↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/44

第25話


「じゃ、バラバノフさん。これからアダムって呼んでいい?」


「は!」


「次からは、もう少尉って名乗らない方が良いよ。この国、白露と違って、現役軍人が来た! とか知られると、検索とかされるからね。そういう情報ってたまにモレてる事があるから。バレちゃった人には、聞かれたら適当な身分名乗ってね。後で軍にも用意してもらって。特殊部隊かよ、なんてもし知られたら、皆大興奮しちゃうから。米衆連合も、この国もね。まあ、この国って言っても、情報省はとっくに知ってるけど」


 ここには情報省所属のニンジャ、カオルさんが居ますからね。


「は。気を付けます」


「じゃ、最初の稽古だ。ガチでやりたい人は、最初にこれやるんだ。誰かー! 素振り棒持って来てー!」


「はーい!」


 でっけえ!


 刀身部分だけで80cmはありそうです! 幅は10cm! 全長は1mを軽く超えています! これが素振り棒なんです! ででーん!


 ごっとん、と置かれた重そうな棒を、テルクニ君は片手で拾い上げました。

 テルクニ君、まじすか?


「10回振って1回でもこの音が出たら、即合格。茶帯でスタート」


 ひゅ!


「立って」


「……」


 アダムさんもびっくり。

 片手で振るのは相当キツいはず……


「僕が魔王の家系だから振れるんじゃないよ。僕は魔力はあるけど、身体能力は人族とほとんど同じだからね。鍛えてはいるけど、りっちーなんかには全く敵わないし、アダムさんと力比べしても、秒で負けるよ。でも」


 ひゅ!


「こんな音が出ちゃうんだなあー。ほいどうぞ」


「は」


 受け取ってびっくり!


「重いでしょ? それ。木だけど水に沈むから」


「は!?」


「3kgあるかないかくらい」


 真剣で1kg前後なのに、重すぎないですか!?

 と、お思いのそこのあなた!

 こういう木刀、本当にあります。本当に素振りで使うんですねえ。

 ええー? 本当にあるんですか?

 はい。クラブベル(検索すると出てきます)と同じですが、長く先重な分、身体がしっかり決まってないと、きちんと振れませんし、良い音は中々出ないんです。

 ただ振っているだけでは駄目なんですね。

 そうなんです!


「ま! ハイレベルのクラブベルトレーニングって感じかな! 分かるよね? クラブベル」


「はい」


「左手を下。右手を上。小指から握り込んでいく」


「は!」


「おっけ! 好きに10回振って」


 ぶうん!


「おっ!?」


「流されちゃうなあ。体幹が出来てない。りっちーとかも、力は強いけど、重さはアダムさんより全然軽いんだ。体重が軽くて、強い力で振るのに、流されないんだ。体幹とか、身体の中心とか……ま、色々あるけど。このトレーニングだけでも、もう軍で使えちゃうかな? さあ、あと9回」


「は!」


 ぶうん!


「駄あ目、駄目。筋肉で踏ん張っちゃー駄目。バランスがっちり決めてー」


「は!」


 ぶうん!


「駄目駄目! 踏ん張らないでも流されないって所から頑張ろうか。腰の高さで止めるんだ。しっかり握れてれば、腰の高さで止まるから、後は身体が前屈みに流されないようにするだけ」


「は!」


 ぶうん!


「駄目だねえ。アダムさん、鍛えてるつもりで止まってたんだ。身体の芯まで鍛えられてないって、自分でも分かるよね。はい次ー」


「は!」


 ぶうん!


「あと5かーい」



----------



 アダムさん、10回の素振りで、プライド粉砕です。

 テルクニ君の隣に、りっちー君とイマイ君、ガチ組の2人が正座して座っています。


「じゃ、アダムさんはかなり身体は出来てるから……そうね、1日に2500回振れるようになってね」


 イマイ君がちょっとびっくり。

 イマイ君は2000回でした。


「宗家、2500ですか」


「そうだよ。アダムさんは現役軍人だよ。素人と同じに扱っちゃあ失礼でしょ。期間は1ヶ月。31日あげる。1ヶ月以内に出来なかったら、ガチ武術コースには入門させないから、そのつもりでね。国に帰るのに、この棒振りトレーニングがお土産だけじゃ、ちょっと足りないでしょ? 頑張ってね」


 この2人は、この試練をくぐり抜けたのです。

 フィットネスの方で教えているカオルさんもです。


「イマイ君」


「は!」


「振ってみて」


「は!」


 イマイ君が立ち上がって、アダムさんに手を差し出しました。

 ガタイが全然違います。アダムさんより、頭ひとつ小さいです。


「アダムさん。イマイ君の振りはまだまだだけど、そーんなちいちゃな子供みたいな奴でも、ちゃんと振れるんだ。勿論、イマイ君は人族だよ。さ、イマイ君」


「いきます! 1!」


 ぶん!


「2!」


 ぶん!


 全然違う……自分より遥かに小さいのに、あんなに重く振りにくい棒を、しっかり振っている! アダムさん、びっくりです!


「はい、もういいよー。イマイ君、今なら日に何回振れそう?」


「バイトがないなら、4000か……もう少しはいけそうでしょうか……」


「まだ4000レベルかあ。ううん……もうちょっと欲しかったな」


「むむ……申し訳もございません」


「ま! こういうわけですよー。アダムさんのガタイでも、イマイ君みたいな小さい人に負けてるわけ。鍛え方の違いってやつかな。じゃ、りっちー」


「はい」


「撮影もあって忙しいと思うけど、たまに見てあげて。特戦隊と夢想派で鍛えた仕込み方で、1ヶ月以内に振れるようにしてあげてよ。ライサに怒られちゃうからさ。あ、僕じゃなくて、アダムさんがね」


「お任せ下さい。アダム……と申されましたか」


「は。アダム=クジミーチ=バラバノフ。階級は少尉であります」


 きらーん!

 りっちー君の目がガチです!


「分かりました。ではバラバノフさん。その素振り棒を持って庭へ……現役のスペシャルズの鍛えた身体、見せてもらいます」


「りっちー! ス……ん、おほん! は、聞かれちゃ駄目だから」


「おっと、これは失礼しました。ではバラバノフさん。行きましょう」


「は!」


「敬礼はいりません。ここは軍ではありませんから」



----------



 2時間後……


「どうした! 気合を入れろ! 頭の上に持っていくだけだ! やれ! いけ!」


「ぐ、ぐ、ぐ……」


「何をちんたらしている! それでも現役なのか!? 既に新兵訓練は終えたはずだ! 行け! Do it!(やれ!) Do it! One more!(もっかい!) One more!」


「だあっ!」


「なんだそのへっぴり腰は! それで本職か!? 貴様、身分詐称していまいな! 俺の目がおかしいのか! さあ次だ! 振り上げろ!」


「ううぐっ!」


「そんな振り上げ方で女を喜ばせられるか! 思い切り突き上げろ! さあイカせてやれ! 思い切り振り下ろせ!」


「ぬうっ!」


「なんだそれは! ジジイの(※検閲削除)の方がまだマシだ! 腰を据えろ! 背筋を伸ばせ! おいそのケツはなんだ! 俺に(※検閲削除)してほしいのか! その汚いケツを突き出すな! 汚らわしい! 引っ込めろ!」


 りっちー君! ここは軍じゃあないんですよ!

 でも言ってる事は、実は正しい姿勢作りのコツだったりする所がミソです。


「わざと苦しいふりをして同情を引きたいか! この負け犬根性のゴミ溜め野郎が! そうではない!? なら振れ! 振ってみせろ! 俺の頭にそのどでかい木刀をぶち込んで見せろ!」


「ぬああー!」


「いい鳴き声だ! 俺はお前みたいな弱虫の泣き虫のクソムシ野郎の鳴き声が大好きなんだ! こんな初心者稽古に付き合わされてうんざりしているんだ! さあもっと俺を楽しませろ!」


「ウーラー!」


 またやってますねえ! という顔で、門弟さん達が見てます。

 ガチでやりたい! って人にはやらせてますから、この光景には慣れてるんです。

 殆どが折れて護身術コースか他の道場に行きます。



----------



 稽古時間終了。

 りっちー君の罵声がぴたりと止まりました。


「時間です」


「く……」


 残念! 初日で2500回は流石に無理でした!


「初日でこれだけ振れれば上出来も上出来。2500回など、1ヶ月もいらないでしょう。ところで、腕はぱんぱんになっていませんか?」


「は……」


「それは『出来ていない』証拠です。2代目のマサヒデ様は、人族の身で日に万も軽く振れたのです。正しい姿勢はもとより、正しい身体の使い方が出来ていないのです。出来た時、こんな素振りなど、ほとんど力を使わずに出来ます。でなければ、どんなに鍛えても、万など振れません」


「ううむ」


「その使い方を見つけて下さい。身体の方が勝手に教えてくれます。では、明日は今日よりも振れるようになって下さい」


「はい」


「さ、座って休んだら、着替えてお帰り下さい。今日は道場の掃除は免除します」


 アダムさん、がっくりです。

 今日はゆっくり休んで下さいね。

 明日は今日よりも振らないといけないんですよ。

 そう! 明日は筋肉痛地獄です! 筋トレし過ぎの翌日!

 でも、アダムさんは現役の特殊部隊員! 覚悟完了してます! 余裕です!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。