第28話
トミヤス道場に、あのももちゃん(SNS1000万フォロワー)が来た!
……が、実はももちゃんの中身はカオルさんだったんです。
なので、今日はカオルさんはお休みという事になっています。
「はいカットー。では、次に体験入門プログラムの方に行きましょう。トミヤス先生、何かこう、短時間で数字取れそうなのありませんか?」
門弟さん達の前でディレクターっぷりを見せるアシスタント(情報省のニンジャ)も流石です。
「護身術系が良いですか? それか、何かこう、武術すげえ! みたいな感じの。ぱっと見は良く分からないけど、なんでこうなるの!? みたいなのとか……あと、数字取れそうって言うと……ももちゃんの道着とかが、ちょっとはだけちゃう系とか?」
「やーだあー!」
「宗家ー! それが良いです!」
「アシスタントさん! それしかないすよ! 絶対数字取れますよ!」
がらぱしーん!
どかどかどか……
何でしょう? 乱暴な人達ですね。挨拶もなしに。
すぱーん!
「トミヤス流に入門させろ!」
「そうだ! トミヤス流に入門させろ!」
「俺は日輪国人だぞ! トミヤス流に入門させろ!」
「……」「……」「……」
なんだこの入り……?
あ、後ろでスマホ構えてます。録画してます。
これ、切りぬきで都合よく編集されて上げられます。
だけど……
ね ら い ど お り
……なんですけど、こう来るとは思いませんでした。
テルクニ君も、ももちゃん(カオルさん)も、他の皆も、ぽかんです。
「え、ええと……そうですね、まず、靴を脱いで上がってもらえませんか……? 玄関に、靴脱ぐ所、ありますので」
「なんで靴を脱がないといけないんだ!」
「お前は無理矢理靴を脱がせるつもりか!」
「脱がせて盗むつもりだな!」
ぽかーん。
「分かったぞ! 大中心国の者は入門させないんだな!」
「差別だ!」
俺は日輪国人だって言ってたの、誰ですか?
さあ門弟さん。出番です。
「あなた、どこの国の人でしたっけ」
「大中心国ですけど……」
「……」「……」「……」
「あなたはどこの国の人でしたっけ」
「大中心国ですが……」
「……」「……」「……」
「入門してますが……駄目ですか?」
「嘘だ! お前達は大中心国人じゃないぞ!」
「そうだ! 大中心国の人間は日輪国武術なんて学ばないんだ!」
「あの、パスポート、持ってますよね?」
「あ、はい」
「持ってきてくれます?」
「はい」
よいしょ。
「私のパスポート持ってきますから、開けてもらえませんか? 私、大中心国」
どーん!
「いたー!」
「おい大丈夫か!?」
「嘘をつくな! 偽造パスポートだ!」
「そうだ! こいつは偽物だ! 同じ大中心国人なら俺達の味方のはずだ!」
「お前達、日輪国人は、敵わないと思ったらすぐ大中心国人のせいにするんだ!」
「やめてくださあーい!」
ももちゃんダッシュ!
ててて……
「近寄るな! 汚い日輪国人!」
どーん!
「いたあーいん!」
べったーん!
カオルさん迫真の演技発動です!
「ああーっ!」「ももちゃーん!」「ひどい! 女の子なのに!」
やべえ! やりすぎたか!?
「しくしく……何でそんな事を言うんですか? ここには色んな国の人がいるのに」
ちらちら……
「トミヤス流は差別なんてしてないのに……すんすん……」
「ああっ! ももちゃん! 血が出てる!」
「わ! 顔から!」
アシスタント走る! ぺたぺた。タオルに血。
カオルさんはプロなので、滅多な事では出血はしません。
これは仕込みです。
ゴゴゴ……
「あなた達は……何もしてない女性に暴力振るうんですか……」
ぽきき……ぽきき……(指を鳴らす音)
「おおい、リチャード君。あいつらに真剣でも槍でも弓でも渡してやれよ……俺は素手でやってやるよ……」
「若!?」
「あいつらに真剣渡せ! 早くしやがれ!」
「は! ははっ! おい皆、下がれ!」
ばたばた……
テルクニ君からお母さん譲りの黒いオーラが!
「おいテメエら……トミヤス流に喧嘩売っただけなら許してやったよ……関係ねえ女に手え上げやがってよお……おう! アダムさん! 玄関閉めろ! 逃げれねえようにな!」
「Да、сэр!(ダー、セール!:イエッサー!)」
「あっ! おい逃げろ!」
くるー! ぴゅー!
がらぴしゃーん!
残念! 間に合いませんでした!
「あっ! チキショウ! 開けろ! 開けろー!」
どんどんどん!
「おおい……戻って来やがれ! 俺に勝てるまで玄関開けねえぞ! 3対1で良いからよ……大中心国人の根性見せてみろコラァ!」
がたがたとりっちー君が武器を並べていきます。
「リチャード君、あとイマイ君さあ。武器並べたらあいつら連れて来てよ」
この2人の目も怖くなってます!
「は!」「ははっ!」
だだだー!
「こっちに来い!」「こっち来いコラァ!」
どたどた……ばあん!
「おい。好きな武器選べ。俺は素手で良い。魔術も使わねえ。3人で掛かってこいや。俺に勝つまで道場開けねえからな。勝ったらトミヤス流の看板も持ってっていいぜ」
こいつはヤバ過ぎる! 人じゃない感がびんびんするー!
これは100人いても絶対勝てない!
3人の絶望の眼差し!
「どうした。ほら。好きな武器拾え。俺は殺しゃあしねえからよ……お前ら、俺殺しても良いよ……掛かってこいや……」
「しーっしし、素人に暴力を振るうのか! 武術家が素人に!」
「そうだ! トミヤスは卑怯だ!」
「さんをつけろ! デコスケ野郎共が!」
イマイ君ナイス!
「おめえらが素人でもよお……真剣持って3人掛かりでってなあ。俺は素手だ……魔術も使わねえ。フェアな勝負だろうが」
「暴力は反対だ!」
「ああん? 今更、何ねぼけた事お言ってやがんだ? 女あ突き飛ばしてか? 血い出てんじゃねえか! 顔からあ!」
もう駄目です! ひたすら謝りましょう!
「ちょっと押しただけです!」
「悪気はなかったんです!」
「分からなかっただけです!」
「ごめんなさい!」
「お金は払います!」
ぴきん!
「金!? テメエら俺を馬鹿にしてんのか!? ちゃっちゃと武器拾わんかい!」
「すみません! すみません! 許して下さい!」
「雇われただけです!」
「本当です! トミヤス道場なんて知らなかったんです!」
「なあにい? 雇われたあ……? 誰にだ。言ってみろ!」
「……」「……」「……」
「言え」
「すー、すみません! 言えません! 家族の生活が!」
「そうなんです!」
「子供の為に!」
大体嘘です。
「そうか! 家族の為か! おい、リチャード君。外務省に電話掛けろ。外務次官のミスジさん。大中心国人の家族を緊急で保護してほしいってな」
「は」
「おいお前ら、住所言え。家族保護してやるから、雇い主の名前吐け」
「いやいやいやいや!?」
「やめて下さい!」
「そこまでしなくても!」
「遠慮すんな。してやる」
「うううう嘘です! 家族いないです!」
「パスポート欲しかったから!」
「バイト代が高かったので!」
「そうか。で? 誰が雇った。言え」
「……」「……」「……」
にやにや。
「あーあ……おめえら……諜報部に雇われたな? じゃなきゃ情報局か?」
「……」「……」「……」
顔が真っ青です!
実はテルクニ君は知ってましたー!
「そういう事か! おい皆! こいつらの事は黙っといてやれ! 諜報部員に嫌がらせしろって雇われたバイトだ! バレたって知られちまったら、殺されるからな!」
「……」「……」「……」
ぺたぺた……
す。ぽんぽん……頭に手を乗せて……
(ジュンユー=シャオだろ?)
「うっ……」
(俺の情報網ナメんなって伝えてくれよ。カメラ回ってるぜ。この動画、上がるぜ)
ぺちん!
「帰っていいよ。アダムさーん! 玄関開けてー!」
がらがらがら……
「今日中に別の国に逃げな。シャオに電話。忘れんなよ。行け」
「「「すみませんでしたー!」」」
ぴゅー!
上手くいきましたね!




