてって言ったじゃない。大丈夫?」
「私は受けました……無理です……」
フギ先生も、タノツカさんも、呆然です。
「全くもう……よいしょ」
テルクニ君がカオルさんの背中に手を入れて、治癒魔術。
ほわわん。
うへえ、とカオルさんが立ち上がりました。
「いや、宗家。あれを受けろとは、無理な注文です」
「何言ってるの。竹刀じゃない」
「重すぎます! その竹刀、鉄でも入れてあるんですか!?」
「ないよ! ほら、持ってみなよ。全く、中目録が泣くよ……」
フギ先生も、タノツカさんも、未だに呆然です。
「よっこらせ。ほらカオルさん、顔も見せて……フギ先生、こんな感じです」
「は? はあ……うん? どうなってるの? 魔術は使ってないよね?」
「勿論です。剣の技術です」
「どういう事? 何であんなにすっ飛べるの?」
テルクニ君、にっこり。
「いやあ、フギ先生にも分からないなんて、僕も鼻が高くなります。父さん、良い技術見つけてくれましたよね」
「んーむ……」
「これ、別に僕がとんでもない身体能力を持ってるわけじゃあないですよ。確かに魔王の血は引いてますけど、ほとんど魔力と寿命だけですから。身体能力は、人族とほぼ同じなんです」
「ええ? ちょっと信じらんない」
「いやいや、カオル=サダマキも、この無願想流を使ってたんですから。父さんだけじゃないんです」
「え!? そうなの!?」
「そうですよ。お祖父ちゃんの代は、この無願想流を使える人が3人いたんです。父さんと、お祖父ちゃんのカゲミツ。それと、カオル=サダマキ。全員、人族です」
「う、ううん……タノツカさん、分かった?」
「いや、全然です……さっぱりです」
「父さんは、太刀の道に従えば、誰にだって使えると言葉を残しました。全くその通りで、まあ、何と言いますか。刀に従うだけですよ」
「はあー……」
「見てる皆さん、これ嘘だと思うなら、ダンジョンがオープンしたら来て下さい。あそこ、魔力異常の洞窟にあるんで、魔術使えませんから。そこでちゃんと技術だって証明出来ます。ああ、見世物にはしません。使う必要がある腕の人には見せます」
ぬぎぬぎ。
袴も上げて。
「ほら、身体に機械とか着けてないですよ。ちゃんとした剣の技術。剣術なんです」
これがトミヤス流です。
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「実はこれ、カオル=サダマキが変わった振り方をしてるな、ちょっと真似してみようかなっていう所から見つかったらしいんですよ」
「へえー!」
「忍の使い方なので、何か普通とは違う所があったのでしょう」
「あー! うんうん、確かに、当時はそうだったかもねえ!」
「で、あと一歩! という所で、お祖父ちゃんのカゲミツが練習してる父さんを見て、何だ、もう見つけちまったか、と。詰まっていた所に、最後の一押しをしてくれたんですね」
「ちょっと待って。もう見つけた? どういう事?」
「父さん、足譚はもっと前から使えたんです。これも無願想流じゃないですか」
「そうだね」
「さっきのは無願想流の基本の振りなわけで、足譚は無願想流の奥義なんですよ。奥義を使えるなら、基本にもすぐ気付くだろうって、お祖父ちゃんは思ってたみたいです」
「うーん! なるほどねえ!」
「ただまあ、見ての通り、ちょっと変わった振り方するので、普通の振り方というか、何と言いますか。まあ、そういうのが身に付いてると、難しいだろうって。今まで習っていたものを全部忘れて、最初から組み直すんだって言われて、父さんもイライラしたみたいですね。駄目だー! こんなの違う! なんて、庭で怒鳴ってたらしいです。母さんたちも驚いてたそうで」
「へえー! マサヒデ先生がねえ!」
「で、そこでクレール母さんの一言で、あ! そういう事か! って気付いたんです。一緒に練習してたカオル=サダマキも、それだあ! ってなって」
「その一言って?」
「いや、フギ先生。それは秘密です」
「うーん、駄目? 撮影の後で教えてくれない?」
「これは流石に。フギ先生なら、聞いたら、ああそういう事! ってすぐ分かってしまうと思います。これはトミヤス流の専売特許にしたいですから」
「あれ、すっ飛ぶだけじゃないよね。びゅんびゅん振り回せるでしょ?」
「あ、分かります? そうなんです」
「怖いなあ! 間合いに入ったら膾にされちゃうんだ!」
「出来ますけど、しません。弱点一箇所だけ斬れれば、人は簡単に死にますから」
「んー……」
フギ先生、シンキングタイム。
ぽく……ぽく……ぽく……
「いやあ、駄目だ! 私にはさっぱり分からないなあ! カゲミツ先生もマサヒデ先生も、なんで分かったの?」
タノツカさん挙手。
「これ、なんでカゲミツ先生は知ってたんですか? マサヒデ先生に、最後の一歩を教えたわけですよね」
はたと膝を叩くフギ先生。
そこ気付いてませんでしたかー。
「あ、確かに! タノツカさん、そこだよ! そうだよ、当時、もうとっくに失伝してたんだから」
「あ、気付いちゃいました? ははは」
「なんで? これは教えてくれるよね?」
「お祖父ちゃんは、武者修行の旅の途中、サマノスケ=ショウリンの子孫を見つけちゃったんです。その方は武術家ではなかったんですが、伝書は残してたんです」
「へえー! やっぱりあれだね。天才って呼ばれる人は、何か持ってるよねえ! 向こうから寄ってくるみたいな。不思議と縁が出来る所があるよね」
「そうかもしれないですね。父さんはどっちかと言うと、自分から縁を作りに行く感じだったみたいですから、お祖父ちゃんみたいに、勝手に寄ってくるって感じではなかったんだと思います。それに、お祖父ちゃんは伝書をさっと見ただけで、あ、こうか! って分かってしまったわけですから、やっぱり父さんの遥か上なんです」
「うんうん……やっぱり剣聖カゲミツ公って、何か違うんだねえ」
こうして、2本目の『教えて! フギ先生』チャンネルの撮影も無事終わり……
ませんでした!
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「ご視聴頂き、ありがとうございました!」
皆で一礼して、終了……ではありません!
「はー、お疲れ様でしたー」
タノツカさんがカメラを止めます……が!
カオルさんが、こっそりトミヤス道場の方のカメラを回しています。
「ところでフギ先生」
「ん?」
「父さんに挑戦してみませんか? 僕も1本見せたので」
何だか嫌な予かーん。
長年武術をやってきたフギ先生の予感にびんびんきてます。
「……何やらせようっての?」
「虎斬りとか」
「やだよ! 道場の中、血まみれになるじゃない!」
「そこは大丈夫です。死霊術で作る虎ですから、血は残りません」
「怪我したら大変じゃないの!」
「あ、僕、手足斬れても、ぴったりくっつけれる治癒魔術使えますよ」
「絶対やらないよ! 刀が欠けたりしたら嫌だからね! 高かったんだから! あの刀は絶対に瑕付けたくないからね!」
にやにや。
「やっぱり! 出来ちゃうんですね! 刀を瑕付けたくないってだけ!」
「んっ!? んん? ……いやあ! いやいや! 出来るわけないじゃない? 虎なんだよ? そんな事、私には無理だから。ね?」
テルクニ君、言い訳するフギ先生をスルー。
「そう言われると思って、実は刀はこちらで良い物を用意したんです」
「は!?」
「雲切丸、持ってきました」
「はあっ!?」「まじすか!?」
フギ先生もタノツカさんも仰天!
雲切丸は国宝刀ですよ! 六ツ胴(人6人重ねて斬れます)です!
「これなら不足ないですよね。おーい、イマイ君!」
雲切丸は持ってきてません!
でも、イマイ君も分かってます。
「は! すぐにお持ち致します!」
「ユキー。死霊術頼むわー。虎出してー」
にやにや。
「はあーい」
ぼぼーん。虎ー!
「がおーん! ぐるぐるぐる」
「先生、大丈夫です。ただの獣ですよ」
「雲切丸なら楽々斬れるよ! でも国宝の刀だよ!? ちょっとでも瑕付いたらどうするの!? やだよ! 私は絶対にやりませんよ!」
「あーはははは! やっぱり斬れるんですね! はーい! イマイ君! ユキ! ありがとう!」
「は!」「はーい!」
「実は……雲切丸なんか持ってきてません!」
てっててーん!
カオルさんがしれっとした顔で出した、小さな看板。
『ドッキリ大成功!!!』
36話冒頭の
「ね、ほんとにやんの? 大丈夫?」
「大丈夫です。後で笑って許してくれますから」
は、これでした! 伏線回収です!
「はい、視聴者の皆さん、聞きましたでしょうか。フギ先生、楽々斬れるって言いましたよ。刀に瑕が付いたら嫌ってだけです。虎なんか楽々なんです。これが本物の武術家なんです」
かくーん……
カオルさんがカメラを指差します。
「フギ先生、御覧下さい。あちら、カメラ回っております」
「たはっ……もー! あなた何やってるの!?」
「サダマキさん、僕には先に聞かせてくれても良かったんじゃないですか!?」
「大丈夫です。フギ先生、これは絶対に数字取れます」
「サダマキさん!」
「これは良い画が撮れました。教えてフギ先生チャンネルも盛り上がります。ではフギ先生、宗家、改めてシメましょう」
「……はい」
「フギ先生、トミヤス流の奥伝まで見せたんですから、機嫌直して下さい」
うんうん……
頷いてはいますが、納得してない顔です。
「フギ先生、本日はありがとうございました。またコラボお願いします」
「タノツカさん。またドッキリする時は事前に連絡するので、仕込みは頼みます」
「はい。お任せ下さい」
「タノツカさんまで!」
「いや、先生、落ち着いて思うと、僕も凄く良い画が撮れたなって思いますよ」
「もーう! 一発目からドッキリはないんじゃない? はい! えー、最後まで。ご視聴頂き。ありがとうございました!」
「「「ありがとうございました!」」」
「トミヤス先生、次は真面目にやろうよ。ね」
撮影終了! お疲れ様でした!
Thank you for watching、See you next stream!
Bye Bye!




