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第37話


 来てしまいました。

 トミヤス流と森戸三傅流のコラボ撮影!


 まずはトミヤス道場チャンネルの撮影からです。

 カオルさんの進行で進んでいきます。


「書籍やアニメ、ドラマをご覧になった方にはご存知の方も多いと思いますが、この森戸三傅流道場、トミヤス先生のお父上、あの剣聖勇者、マサヒデ公が、非常~にお世話になった道場です。実は知られていない話も多かったりするのですが……」


 ちら。ちら。


「あ、私? 知られていないって言うと……あれかな? シンノスケ=ナカタ? 現時流?」


「はいフギ先生、それはPです」


「そうだよね! あはは! うーん、そうね。えーと……ああ。カザマ忍者と戦った後の話とかね。これ、ドラマとかには出ないよね。どうしてもここの所、活劇にしちゃうから」


「活劇にしちゃうから? と、仰られますと?」


「トミヤス先生は聞いた事あるかな? あのすぐ後ね。マサヒデ先生、この道場に来てね。ヒデノブ=フギ。私のご先祖様に叱られたの。まあ仕方ないと思いますよ。当時、まだ16だったんだから」


「叱られた? 宗家はご存知でしたか?」


 何でしょう? そんな話は、お母さん2人からも聞いた事はないのですが。


「いや……全然。何も聞いた事はないです。父さんが何かしたんですか?」


「いや、何かしたってわけじゃないんだけれども。あの後ね、マサヒデ先生、すんごく落ち込んじゃって、ご先祖様の所に来たのね。なんでだと思う?」


 はて? カオルさんも首を振ります。

 テルクニ君もさっぱりです。


「あのね。それまで、マサヒデ先生が斬った相手って、凄い強敵だけだったの。でも、カザマ忍者の人達って、大した事なかったの。力に差がありすぎた。一方的な感じになっちゃったんだろうね。それで落ち込んじゃったのね。分かるかな、これ。気付かないうちに、驕りが出てたんだね。態度は控え目だし、見た目は変わりないけれども、剣の腕。そこに驕りが出ちゃった事に気付いてなかったの」


「どういう事でしょう? 父上が驕り?」


「そ。相手は悪党だよ。金で暗殺もする極悪人。生活に困って、そうするしかないような人達じゃないよ。好きでやってる本当の悪人。だけれども、ね。差がありすぎたせいで、弱い者いじめしちゃったような気持ちになっちゃったんだね。これ、驕りだね」


「……」


「そこの縁側でね。ずっと座ってたんだって。それでも、なんでこんなに落ち込むんだろうって分からなかった。で、ご先祖様が怒ったの。それは驕りだよ。強い相手を斬っても、悩んでここに来てないね。弱い相手を斬ったら悩んじゃうんだね。なんで? 自分は強いから。弱い人に剣を振ったら可愛そうでしょ。君はそう感じてるんだってね」


「そのような事があったのですか」


「うん。マサヒデ先生は1人で来たそうだから、お母さんも知らなかったんだろうね。お弟子さん達はいつもと変わらないのに、あなたがそんなに落ち込んでどうするんだ。あなたは教える立場でしょう。さっさと帰りなさい。そう言って、追い返したの」


「父さんが、そんな……いや、全然知りませんでした」


「ああ! やっぱり知らなかったんだ! ところで、私もね、ひとつ聞きたい事があるんだけれども、聞いて良いかな?」


「はい」


 ちらり。


「サダマキさん。カオル=サダマキ。名前同じだよね? 偶然?」


 ( ´,_ゝ`)プッ! カウント6。


「いいえ。母がカオル=サダマキの大ファンなんです。お陰で小さい頃はいじめられました。それで私は武術の道に。弱い者いじめをされたくなかったので」


「あはははは!」


「女性人気はイザベル=ファッテンベルクの方が高いのに、名字がサダマキだったせいで……母上、今でも恨んでますよ」


「ははは! 良いじゃない! お陰でサダマキさんもトミヤス流は中目録まで行ったんだから!」


「それも母上のせいです! 武術をやります! って言ったら、飛び上がって喜んで、じゃあトミヤス流です! あなたはカオル=サダマキなんですから! って! 自転車で1時間も掛けて、道場に通う羽目になったんです! 一剣流道場だったら5分だったんです!」


「あはははは!」


 本当はスパイ訓練校で叩き込まれたんですが、秘密です。



----------



 その後も色々話して、結構P音も入る所もありましたが、無事にトミヤス道場チャンネルの方は撮影終了! 編集によっては前後編分に出来そうな時間が撮れました。


「フギ先生、本日は本当にありがとうございました。

 概要欄にフギ先生のチャンネルのリンクも載せておきますので、是非ご覧下さい。

 フギ先生のチャンネルの方では、コラボで実技を行っております。

 それではまた次回。面白かったら、チャンネル登録とグッドボタンをお願いします。

 Thank You For Watching、See You Next Stream.

 最後までご視聴頂き、ありがとうございました」


「ありがとうございました」

「ありがとうございました」


「……はい、OKです!」


「ぷー! 緊張したあー!」


 テルクニ君、がっくり。

 フギ先生とタノツカさんも苦笑です。


「分かる分かる。私達もね、最初はそんな感じだったもの。ねえ、タノツカさん」


「そうですねえ! いやあ、今、昔の動画見ると、固いですもんねえ」


「だよねえー。じゃあ、次はうちのチャンネル? 何やろうかなあ……ねえ?」


 なんて悩んでる台詞を言いながら、フギ先生、にやにやしてます。

 これは既に決まっている感じ。


「まあ、ぶっつけでいきましょう。ね。その時その時で、こんなのもあるよ、なんて」


 にやにや。


「はあ……」


 ちらり。ちらり。

 テルクニ君とカオルさんが目を合わせます。

 これは何か考えている!


「じゃあ、うちのチャンネルの方、撮影していきましょう。タノツカさん」


「はい」


 カメラセット。


「はい……では、カメラチェックいきます。適当に挨拶して下さい」


「はい。森戸三傅流のヨシタカ=フギです」

「トミヤス流のカオル=サダマキです」

「あはい。トミヤス流のテルクニ=トミヤスです」


「OKです」


 ぴぴ。


『はい。森戸三傅流のヨシタカ=フギです』

『トミヤス流のカオル=サダマキです』

『あはい。トミヤス流のテルクニ=トミヤスです』


 他のカメラもチェックして……OK。


「うん、大丈夫すね。じゃあこのまま入りまーす」


 てくてく。

 正面にフギ先生とテルクニ君。

 その隣に、タノツカさんとカオルさん。

 映ってませんが、イマイ君とユキちゃんも道場の隅で座ってます。


「じゃもうカメラ回ってるんで、先生、適当な所で」


「あそう? じゃあ行こうか。おほん! ん、んんー……はい。いつもご覧頂き、ありがとうございます。森戸三傅流のヨシタカ=フギです」


「タノツカです。先生、今日はコラボ撮影ですね」


「うん。凄いゲスト。はい、最近話題のね。こちらの方」


「……」


 テルクニ君? 何ぼーっとしてるんですか?


「あっ!? あ、はい。ええー、トミヤス流の、テルクニ=トミヤスです」


「同じくトミヤス流のカオル=サダマキです」


「ええとね。トミヤス道場チャンネルを見てもらったら分かりますけど、カオル=サダマキ。トミヤス先生のお父上のね、マサヒデ先生と一緒にいた忍ですね。うん。あれと同じ名前ですけど、偶然ではないんです。秘密がバレましたね」


「は……いや、恥ずかしい事です」


「はははははー。で、私のチャンネルの方では、色々とね。実技なんかしようかな、という話ですけれども。トミヤス先生」


「はい」


「どおーしてもねえ。トミヤス流でこれが見たい! って、ずーっと思ってたのが、ひとつだけあるんです。まあ色々ありますけれども、これだけは死ぬまでに見たい! というのがひとつだけ!」


 何でしょう……話が違いますよ。

 トミヤス流に併伝された技術の比較とか、そんな感じなのでは?

 アドリブ?


「ええと、何でしょう? お見せ出来るものであれば」


「いや、トミヤス流にしかない、他とは全っ然違うよ! っていう、アレ!」


 ん? ん?


「ずーっと昔に失伝しちゃったけど、お父上のね。マサヒデ先生が、頑張って見つけたっていうアレ! 心当たり、ありません? 今やトミヤス流にしか残っていないっていう、アレです」


 え? なんだろう?

 カオルさんも予想外の展開に、言葉が出ません。


「私はどうしても見たいなあーって思ってたの! 無願想流!」


「あ、無願想流すか。いいすよ」


 軽っ!

 テルクニ君、それ奥伝なんですよ!


「ええ!? いいの!?」


 言うだけ言ってみたフギ先生もびっくり! タノツカさんもびっくり!


「まあ、一応奥伝っちゃ奥伝ですけど、見ても全く分かるもんじゃないと思うので。じゃあ、カオルさん、ここに立って構えてて。ちゃんと受けてね。当たったら痛いから」


「は……」


 カオルさんも唖然!

 実はカオルさんも、まだ無願想流は知りません。見た事もありません。

 トミヤス流にある、という事は知っているのですが……


「まあ、ドラマだと全く出てきませんよね。これ、殺陣で教えようっていうの、絶対に無理だと思うんで。個人の骨格とかで、使い方も振りも変わりますから」


 てくてく……

 そんな壁際?

 大丈夫なんですか?


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