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第35話


 今日はテルクニ君が大事な話を持ってきました。


「ユキー。開けていいかー」


「はあーい」


 さらー。ぱたん。


「お前、何日か有給取れる? 2、3日」


「んー? 取れるは取れるけど、明日いきなりとかはちょっと。1週間待って」


「おっけー。じゃ、有給取れたら教えて」


「なんで?」


「一緒にウキョウ(首都)行こうぜ」


 お? お?

 ブラコンのユキちゃんの顔が輝いてます!


「えー!? 何それー!」


「曜日いつでもいいからな。あとお前、ちゃんとZ(SNS)に新しいの上げとけよ。更新しねえと、いつまで経ってもフォロワー増えねえぞ」


「はーい!」


「じゃな」


 すー、とん……


 襖が閉じて数秒後。

 わきわきわき……

 お兄ちゃんと旅行ですよ!


 さ! ぴぴぴ! 高速スマホ操作!

 ぷるるる……ぷるるる……


『こんばんは。魔術師協会です』


 24時間営業は助かりますね。


「お疲れ様です! オリネオ支部の協会員のユキ=トミヤスですけど!」


『はい。お疲れ様です』


「有給の申請したいんですけど! 3日間!」


『3日間ですね。少々お待ち下さい』


「すぐ! 急いで! 早く! 超特急で!」


 てんとんたんとーんてん♪(保留音楽)

 てんとんたんとーんてん♪

 てんとんたんとーんてん♪


『お待たせしました。お急ぎでですと、来週の火水木は宜しいでしょうか』


「明日からは無理?」


『い、いや、それは流石に……』


「んー! 仕方ないなあ! ちっ!」


 ユキちゃん! 黒い顔が出かけてますよ!

 りっちー君に聞こえちゃいますよ!


『申し訳ございません』


「本当だよ!」


『……』


「ったく……仕方ねー。来週の火水木だね! 我慢してやるよ! 感謝しな!」


『……すみません……』


「ふーんっ」


 ぷつっ。ぷー、ぷー……


 ぼふん! 枕だっこ!

 ごろごろじたばた!


(曜日はいつでも良いって言ってたなー! 季節限定のイベントやってんのかな!? 2、3日って事はお泊りー!? きゃー! お母さん達に重大な秘密が出来ちゃうかもー! あーん!)


 ユキちゃん! それはいけない!


(服どれにしよー! こ、香水とか……何がいいかなー!? 下着……下着! 買いに行こう! どうしよう!? 純情系? 爽やか系? セクシー系? ハアハア!)


 それ以上は駄目です!


(電車かなー! クルマかなー! クルマだったら湾岸走りたいなー!)


 そうそう。それで良いんです。

 そういう妄想にしときましょうね。



----------



 そして、火曜日の朝。


「えーと、カメラこれで全部?」


「1、2、3……はい。全部です」


「この外付け、容量いくつ?」


「4Tです」


「まあじ!? いくらしたの!?」


「確か、タイムセール2点セットで金1、銀19ですね」


「ん、その値段なら本物か……重課金勢なのに、よく買えたね?」


「これはももちゃん活動の為に使うので、経費で落ちます」



----------



 外付けSSD・HDDには気を付けましょう! 詐欺商品めちゃあります!

 あと、中古や整備済み品じゃないのに明らかに安いのは、100%容量詐欺です。

 他としっかり値段を比べましょう。


 『こっち2万以上するのに、これ5000もしないよー』

 ありえねーですから、それ。


 いや、ちゃんと何GB、何TB認識してますけど……

 まず偽装されてます。試しに何GBのデータをコピーでどんどん入れてみましょう。

 移動じゃ駄目ですよ! コピーで入れるんですよ!


 古いのが勝手に消えていきませんか?

 途中でエラーで保存出来なくなりませんか?


 分かりづらいのは勝手に上書きしてくタイプで、ちゃんと転送出来てるな、本物だ、良い買い物したー……あれ! 何か前に入れたのが消えてるー! ってパターン。

 エラーで保存出来なくなる奴の場合、運が悪いとOSやられて再インストールです。


 外付けやUSBメモリは、ちゃんと☆1レビューを見てみましょう!

 どーせ梱包の文句……じゃないのが出てますから!

 ちゃんと老舗メーカーの物を買った方が無難! 会社名で検索してね!

 いきなりフリーズしたり、ブルースクリーンになっても知りませんよ!

 筆者の従姉妹ちゃんも被害に遭ってます。



----------



 ……という、テルクニ君とカオルさんの会話を聞きながら……

 テルクニ君! 後ろでユキちゃんがむっすりしてますよ!

 2人きりの旅行だと思ってたのにー! ぷんぷん!


「じゃ、りっちー。道場頼むな」


「は!」


「イマイ君、道着OK? タオルOK?」


「押忍」


 りっちー君とイマイ君はじゃんけんして、どっちが行くか決めました。

 りっちー君、無念!


「あ、一応、竹刀と木刀は持ってくか? 貸してくれると思うけど、こっちでも準備しといた方が良いよな?」


「ああ、確かに……宗家、真剣はどうしますか?」


「いっやー……模造刀は持ってくか? ちょっと雲切丸は持ち出し面倒そうだ。個人蔵っつっても、国宝だもんな。文科省に許可とかいるんじゃねえかな……個人蔵なら登録証あれば大丈夫なのかな?」


「うーん……取り敢えず模造刀も持ってきます。倉庫の携帯ケースに入れておけば大丈夫でしたよね」


「うん。のはず。カオルさん、OKだよね?」


「大丈夫です。真剣でも、抜刀や居合の稽古などをする為であれば通ります。人に見せる為、というのは通りません。ですが、さすがに雲切丸はやめておいた方が」


 日本刀の持ち出しは、ちゃんと理由がないと駄目ですよ。

 登録証の原本も持ってないと駄目です。コピーは駄目。


「そっか、向こうで稽古するってんならOKかあ……どうしようか。モリサネ辺り持ってく?」


「いや、それもやめておいた方が」


 トミヤス家に所蔵のモリサネは、重要文化財で、戦乱期の武将の愛刀だった物です。

 歴史的逸品ですから、それで抜刀や居合の練習とか、やめましょうね。


「んー、じゃあ、模造刀だけにするか。イマイ君、持ち出し手伝うわ」


「あざす!」



----------



 ぶぉん! ぼぼぼぼぼ……


 こっちはユキちゃんのクルマ。車ではなく『クルマ』です。

 運転手はユキちゃんです。たまに峠に行ってるんですよ。

 もう1台の車はレンタカーのRVで、カオルさんとイマイ君が乗ってます。


「ふぁ~……」


「……ちっ……」


「なー、ユキー。お前、どうした? 朝っから機嫌悪かったけど」


「何でもないよ!」


「こわー!」


「ちっ!」


 ごそごそ……しゅぼ! すぱー……


「俺にもちょうだーい」


「あげない」


「いいじゃん」


「んんっ!」


 思い切り投げられたタバコの箱とライターをぱしぱし! とキャッチ!

 さっすがテルクニ君、伊達ではありませんね。


「あんがと」


 しぼ! ふう~……


「生理なのか?」


「違ーうッ!」


「なんかのイベントとかに間に合わんかったのか? ウキョウでなんかやってたっけ」


 ぎりぎりぎり……

 タバコの吸口、強く噛む人いますけど、あれ、噛み切ったりしないんですかね?


「うるさいなあ! 放っといてよ!」


「ん~……同ケット(同人マーケット)の時期じゃねーだろ……」


「行かないよ! そんなの!」


「でも同人好きだろ? お前BL何冊分のデータ持ってんだよ」


 そうだったんですか!?


「何で知ってんの!?」


 がーん! ユキちゃんショック! 知られてたなんて!

 顔が真っ赤になった後、真っ青!


「お……おい、マジかよ……いや、冗談で言ったんだけど……嘘だろ?」


 テルクニ君もショック! まさか妹が沼に!?

 このリアクションは、どう見たって嘘じゃありません!


「……」「……」


 これは嫌な沈黙ですね……


「言わねえよ……ほら、俺、理解ある方だからよ……聞かなかった事にするよ」


「……」


「言わねえから……自分の妹が隠れてBLに沼ってるとか、それ兄貴が言っちゃ絶対に駄目な事だろ……」


「うん……」


「タバコ、ここ置くな……」


「うん……」


「あっ、あのさ! 昼飯、遅くなるけど、向こうで食う?」


「……」


「パーキングのもさ……」


 さささ! 高速スマホ検索!


「トオトエの畑ぶしとかよ! 地元じゃ人気らしいぜ! ご当地グルメ的な? おー! 魚介系豚骨だって! 豚骨なのに魚介系って意味不明! でも美味そうじゃね!?」


「うん……」


 きまずーい……

 ぶおーん、と良い音を立てて、ユキちゃんのクルマが高速を走って行きます。

 でも、クルマの中は、どんよりしてます。


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