第27話
ここはトミヤス道場です。
さて、盗聴している側は、盗聴されている、と、何故か思わないもので……
情報はバッチリ。今日来ます。
今日はカオルさんは休みという体で、アダムさんも普通に稽古をさせてもらう事になっています。ですので、2500回の期限は1日伸びます。
「よっこらせっとー……」
サボりまくりのテルクニ君が、2日も続けて道場に来るなんて!
今日も何かあるのかな? と、門弟の人達がわくわくしています。
尚、道場周りはしっかり盗聴器チェック済みです。
「はーい、一旦中止ー! 聞いて下さーい」
今日も何かある!
「えー、今日はですねー、凄いお客さんが来ます!」
凄いお客さん! 誰だろう!
「誰かは秘密でーす! でもー、来たら絶対驚きまーす! ファンの人も多いんじゃないかなー! 見た事はあると思いまーす! なくても名前は知ってると思いまーす!」
ファン!? もしかして芸能人!? 歌手!? 映画俳優とか!?
見た事はある!? なくても名前は知っている!?
ざわ……ざわ……
「あーと30分くらいかなー! 写真撮影の時間は最後にあるから、稽古中にスマホとか出さないでねー!」
写真撮影! これは大物の予感!
「色紙は用意しといたから、買って来なくていいからねー。最後に握手とサインもしてくれるからねー」
色紙! これは間違いなく大物ですよ!
「なんーでっ! 今日は最後まで稽古してってほしいな! 体験入門してくれるんだ! 一緒に稽古出来るとか、思い出になるからねー!」
一生の思い出!
ガチで凄い人が来そうです!
「てわけで! ま、来たら」
がらがらがら……
びん! と皆の視線が玄関に!
「失礼しまーっす!」
若い女の声! 女優!? 歌手!?
「あ、もう来ちゃったかなー。じゃ、ちょっと……」
ぺったん、ぺったん。裸足です。
すー。ぱたん。
「わー! また来ちゃいましたー!」
また!?
この時、数人の門弟の人には電撃が走っています!
もしやあの人では!?
「やー、タダで宣伝してもらうみたいな感じで、何か悪いですねえ。まあまあ、取り敢えず入って下さい」
「良いんですかあー!」
「いやいや、入らないと体験入門とか出来ないですから。どうぞどうぞ」
「失礼しまーす!」
すー。
「はい、皆さん。今日のスペシャルゲストでーす」
「ももちゃんでーす! キラッ☆ミ」
カオルさん、気合入ってますね。
「おおー!」「すーげえ!」「本物来たー!」
ざわざわ! ざわざわ! ざわざわ!
「はーい、静かに! 握手と写真とサイン、最後にあるからねー。だっせえ稽古してるとオシャカになるよー」
こそこそ……こそこそ……
「ももちゃんわあー、今日1日いー、体験入門します! 宜しくお願いしまーす!」
「「「よっしゃっしゃーす!」」」
「ちくしょー、気合入りまくってるな。聞いて下さいよ。いつもこんなに気合入ってないんですよ。だらっだらやってんですから。まあそれ僕もなんですけど」
「あはははは!」
「はーい、皆聞いてねー。ももちゃん、撮影するからね。OK出したけど、俺は映りたくねーなーって人は、最後に言ってね。顔と声に編集入れてくれるからー」
「まあじっすか!」
「宗家、撮影するんすか!?」
「するよ。ももちゃんもお仕事なんだから、出来れば協力してほしいな」
「9割以上趣味ですけど!」
「「「押忍!」」」
これが1000万フォロワーの力です!
「じゃ、機材セットしましょうか。僕も手伝うんで」
「はーい!」
「りっちーは用意しといた着替え持ってきてー」
「は!」
「あ、アシスタントの人もやってきます? 一応、道着用意しましたけど」
このアシスタントも情報省のニンジャです。
「あ、すません。私は撮影と進行の方で。カメラ担当兼ディレクターみたいな」
「了解でーす。えっと……このカメラ……? うわやべえ!? これ金貨3枚超えの奴じゃないんすか!?」
「実は中古なんですう」
「中古でいくらすんの……えっと、この辺で良いかな……この板は?」
「あ、それシールドです。ぶつかっても良いように……」
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撮影開始です!
「いぇーい! ももちゃんでーす! またトミヤス道場に来ちゃいましたー! 前に来た時にー、コラボ撮影の約束してたんですよねー!」
「あ、はい」
キャラの変貌ぶりに、ちょっとテルクニ君も引き気味になっています。
もうカメラ恥ずかしい病も引っ込んでしまってます。
「紹介お願いしますっ!」
「はい。えー、トミヤス流宗家、テルクニ=トミヤスです。宜しくお願いします」
「師範代の、リチャード2世=エッセン=ファッテンベルクです」
「リチャード先生、配信見てますよー! 第1回から炎上気味でした!」
ぎくっ!
「うっ!? いや、はあ、まあ……ええ」
「でー、見て下さい! この格好! 今日はなんと! 体験入門なんでーす! ちょっと怖いけど頑張ります!」
「あ、やっぱり武術とか怖いですか?」
「リチャード先生の配信見てると、ちょっと怖いです……」
「ううっ!?」
りっちー君、今日はイジラレ役決定!
「色んな所で撮影してますけどー、実際にやるのは始めてです!」
「あー、まあ初めてですと、怖い所はありますよね。ガチ組のリチャード君とかは、正直、近くで見ると怖いと思います。ふふ。仕方ないですね。元特殊部隊とか」
こそこそ……カオルさんがカメラに寄って……
「配信見てる皆さん、あのー、絶対に分からないと思いますけど……配信画面で見るのと全っ然違います。リチャード先生、超怖いです。オーラぷんぷんしてます。これ、絶対に歩いてると職質うける人です。何もしてないのに」
「いや、そうですかね……」
「はっ!?」
テルクニ君が笑います。
ふっ。分かってるくせに良くやる……
という笑いですが。
「ももちゃんさん、リチャード君は狼族なので、何言ってたか、全部聞こえてます」
「しまった!?」
「後で動画が上がったら、今何言ってたか私もチェックしますよ」
「カットー! カットカットー!」
「いやね。ももちゃん。こんな美味しい所、カット出来るわけないでしょ」
アシスタントもナイスな仕事です!
「うーそー!?」
「はい。じゃあきりの良い所で」
「きり良くないですうー!」
「というわけで、トミヤス先生、お願いします」
「何がというわけえー!? 何もなかったような進行しないでえー!?」
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インタビュータイムです。
最初はアダムさんです。顔はボカシではなく黒塗り。声も加工しています。
(仮名Aさん:神聖白露王国、退役軍人)
『知らない人もいるかもしれませんが、私の国では1年間の兵役義務があって、私は軍に入りました。その時に出会ったのがマーシャルアーツ。私はすぐに格闘技にのめり込んでしまいました。まずサンボ。柔術。空手。柔道。合気道。バジー拳』
『そんなにたくさん!?』
『他にも色々。こんな事を言うと女王陛下や元同僚に怒られるかもしれませんが、白状すると、タダで色々な格闘技を習えるから軍人の道を選んだ、という所が大きいです。しかも給料までもらえる。ははは』
『あはははは! そうだったんですね!』
『新しい格闘技の教官が来るたびに、私は足を運びました。ある時、昼休みに、教官が木刀の素振りをしているのを見ました。それは剣術の訓練ですか。これが私と剣術の出会いだったんです。教官は、ヤナギ車道流のブラックベルトでした』
ほとんど嘘八百ですが、真実も混ざっています!
上手い嘘のつきかたです!
『軍でも色々な武器術を学びますが、剣術はなくて。そして退役後、私は日輪国に来ました。Z(SNS)でトミヤス流を知りました。ファンの方には怒られるかもしれませんが、実は……ええ、ももちゃんの事は、この時に初めて知ったんですよね。私はヤナギ車道流の道場に行くつもりでしたが、武術の検索してたら、ももちゃんのSNSが引っ掛かって。観光のつもりで、まずこの道場に来たんです』
『最初は観光だったんですね』
『はい。見るだけで終わらせるつもりでしたが、私の実力はどうだろうと、トミヤス先生に話してみました。トミヤス先生は試してみますか? と、立ち会ってくれました。お互いに礼をして。大丈夫ですか? と、トミヤス先生が尋ねました。大丈夫です。答えた後は、記憶がありません。目が覚めたら私は道場の隅で寝ていました。3秒です』
3秒! これはスペシャルズの隊員1班がやられてしまった時間です。
『ええー!?』
『自慢に聞こえるかもしれませんが、私は軍ではかなりの実力でした。私は、格闘技で勝負をしてくれないか、と言いました。恥ずかしい事です。でも悔しかったんです。得意な格闘技なら。トミヤス先生は竹刀を置いて、立ち会ってくれました。構えた後は記憶がありません。私はまた寝ていたんです』
『ええ……本当に!?』
『女王陛下に誓って、嘘ではありません。で、私はトミヤス流に入ろうと決めました。護身術やフィットネスではなく、本当のと言うか……武術としてトミヤス流をやりたい。ここには護身術、フィットネスのコースもありますが、武術のコースもあります。武術のコースは、最初に入門試験があるんです』
『入門試験? どんな試験ですか?』
『スブリボーという、大きな木刀を、1ヶ月以内に、1日に2000回振れるようになれ。あの壁に掛かっている大きな木刀です。3kgあります。先が重いように出来ているので、振るのが大変です。ハンマーを振る訓練と似ているようで、全然違います』
アダムさんは2500回指定でしたが、インタビューでは2000に下げました。
『えー!? 3kgですかあ!?』
『私が今までに受けた訓練で、トップ3の厳しい訓練に入ります。軍で受けた訓練を合わせてもです。ですが、あちらのイマイさんを見て下さい』
『あの方』
『私よりもはるかに細いですし、すごく小さいのに、この試験を達成しています。今は4000回でも振れるそうです。分かるでしょうか。これは筋肉を鍛える訓練ではないのです』
『やっぱり根性とかですか?』
『いいえ。正しい身体の使い方。それが出来れば、2000なんて簡単に振れる。それを1ヶ月以内に見つけられるか否か、という試験なんです』
『なるほどー! つまり、自分の身体としっかり向き合えているか、という感じ?』
『そうです。トミヤス先生は片手で行います。初めて見た時、私は驚いて声が出ませんでした。本当に力ではないんです。トミヤス先生は、力なんて私より遥かに弱いのに、あんなに大きな木刀を片手で振って、ふひゅ! なんて音を出すんです。まるで真剣を振ったみたいに』
『凄ーい! 後で見せてもらいましょう!』
『きっと驚きますよ。皆、トミヤス流に入りたくなります。私もトミヤス先生のように強くなりたいですね』




