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第24話


 翌朝、テルクニ君はライサ女王様につきあわされ、カラオケに来ました。

 今日帰るので、仕方ない、つきあってやるか感が満々ですが、王女様は1人で熱唱中です。


「一生うごーけーなーいー! それーがさだーめだろっおー!

 あきーらーめーがかんーじーん! 目覚めーるー事はないー!

 ときーめーきーは淀ーむー! じだーいーをー映してるー!

 色なーんーてなーいー! 黒く燃えーるほのーおー!」


 βバンダムOP(前期)です。

 破滅思想の人が好きなわけです。


「次じゃ……これ」


 ぴぽぴ……予約OK。


「青いはーずのー♪ 水の星はー♪ 濁るー♪

 くーちづーけ無理っ! 命の灯(ひ)ーがー消えるっ!

 ひーとーよー♪ 時というっ! ぜつぼーうーのー♪ 悲しみはー♪

 大空でーパラシュートーなしのーダイビンーグー♪」


 βバンダムOP(後期)です。

 破滅思想の人が好きなわけです。


「ふー! 次は……」


「ライサ、メイクロス行こうぜ。やっぱ女ボーカルじゃねえと」


 メイクロスとは!

 バンダムに並ぶ機神アニメです。

 戦闘機から変形する機神の格好良さもありますが、何より歌!

 このアニメは歌をメインにしていますから、とにかく名曲が多い!

 勿論BGMもハイレベルです!


 ちなみに、バンナムとメイクロスで歌った歌手は、後にミリオンを達成した人が何人も出ているので、このどちらかで歌うとオオモノになれるというジンクスがあります。

 どちらかのアニメでオーディションを行うと、本当に燃えそうに気合入れた若手が大量に来ます。


「メイクロスはなー! ハイレベルなのが多いのじゃー。でもテルクニのリクに応えよう……って歌多すぎ問題! どれが良いのじゃ!?」


「トライアングル」


「レベル高っ!? 入りからキツいぞ!?」


「んー、じゃあ、タイガー?」


「2人ボーカルを1人で!?」


「じゃあ、恋覚えてますか?」


「ううむ、初代劇場版は外せぬな……」


 どの作品もまず初代を1度は見ないといけませんよね。

 全部とは言いませんが、数話は見て欲しいです。

 もしくは劇場版みたいなまとめ系。


「あ、そうじゃ。劇場版の4kリマスターはいつじゃったか?」


「9月、9月。俺も超楽しみにしてんだよ!」


「あのミサイルの嵐が4kで見られるのか! のーう、送ってくれんかあん? どうせ白露じゃと半年遅れとかあーん、一部カットされたりするんじゃあーん」


 女王様の甘えんぼボイスが来ました!

 でもテルクニ君は不安そうな顔。


「めっちゃ厳しく検閲されて、結局中身は白露版にすり替えられるんじゃないの? まあ、金払ってくれるなら、買って送ってはみるけど」


「ううーん……一縷の望みに掛けてみる。いくらじゃった? 初回限定盤の方」


「ちょっと待って……」


 メイクロス 4kリマスター 限定版 検索。ぽちっとな。


「銀貨80枚ね。そっちの王宮に送るんだから、送料も入れてよ。航空便って結構するんだから」


「金貨1枚で足りるかの?」


「んー、足りると思うけど、限定版だと色々ついて重いかもね。重いと高くなるから、足らんかったらまた連絡するよ……よーやーくー……はい。予約OKでーす」


「良いのう! こっちのジャングルプライムは!」


 『ジャングル』とは、世界最大手の通販サイトの事です。

 『ジャングルプライム』は、月に銅貨60枚で、特急配達とかアニメ見放題プランがついてくるプランの事です。


「でしょ? ライサ、日輪国か魔の国に引っ越したら? 領事館で仕事しなよ。大丈夫そうなら米衆でも良いけど」


「それなー。冗談抜きに考えておる……じゃが、表向きの理由がなあいのじゃあ! アニメとゲームでは……一応、女王という面子があるから……別に、アニメ、ゲーム好きは構わぬ。女王様もカワイイ所ある系! で、フォロワー増やせるし。じゃが、その為に引っ越しは流石にのう。引かれるじゃろうし、お前は政務ほっぽり出して何をしておると大炎上じゃ……ちゃんと仕事はしておるのじゃが……」


 しょんぼり。

 女王様も人なんです。

 ちゃんと仕事はしてますから、フリータイムくらいアニメを見させてあげて!

 ノーカット版を見せてあげて下さい!


 今回のお忍び旅行も、仕事を前倒しに前倒しして、何とか作った時間なんです!

 ネトゲ(スマホゲー含む)は1日30分! と我慢して、苦労した結果です!


「何か良い理由はないかのう?」


「偽装で暗殺者に襲われたとかにしなよ」


「それじゃと物騒過ぎるのう。領事館もぴりぴりして、24時間でスペシャルズ達が密着じゃ。ゲームも出来ん。視察やお忍び旅行じゃと、今回みたいに2、3日で帰らねばならぬし。公式訪問じゃと暇は0になってしまうし」


「ううん……偽装だから良いんじゃない? 周りのスペシャルズの人には、理由話してさ。恥ずかしいかもしんないけど。表向きだからね。外に出る時だけとか、がっちがちに固めてもらえば良いだけじゃん」


 む! と女王様が口を尖らせます。

 あっ! その顔カワイイですよ!

 『拗ねる女王様』でイイネ♡が付きまくりです!

 インプレッション(表示回数)もめちゃ取れそうですよ!


「このカラオケにスペシャルズ達が並んでおっても良いのか?」


「うわ! 確かにそれは嫌だ!」


「そうなってしまうんじゃ……」


 がっくり。

 偽装暗殺未遂計画はボツですね。


「アニメ好きに産まれた己が身を呪うが良い……」


「この道に引きずり込んだのはテルクニじゃろ!?」


「てへぺろー」


「責任を取れ! こんな身にした責任を!」


「ちょっと誤解生むような発言やめて!?」



----------



 そうして、ライサ女王はサン落雁をお土産に帰って行きました。

 必ず4kリマスターを送ってくれ、とテルクニ君に手を合わせて。


 門の外まで出てお見送りしてから、うーん! と伸びをして、テルクニ君は戻って行きました。


「ああ、そうでした。テルクニ」


「なあに? 買い物?」


 マツさんの黒い笑顔。


「道場に新しいお弟子さんが来てますよ」


「……」


「顔見せくらいはしておきなさいな」


 嫌な予感がびんびんします。

 てくてくてく……

 開けたくない……がらり。


「あ、宗家。お疲れ様です」

「お疲れ様でーす」

「アダム=クジミーチ=バラバノフ少尉であります!」

「宗家ー。今度私も撮影に出して下さいよー」

「私も配信デビューしたいですー」


 何か違う人が混ざってます!


「あんたスペっ……」


 テルクニ君! 言ってはいけない!


「えふん! おほーん! じゃねえかよ!?」


「ははっ! 粉骨砕身! トミヤス流を学びます!」


 道着なのに敬礼が似合いすぎる!


「ん、おほん……じゃ、じゃあ、ね? 皆、稽古続けてて。僕、バラバノフさんと話あるから……バラバノフさんね、ちょっとこっち」


 こいこい。


「ははっ!」


 テルクニ君が上座に座っても、アダムさんはぴしっと気を付け。


「座って」


「は!」


 き! かしん! ぴしり!

 メカ的な音がしそうな程に、きっちりと正座。


「あ、正座大丈夫なの?」


「は。柔術もブラウンベルトまでは」


「オーケー。うーん、一応確認するけど、ガチコース……あれよ。あいつらみたいなフィットネスとか護身術じゃなくて、戦闘技術として? 武術学ぶってわけね」


「は!」


「うん……」


「何か問題がありましょうか」


「ん? ああいや。こっちは全く問題ないんだ。大体、ダンジョンオープンしたら、訓練コースとか作るしさ。そういう実地訓練じゃなくて、ガチで学びたいって事だね」


「は!」


 テルクニ君が珍しく真面目フェイスです。


「うん……うん、うん。多分、始めて半年か……長くて1年くらいは、全然役に立つかどうか分からないと思う。こんな型通りの稽古して、何の役に立つんだろうとか、さっぱり分からない事ばっかだと思う。無駄な時間過ごしてるんじゃないのかって、絶対に思うはずだよ。軍の戦闘術と違って、武術って、時間かけて磨いて磨いてっていうのばっかりなんだ」


「はい」


「ひたすら練習重ねて、身体に何かが染み付いた時に、ぱっと変わるんだ。でも、それだと軍人さんには遅い。そこそこ強くなった、と思えた時には、もうジジイになってるはずだよ。僕だって全然って自覚してる」


「……」


「だから、何か習ったら、細かく分析して。身体全体の、爪の先から肌の動きまで、ひとつひとつの動きを分析して。良い、と言われた時の動きをしっかり覚えておいて、家に帰った時に、忘れないうちに全部記録して、バラバラにする。で、この動きはここに応用出来ないだろうか。この力の働きをここに利用したら。そういう事をしてみて。軍に使える技術なんて、腐る程に隠れてるから」


「は!」


「りっちー。リチャードね。あいつだって、元々はうちの分派習ってから軍に入ったんだ。何であの若さで特戦隊に入れたんだろう。当たり前だけど、特戦隊は家の名では選ばれない。りっちーは分かってるんだ。武術の動きって、軍でもめちゃ使えるって所。バラバノフさんも、そうあって欲しいな」


 テルクニ君がにやっと笑いました。

 おお、なにか宗家っぽい貫禄があります! いつもと違いますよ!


「それが出来たなら、国に帰る頃には新しい軍隊格闘技が生まれてるんじゃないかな。白帯でも、出来る人はそういう事が出来ちゃうんだ。昇段試験なんか無視していいよ。帯の色なんて関係なし。トミヤス流は、勝った奴が正義。武道じゃない。武術だから。ガチでやるなら、白帯かよって馬鹿にする奴がいたら、勝って正義を見せてもOK。道場の中ではね。外ではやめてね」


「は!」


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