第23話
とっくに23時を過ぎましたが、ヲタ2人のトークは止まりません。
「武芸者商売は良いの。今でも観ておるが、他に何かオススメ作品はないか」
「白露で手に入るか分からんけど、明るい系なら三騎士が斬るかな。でも俺としちゃー鬼タニ犯科帳。やっぱ海外の人にも粋ってもんを知って欲しいよね」
「鬼タニ?」
「鬼のタニガワ。昔の名奉行。火付盗賊改方っていう、今で言うと……軍警察とか、憲兵的な仕事に近いかな。オリネオにも居たんだよ。父さん母さんとも知り合い」
「なんじゃと!?」
「母さんは良く知ってるよ。父さんがオリネオに来る前からの知り合いだもん。演者も顔は違うけど、かなり本物に近い雰囲気出てるって。格好良いんだよ」
ちら、とライサ女王が襖を見ました。
マツさんもクレールさんも、22時には寝てしまいます。
「むう……もう寝てしもうたの……」
「あのね、原作の人、武芸者商売と同じなのよ。面白くないわけないでしょ」
「何! 買っていこう!」
「これも長く続いてるから、武芸者商売と順番に見るんだよね」
「もう武芸者商売は、最初のナレーションの入りを聞いただけで、内容を思い出せる程に観ておるが、観あきんな」
女王、それは観すぎです……
と言いたい所ですが、筆者も剣客◯売の入りのナレーションと背景を観ただけで内容を思い出せます。タイトルまでは無理なので、まだまだですね。
『その日、小◯衛は……』『あ、第3シリーズのあれか』
までには届いています。
「さっきのアニメどうよ。魔剣英雄伝説サトル」
「んー! 面白いのは分かるが、私にはいまひとつ合わんの!」
「んー! 駄目か! やっぱβバンダム好きには合わないかなー」
バンダム!
今や日輪国の機神アニメと言ったらこれが筆頭に上がる作品です。
30年以上もシリーズが続く、アニメ会の大御所!
この作品が出るまでは、ほとんどの主人公は元気一杯、正義感モリモリのヒーローが当たり前でした。
ですが、このシリーズの主人公は、大体悩みを抱えたり、暗かったり、トラウマ的な感じになったりと、苦悩を抱えています。
単純にバチバチやり合うだけでなく、政治的な所も語られたりと、結構複雑な所もあるんです。その辺りの要素が画期的なものでした。
ちなみにβバンダムは2作目。
OPアニメは超気合を入れて作られており、現代の下手なCGアニメを超えた出来と有名です。30年前の作品でそれほど言われる出来です。
βバンダム好きは破滅思考な人が多いと言われますが、女王は大丈夫です。
「あー。ライサだったらクローズアンジェリカとかモロ刺さるかも」
「クローズアンジェリカ……? 知らぬ」
「だと思った! 絶対白露じゃ放送されないと思うよ。規制されてると思うから、通販とか動画サイトも無理じゃない? ブルーレイ買ってこっそり持ってきなよ」
「どんなんじゃ?」
「魔術使えないと差別される世界で、王女様が魔術使えねーの。で、本人もそれ知らなかったの。それがバレちゃって、最前線の使い捨て兵士みたいな感じになんの。んでも王女様プライド的なのはしっかりあって、性格も悪いのよ、これが。もう周りとギクシャクすんだけどさあ。まーギクシャクって優しい感じじゃないかな。イジメ暴力当たり前的な」
「ふむふむ」
「んまっ! 続きは見てのお楽しみってね!」
「酷い! そこまで教えておいて!」
「好きでしょ? こういうの」
「うん。好き」
「あとはさー……俺的には月斗魔神シリーズ見て欲しいなー!」
「んー、スーパー系アニメはいまいち刺さらん……最近の月斗魔神は大体虚無で終わるし……でも、真・月斗魔神のOPは好きじゃ。世界終了の日。仕事中に流すとテンション爆上がりじゃ! テンション上げる時は真・月斗魔神かメイクロスじゃな」
「んふふふ……女王様も知らないみたいだなー! あれさ……んー、ちょっと待ってて。りっちー呼んでくるから」
「なんでリチャードが出てくる?」
「まあまあまあ。聞けばビックリだから」
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にやにや。
にやにや。
テルクニ君だけでなく、りっちー君までにやにやして、居間に入って来ました。
「さ、女王。茶を足しましょう……」
りっちー君が気を利かせながらも、にやにやしています。
「なんじゃ。リチャードまでにやにやしおってからに」
「ライサ女王。あのアニメは私も見ておりますが」
これは珍しい。りっちー君がアニメとは、イメージと全然合いません。
「ほう? リチャードがアニメとは……驚いた」
テルクニ君とりっちー君が顔を見合わせています。
にやにやしています。
嫌らしいです!
「むう! 何なのじゃ! さっきからにやにやしおって!」
「ふっ……ライサ女王」
「なんじゃ」
「あれには、一部実話が含まれております」
「は?」
あんなブッ飛んだアニメに実話……?
誰かが月斗魔神で光線を出したのか?
「月斗魔神は使う者を選ぶ……あれは実話です」
「は!?」
「若のお父上、マサヒデ様と、私の大叔母のイザベルは、月斗魔神に選ばれました。これは記録からは抹消されておりますので、話さないで下さい」
「う、うん……」
「まだマサヒデ様と、大叔母様が勇者祭の旅の最中の事です。月斗魔神を手にする機会があったのです。カゲミツ公の物ではなく、別の月斗魔神です」
「ふむ」
「詳しい経緯までは流石に話せませんが……まあ、手に入れる事が出来ました。お二人が手にした時、声が聞こえたそうです。頭の中、身体の中……いきなり声が聞こえたら驚きそうなものですが、何だか知っている者の声のようで、全く不自然を感じず」
「こ、怖いの……」
「その声は、かの刀匠オトサメの声。お二人は、その声から使い方を知りました。そして、大叔母様は、声を聞くのみでなく、魔力の行き着く先まで見えたと……」
「魔力の行き着く先?」
「はい。いくつもの世界が見えたそうです。戦いの世界ばかりがいくつも。しかし、最後に、新たな世界の産声を聞いたそうです。世界中からの、全宇宙からの、喜びの声、幸せの感情。そういったものを全身で感じ……はっと目が覚めた時には、皆には一瞬ぼーっとしていただけのように見えたようで」
「……虚無で終わりではないのか……」
「そうです。そして、日白戦争の最後の事です」
日輪国と、白露がまだ白露帝国という名の時代、この2国は戦争があったのです。
さらに教会まで絡んできて、教会が大きな白露帝国からは、聖騎士が何人も送られてきました。
聖騎士はとんでもない力を持つ、魔剣のような鎧を着た騎士の事。
教会だけが持つ秘密の製法で作られた鎧をまとい、銃も爆弾も効かない鎧です。
鎧だけでなく、着ている者にも全くダメージが通らないという、恐ろしい鎧です。
「何かあったのじゃな?」
「はい。大叔母様は、魔の国で厳重に封印されているはずの月斗魔神の声を聞いたのです。呼べ、私を呼べ。死の間際、朦朧とした頭で、言われるままに、月斗魔神、と口にした時、大叔母様の身体に異変が起こったのです。一瞬で怪我が治り、手には大鎌を握っていて、背中から羽のようなものが生えたそうで」
「なんじゃそれは?」
「ところで、日白戦争の最後には、多数の聖騎士が亡くなられましたね」
「らしいな。驚くべきことに、マサヒデ公がばっさばっさと斬ったとか?」
「記録上はそうなっていますが、あれは大叔母様が斬ったというか、殺したのです」
「は!?」
「大叔母様の身体が変化した後、恐ろしい速さで動いたそうです。このまま聖騎士を生かしておいてはならぬ。そう思い、聖騎士に向かうと、当たり前のように手が鎧を突き破り、心臓を握り潰していたとか」
「まさか……リチャード、お前な」
「信じてもらわずとも構いませんが……実は、その場にはシズク様もおられたのですよ。見ていたのです。全てを。最後は聖剣を持った聖騎士と撃ち合い、聖剣の持つ破滅の力と、大叔母様の中にあった月斗魔神の力がぶつかりあいまして……結果はお分かりですね」
りっちー君もテルクニ君もにやにやしてます。
これはもしかして本当のお話でしょうか?
「……本当なのじゃな?」
「さ。大叔母様のホラ話、かも。知れませぬが。世界終了の日の、機神・月斗魔神は、その時の大叔母様の姿をモデルにしているとかいないとか」
「……」
「ちゅーわけ! な! ライサ、月斗魔神シリーズ、見たくなったろ?」
「うん……」
「あの虚無で終わっちまう世界とかは、イザベルさんが見た戦いの果ての世界の話がモデルになってんだ。あんな最悪な世界をいくつも見て、最後は喜びと幸せの世界。原作者は死んじまったから、最後の世界が描けなかったけどさ。見たかったよな。どんな風に表現したんだろうな」
「おお……どうなんじゃろうな……」
「最初はさ、月斗魔神に選ばれたらどうのってなかったろ。シリーズ重ねて、なんか選ばれるとか変な設定加わってくるの、真・月斗魔神からじゃんか。イザベルさんに話聞いたからなんだぜ」
「なんと!? そうじゃったのか!」
「そうだよ! 秘密だぜ、この話。歴史の闇っつーか……闇じゃあねえけど、知られるとな。封印されてても力が出ちまうなんて、危なすぎるだろ。聖剣も出てくるし、教会の面子もあるだろ?」
「うん……そうじゃの……聞かなんだ事にしておく。でも月斗魔神は第1シリーズから、もう1回見直す」
「でもさ、りっちーもライサも良く考えてみろよ。月斗魔神が使い手を選ぶって、全然おかしくねえんだ。聖騎士の鎧だって、使い手選ぶじゃんか」
「あっ!」「確かに!」
「魔剣とか称号武器が使い手選んだって、全然おかしくねえと思わねえ?」
そう言えばそうですね!
「思う……」「思います……」
「そーゆう事! 魔剣もブッ飛ぶ月斗魔神だぜ? 使い手選んだっておかしくねえよ。知られてる魔剣も称号武器も、本当の力ってのがあるかもな。ロマンだろ?」
「うんうん! ロマンじゃな!」
「若、私も何かに選ばれるでしょうか!」
「かもよ。イザベルさんと同じ血引いてんだからさ!」




