第22話
班長達が道場から出て、りっちー君が廊下に出ました。
雨戸を閉めるためですが……
「あ、りっちー。いいよ、閉めなくて」
「いやいや、若。銃弾が飛んで行ったらどうするのです」
「あ、そうだった。頼むわ」
がたがたがた。
真っ暗になった道場で、カオルさんがスマホのライトをつけました。
「あ、カオルさん、いいよ。向こうが明るくしてくれるから」
「は?」
「フラッシュライトつけて突入してくるから。目閉じてるか……あ、カオルさんは天井に張り付いてても良いよ。入口の所で」
「若、私はどうしましょうか」
「りっちーは、最初はそこで寝てて」
「は?」
「カオルさんも一緒に寝ててって言いたい所だけど、今日はカオルさんの腕、見たいからね。そうだな、最初はカオルさんだけで始末してよ。僕、隠れてるから。カオルさんなら大丈夫でしょ。相手、ハンドガンとナイフだけだもん」
りっちー君、困惑!
「わ、若! 私は寝ているだけですか!?」
はあ! これ見よがしの溜め息! テルクニ君、性格悪いですねー。
「あのさあ。特戦隊、普通に銃相手に剣使って戦うでしょー? りっちーなら余裕でしょ? 場所も完璧に頭に入ってるし。目瞑ってても勝てるでしょ?」
「ううむ……目を瞑っては少々厳しいかも……」
「そこは、あ、そうでした。てへって言って欲しかったな。なんか俺も自信無くすわ」
「う、すみません」
「じゃ、カオルさん。見てるからね」
ぱちん! とテルクニ君が指を鳴らすと、消えてしまいました。
「は!? これはイノカシの! 煙なしで……」
「あ、サダマキ殿、違います。若の魔術です。今、異空間的な所におられます」
「異空間!?」
これはお母さんのマツさんが独自に研究して作った魔術です。
勿論、テルクニ君にも激しく仕込まれています。
「はい。我らからは見えませんが、若の方は我らを見ております。もうこの術を使った時点で若の勝ちなのですが。ふふふ。格好付けて指を鳴らしただけです。別に呪文も何も唱えずに、ふっと消えますから」
「……」
「サダマキ殿、ご安心下さい。覗きなどには使いません」
確かに覗き放題ですね!
「いや、いや、そうではなくて……」
「ままま、サダマキ殿、この話は置いておいて、後に。5分もせずに突入して来ますから。此度はサダマキ殿の試験です」
「はっ!」
そうでした! 大変! あと5分もないですよ!
「危うくなったら、私と若が出ますから……では、私はここで寝ております」
ごろん、とりっちー君も縁側に転がりました。
さあカオルさん! どうしましょう!
入口の天井? いやいや……
さ、とカオルさんが道場を出て行きました。
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そして5分後。
おおっと、素直に玄関から来ますか。
(準備)
さささ。皆が拳銃とフラッシュライトを出しました。
同時に、一番後ろに、すっと影が……
(カウント開始。3(トゥリー)、2(ドゥヴァ)、1(アジン))
「ゴー」
カオルさんのゴー。
は! と班長と隊員が横を向きました。
ぱぱん!
蟇肌竹刀が2人の首を横に叩きました。
「全滅です」
「……」「……」
2人が後ろを見ると、首に白い粉が着いた3人が立っていました。
カオルさん、格好良いですよ!
「お疲れ様でした。では、Б(ベー)班の方に10分後に突入とお伝え下さい」
「む、むむ、む……参りました」
カオルさんも大丈夫そうですね!
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からからから……
「ふーっ!」
カオルさんが玄関を閉めた後、ヤバかった! と息を吐きます。
背中が冷や汗でびっしょり。
「流石に本職相手は緊張しちゃうかあ」
「は……正面きって……とは違いますが、まともにぶつかるというか。諜報員相手はありますが、軍、それも特殊部隊など、初めてで」
「あはは! そんな調子じゃ、初代カオルさんには届かないな!」
カオルさん、がっくりです。
でも、十分に合格点です。頑張りましたよ!
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そして21時。
がらがらーっ。
「ただーいまー」
「おおーう!」
ライサ女王のお返事。
居間に入ると、マツさん、クレールさんとテレビを見てます。
音楽番組も地味になりました。
セットも司会とソファーだけ。
呼ばれるのは昔懐かしの方だけでローテーション。
ある程度放送すると、編集でまとめてスペシャルと銘打った再放送。
テルクニ君は呆れ顔でリモコンを取ります。
「ちょっと、ライサが来てるのにこんなのやめようよ。白露で中々見れない番組にしなきゃ」
「何をするんです!」
「母さん。こんなの見なくても、動画検索したらいくらでも見れるでしょ?」
スマホ出して検索。
「ほら。いくらでもあるじゃん」
「今のお姿が見たいんですよ!」
「これ再放送じゃん」
「ぐっ」
「9時台だったらこれしょ」
はっ! ライサ女王! これは往年の名作アニメですよ!
神聖白露王国では放映されませんでした!
「なんじゃこれは」
「白露じゃ放映されてないもんねー。魔剣英雄伝説サトル」
「ほーん……」
「次の超機神大戦に出るんだよ、これ」
「何っ!?」
超機神大戦!
懐かしの機神アニメから最新の機神アニメがクロスオーバーするゲームです!
ライサ女王も大好き!
ちなみにライサ女王はゲームではスーパー系をメインで使いますが、アニメはリアル系に偏ってます。特に好きなのは甲機士シリーズです。
甲機士シリーズとは!
初代の甲機士サンバインから、OVAがいくつも作られたアニメです。
教会の聖騎士に影響を大きく受けたアニメで、放送当時は賛否両論でしたが、後に大きく評価された作品です。100年以上生きている亀の甲羅を使った生物的な機神達のデザインは特徴的で、今も人気です。
魔術を使えるこの世界の人間が、魔術を使えない人々が暮らす世界で騎士として戦う物語です。ファンからは『時代を先取りしすぎた作品』と呼ばれていますね。
現在、世に溢れる異世界転生モノの基礎を作ったのが、この作品です。
当時はそんな発想はほとんど無かったんですよ。
「初代だから30年くらい前の作品かな? 気に入ったらブルーレイ買ってきなよ」
「おう……でも、結構アニメアニメしておるな。子供っぽいというか」
「かもねー。結構面白いよ。俺は好きかなー」
「ふうむ。で、スペシャルズはどうであった」
「やっぱり威圧感あるよねー! 怖いよ。説明してる時も、軽く頷いただけでぐっとくるもん」
「そこではなくして、立ち会いはどうであった」
「カオルさんは闇討ちで5秒で終わらせたね。りっちーは真正面からぶつかって20秒かかんなかった。俺3秒」
「はあっ……」
がっくり。精鋭部隊なのに……
ライサ女王、これは仕方ないです。相手が悪すぎます。
「もっと手抜いた方が良かった? 誰も怪我はしてないよ」
「送るから、がっつり訓練してくれ……」
大口のお客さんゲット。
がっかりしているライサ女王の向こうで、クレールさんがガッツポーズです。
「お客さん送ってくれるのは本当にありがたいけど、頼むから、米衆の人達と喧嘩しないでよ。スペシャルズの人らは多分大丈夫だろうけどさ。諜報部の人ら、灰蘭(米衆諜報部)とすげー仲悪いじゃん」
「他国の諜報部と仲の良い者はおるのか? それは潜入捜査ではないのか?」
「そりゃそうだ! あははは!」
「笑う所か……?」
「喧嘩したり、騒ぎ起こしたりしてくれなきゃ良いよ。俺はどっちも贔屓しないから。頼むからこの辺で銃撃戦とか爆発とかやめてよ。そんな事あったら、両成敗だから」
「両成敗ってなんじゃ」
「文字通り。両方とも成敗。1人残らず」
きらーん! テルクニ君の目が、一瞬ガチの光を出しました。
これは本当に殺られる!?
「それは勘弁してくれ! ちゃんと言い含めておくから!」




