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第34話


 ルクレツィアさんの、トミヤス道場体験入門が終わりました。


 入門契約にサイン。フィットネスコースです。

 これから私もトミヤス流!

 美しい身体を作るために!

 もうロリだなんて言わせません! 目指せロリ巨乳です!


 ……いくら姿勢が良くなっても、胸は大きくなりませんよ。

 確かに猫背は貧乳の原因のひとつではありますが。

 大胸筋を鍛えましょう。鍛えすぎは駄目です。逆に胸が減ります。

 あと、りんごを食べると良いらしいです(筆者は理由は知りません)。


「ありがとうございます。好きな時間に来て下さい」


「はいっ!」


「ふふふ。サヴァレーゼさんはお医者様ですから、動きを習ったら、医学的な観点から分析してみるのも面白いかもしれませんね」


「あ……面白そう」


「実は、本日行ったトレーニングは、既にスポーツ科学で分析された方がおられます」


「へっ!?」


「500年も前の本ですから、手に入るかは分かりませんが、達人探訪録という空手家の雑誌で、色々な武術の動きを分析されたササイ先生という方がおられます」


 500年前のササイ!? 医学会では超有名なお医者様です!


「はっ!? ササイというと、スポーツや格闘技で名選手を何人も育てた、あのササイ先生ですか!?」


「はい。ササイ先生は武術を分析・分解し、いくつも新しいトレーニングを考え出したのです。現在のフィットネスやトレーニングにも、そのまま使われているものが多くございますね」


「し、知りませんでした……武術からだったんですか」


「テルクニ様のお父上、剣聖勇者のマサヒデ様、開祖カゲミツ様のお話も載っており、他にも面白いお話がたくさんございます」


「へえー! たつじんたんぽうろくですか」


「ふふふ。実は、ソフィア=ホルニコヴァ院長のご先祖様、あの名医と名高いラディスラヴァも、ヤナギ車道流の研究に一役買っていたりします」


 びっくり仰天! そんな事があったなんて!


「うお!? うそー!?」


「マサヒデ様と旅をしておられましたから、色々な武術家と会いましょう。その時に、古いヤナギ車道流の技術の研究の旅をしておられた、後の23代宗家、ハチロウ=ヤナギ様と出会って……というわけです」


「し、知りませんでした……」


「マサヒデ様もその研究に一役買って、ヤナギ車道流にもマサヒデ様の名は残っております。トミヤス流は、現在の色々な武道・武術に点々と名を残しているのです」


「はあー……」


「現代の医学ではどう見えるでしょう。サヴァレーゼさんの分析結果と、ササイ先生の分析結果を比べてみるのも面白いかもしれませんね」


「……はい……」



----------



 がらがらがらー。


「ありがとうございましたー……?」


 わやわや。


「んー! たまちゃーん!」「あーん! きもちー!」「癒やされるーん!」


 何か門弟さん達が集まってますよ。

 犬……? 門弟さん達で見えませんが、犬小屋は見えます。

 あんな隅っこにあったなんて。

 てくてく。


「ほ?」


「あ、サヴァレーゼさん」


「犬……ですか? 大人しいですか?」


「あっ! んふふふ。サヴァレーゼさん、初めてですから、知らないんですね」


「怖いですか……?」


「怖くはないです。撫でて下さい。癒やされますよー。はい、どうぞ」


「ん……」


 見た事ない犬ですね。

 ルクレツィアさんはあまり動物は知らないので、なんという犬種かは分かりません。

 とにかく見た事はないので、珍しい犬種でしょう。


 すー。すりすり。


「あ、かわいい。これ、なんていう犬なんですか?」


「犬じゃないです。妖です」


「はあー?」


 またまた……


「本当ですよ。ねー、たまちゃーん。初めての人ですから、ご挨拶してみません?」


 ぼん!

 おお! 和服美人が煙と共に登場!


「うわっ!?」


「おほほほほ!」


「ななななーんですかあ!? 誰ですかあ!」


(私は妖ですよ)


 は! この頭に響く声は一体!?


(さあ、私の尾を数えて下さい)


 のっそり。たまちゃんが立ち上がりました!?

 ええ!? これは妖ですか!? 大変ですよ!

 妖怪退散陰陽師! HA!


「ひぇーっ!」


 なーんちゃって。そんなに驚かなくても大丈夫です。


「サヴァレーゼさん、大丈夫です。たまちゃんは式神ですから、絶対に噛みついたり引っ掻いたりしません」


「そそその人はー!? それは妖術では!?」


「たまちゃん、美人さんですよねー」

「ねー! 私もたまちゃんみたいな和服美人になりたいなー」

「私はマツ様派ー」


「……」


 トミヤス道場って凄いですね!



----------



 ぱたん。

 駐車場の車に戻ってから、検索です。

 達人探訪録 オークション……


「いぇー!?」


 状態:悪い

 価格:金10枚から

 分類:古書


 買えるわけねえー!


 創刊号です。ページ欠損、日焼けあり。判別不能な部分あり。

 ヤナギ車道流、ヨシヒラ=ヤナギの実技とインタビュー。

 武神精錬館合気柔術、ユウゾウ=クロカワの実技とインタビュー。

 分析が細かく載っています。

 高額ですし、状態確認の為に、なるべく足を運んで下さると助かります。


 達人探訪録 トミヤス流 ぽちっとな。


 状態:悪い

 価格:金25枚から

 分類:古書


 プレミアぶっ飛び過ぎー!

 とんでもない本を知ってしまいました!



----------



 ルクレツィアさんは病院に帰って来ました。

 ソフィアさんに報告しないといけません。


 こんこん。


「はあーい」


「失礼します。ルクレツィア=サヴァレーゼです」


「どおぞーん」


 かちゃ。ぱたん。


「んふーん。どうだった?」


「雇ってくれました」


「んー! やったじゃん。遅かったけど、なんか揉めたの?」


「あ、いえ。トミヤス道場で、体験入門してきたんです」


「あーあー! フィットネス?」


「はい」


「んふふ。面白かったでしょ? トミヤス流フィットネス」


「はい! 入門してきました! 私、姿勢美人を目指します!」


「頑張りなよー。姿勢矯正とか、超難しいからねー。ぱっと見は綺麗に見えてても、中身は全然って人、多いからさ。トミヤス道場だと、その辺もバッチリ整えてくれるし」


「ですよね! 私、びっくりしました!」


「正座と忍者、見てきたんでしょ? あれは私もビビったわー」


「院長でもですか!」


「当ったり前じゃん! もーテルクニ君に笑われちゃってさー! あの正座、どこまで見た?」


「どこまで……? あの、肩の上に乗って、スクワットしても平気とか……」


 そう! あれには先があったんです!

 ソフィアさん、にんまり!


「あー! 見てないんだー。あの正座した後に立ち上がるとね。身体がすっごい整うんだよ! 押されても平気! 押した方が、自分の力で後ろ行っちゃうとか」


「ええーっ!?」


「ねー聞いて! テルクニ君、はいって私押そうとしたんだけど、さり気なく胸タッチしたの! 私もびっくりしたけど、テルクニ君もびっくりしちゃってさ! 嫌らしいつもりなくて、普通に押そうとしたら、ぼよん! なんじゃこれ!? って、うわあって声上げて飛び下がったんだよ!」


 さり気にオパイ自慢きた!

 本人は全くそのつもりじゃないでしょうが、ルクレツィアさん、その顔は……


「たださ、そん時、一瞬、目にガチの殺気が見えたの。で、目が合ったのよ」


 でもソフィアさんは気付いていません。


「テルクニ君、いつもへらへらしてるけど、あの一瞬、まじ怖かったよ。私さ、ああ死ぬ! って思ってさ、頭かかえて座っちゃって、泣いちゃったもん。人前なのに、ぼろぼろ涙流して。謝ろうとしても、言葉が出ないのよ!」


 ソフィアさんも、いつもへらへらしてますよね。

 そんなソフィアさんが怖くて泣いた? 信じられませんよねえ。


「そんなに怖かったんですか?」


「うんうーん! 超怖かった! ガチの武術家って、ああなんだねー。テルクニ君、怒らせないでね。ももちゃんの動画見たしょ? あの動画のテルクニ君さ、あんなの全然怒ってないよ。本気で怒ってたら、もう喋るとか出来ないから。ま、怒るなんて事ないけど。99パーは。1パー引かないでね」


「……」


 怖い雇い主に当たってしまったんでしょうか!


「とまあ脱線しちゃったけどー。お給料いくらもらえんの?」


 あれ? そう言えばいくら……?


「……あっ。聞いてない……」


「駄目じゃん! すぐ電話!」


「ははい!」


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