第26話
新しい門弟も増えた翌日――
ぴーんぽーん。
「はあーい!」
ぱたぱたぱた。がらり。
「はい。トミヤスでございますー」
クレールさんの少し裏声感のある、お客様向けの声です。
「や、朝からお邪魔致します。私こういう者で」
名刺。
さ!
「クレール=トミヤスと申します。今後ともご贔屓に」
ビジネスウーマンモード発動!
名刺交換して、ぴく! とクレールさんの眉が動きました。
「あら! 大中心国のお方でございましたか!」
「は! いや、先日こちらのテルクニ様がダンジョンを開くと。訓練コースなどもあると聞きまして……」
じー……
「まず契約書を確認させて頂いても宜しいでしょうか」
「はい。こちらを」
ぱらり……ぱらり……にっこり。
「大変申し訳もございませんけれども、今回は無かった事に」
門前払い!
「なにか、お気に触る所でも」
「はい! たくさん!」
クレールさん! 目が笑ってません!
あとド直球ストレートでの返答は……大中心国では意外と普通です。
「契約の見直しをして頂きましたら、また。それでは」
がらがらがら……
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「くっそ! 何だよこれ!」
テルクニ君激おこモード!
超煽りコメの嵐が来ました。コメでケンカとかしないで!
→日輪国が大中心武術に勝てると思ってんのか
→マそれ
→じゃ行きなさいよ
→行く価値もねえ
→でも金は欲しいとかw
→大中心国は日輪国の母だ
→イミフ
→義務教育で歴史の勉強しないのか? 教育制度何とかしろ
→これが本物の歴史だ
→歴史勉強しろって
→あれ絶対魔術チート
→大中心がチート批判とかw
→笑えるw
→俺なら勝てる。余裕
→生配信楽しみに待ってます!
→編集するなよ! 生配信だぞ!
→お前の母親を◯◯◯◯してやる。妹も◯◯◯◯してやる
→マジキチだぞ
→おいこいつ大丈夫か
→心配になってきたぞ。悪い事は言わない。病院行け
→お前の父親は俺だ
→すげえ! 勇者マサヒデ=トミヤスって大中心国で生きてたのか!
→写真うpして!
→チートの証拠上げてやる
→是非上げてくれ
→日輪武術はゴミだ。大中心武術のパクリだ。慰謝料を要求する
→すげえ! 大中心国が堂々とパクり批判するのか!
→自分パクっても黙ってるのにな
→父親キチってんじゃねえのか。魔族と結婚とかありえん
→この国、まだ差別意識あるんだな……
→可哀想に。リアル獣人萌え出来ないんだ
→でも金持ち魔族は居るんだよな。不思議だ
→お金持ちは誰でもウェルカム!
「やめてくれー!」
たたた! すぱーん!
「どうなさいました!?」
しくしく。
「カオルしゃん……皆がZ(SNS)でケンカするの……こんな炎上やだ……俺何もしてないのに、フォロワーが炎上させてくの……」
「見せて下さい」
「うん」
「……ははあ……少々お待ちを」
ぴぴぴ。ぷるるるる……ぷるるるる……
「カオル=サダマキ。2236L831FP」
『エージェント・カオル=サダマキ、確認しました。どのような御用ですか』
もろAI音声です。
「Zのアカウントの身元情報が欲しいです。アカウント名u36t60pgj。繰り返します。u36t60pgj。現在、テルクニ=トミヤスのアカウントに煽りコメントを流していますが、大中心国のエージェントではありませんか。確認願います」
ぽく……ぽく……ぽく……ちーん。
『アカウント名u36t60pgj確認しました。大中心国エージェント、ジュンラン=イン。36歳、男性。サイバーエージェント、危険度Dです。住所などの情報は必要ですか?』
「必要ありません」
『他のアカウント情報があります。そちらに送信しますか?』
「お願いします」
ぴ。
「テルクニ様、これは大中心国のエージェントです」
「は!? マジで!?」
「煽りコメを入れている者は恐らく……」
ぴろーん。
「来ました。少々……ふむ……」
つー、つー。スワイプスワイプ。
「あ、やはりこれは全員同一人物ですね。個人メッセージで、うーりあおじえにーみすたーじゅんらん、と打ち込んで下さい。全文ひらがなで、句読点も無しで良いです」
「うーり、あおじえに?」
「にー、です。伸ばして下さい。それで止まります」
かたかた……送信。
「……」
5分後。
「あれ。コメ削除しやがった」
「アカウントを100以上持っていますね。恐らく、大中心国がどうしてもスポンサーに割り込みたいのでしょう。受けざるを得ない状況にしたいのです」
→逃げたぞ
→無理だって
→コメ消しやがった
→アカウント消えてるー!
→ださw
→追伸:新しい垢作って戻ります
→www
→煽るだけ煽って即消滅かよ
→スクショ撮っちゃった!
→ナイスでーす
「うーん、大中心資本は怖いなあ。いつの間にか規約変わってたりするし、何の前触れもなく切られるし。小さく書いてあったりするんだよねー。規約はこっちが勝手に変えますよー、とかさー」
「スポンサーになって大金をどかんと入れ、独占状態にしたいのでしょう」
「絶対やだ。普通に来てくれれば、相手するのにね」
「テルクニ様に、誰々に勝ちを譲れと金を積んできましょう」
「でも訓練はしてね。誰々さんに訓練頼まないの? 頼みませーん」
かたかたかた……これこれ。
カオルさんが覗き込みます。
『盗聴器あるかな?』
ぴ。謎のアプリ起動!
「大丈夫です」
かたかたかた……
『レーザー盗聴器?』
カメラ起動。赤外線フィルターOFF(普通はこんな機能ついていません)。
撮影。
赤外線フィルターを取って窓などの写真を撮ると、ガラスに赤外線が当たってるかどうかが分かります。これマメです。
「ううん……」
でもカオルさんはちょっと不安。
青、緑系のレーザーもありますし、高性能な物だと、窓ではなく壁に当てても盗聴出来てしまいます。良い物だとkm離れてても聞こえます。さて、この場合どうしましょうか。
「少々お待ち下さい」
予備のスマホをバイブにして。壁に貼り付けて。
ぷるるる……ぷるるる……
びーん、びーん、とスマホが壁で音を立てています。これでOK!
盗聴器が拾うのは、びーん! という音だけです。
手持ち型のマッサージ機などが振動音が大きいのでベストですね。
「これで安心です」
「ふうー。大丈夫か」
「やれやれ。放っておくとしばらく面倒になりそうですが、何人か見せしめに始末しましょうか? 近くに居るなら私めが。海外に居ると、数日掛かる場合がありますが」
「んー、どうしようかなー。アダムさんに手伝ってもらえば、近くに居るなら即終わっちゃうけど」
見せしめに始末!
そこ悩むんですか!? そこ悩むんですね!
「ね。道場にも来るかな?」
「来ると思います」
にやり。
テルクニ君の黒い笑顔です!
「カオルさん、ももちゃんになって、道場に突撃取材してよ。撮影中にそいつらが来たら面白そうじゃない? うちは普通に大中心の門弟もいるしさあ」
カオルさんも黒くにっこりです!
「テルクニ様も中々に……まず、彼奴らの予定を探りましょう。今日中に来そうでしたら、少々急ぎます」
ぴぴぴ。ぷるるるる……ぷるるるる……
「カオル=サダマキ。D96SG52177」
『エージェント・カオル=サダマキ、確認しました。どのような御用ですか』
「トミヤス町付近の大中心国エージェントで、1週間以内にトミヤス町付近に来た者の情報を求めます。アルバイトを含めて下さい」
ぽく……ぽく……ぽく……ちーん。
『該当情報が3件あります。情報を送信しますか?』
にやり。
「お願いします」




