第21話
ライサ王女はお泊りする事になりました。
折角なので……
「テルクニ様、これはチャンスです」
「う……うん、分かってる」
道場の隅っこで、テルクニ君とカオルさんのひそひそ話。
もうカオルさんにも分かっています。
あのボディーガードの人達は、全員が白露特殊部隊のスペシャルズです。
雰囲気が違い過ぎます。絶対に一般兵ではないです。
「白露軍をスポンサーにする大チャンスです。流石にスポンサーまでは行かずとも、報酬は期待出来るようになります」
「じゃあ……じゃあ、行くか。ライサに話してこよう」
女王を呼び捨てとは、流石テルクニ君です。
「ところで……あの、天然女王様が……」
「聞かなくても分かってるでしょ?」
カオルさん、目が泳いでます。泳ぎまくってます。
そうです。昨夜あなたがチャットしてたのは、神聖白露王国の女王様です。
名前通り、天然の女王様です。
カオルさん、あなた、女王様にかわいすぎw とか言ってたんですよ。
情報省も教えてくれれば良かったのに! ですよね。( ´,_ゝ`)プッ
自分がももちゃんだとバレないようにするしかありませんね。
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すぱすぱ……
さらーっ。
「うぃっすー。ライサー」
「こらっ! テルクニ! いい加減になさい!」
「そうですよ!」
むきー! とマツさんとクレールさんが怒りますが、テルクニ君はどこ吹く風。
ライサ女王も気にしてませんから、そんなに怒らなくても良いですよ。
「んー? なんじゃ? コンビニに行くのか? 桃ウォーターが良いの」
「あー違う違う。折角だから、一緒に来た人、稽古したげるよ。実際、噂とか聞いてるだけで、見た事ない人ばっかでしょ」
お? テルクニ君、本当にやるんですか?
「うぇ? 良いのか?」
「良いよ。あと、こっちの人、カオルさん」
げ!? 私ですかあ!?
カオルさんがわたわたしてます。
「ダンジョンの手伝いしてくれんだけどさあ。それなりには使えるけど、実戦だとねって不安があるから。いっちょ揉んでやって欲しいなって所もあるんだ。あそうだ。ついでにりっちーも呼ぼうか」
おおっ! とライサ女王が盛り上がります。
「リチャード2世じゃな! 動画は見たぞ! しかし、あやつは元特戦隊じゃろ? 大丈夫なのか?」
確かにそうですね。
「あ、うーん……難しい所もあるかな。呼べなかったらごめん。声は掛ける」
「何を言う! 良い良い! お前だけで十分なのに!」
「おっけ。じゃあ、ライサはここに居てね。皆、実弾しかないでしょ」
皆が口を半開きにしてしまいました。
仕込みなしのどっきり大成功! の時のあの顔です。
え? ど……どっきり? の放心してる時の顔です。
て、オイ! なんだよ! ってなる前の顔です。
「……は?」
「実弾で訓練するからさ。危ないから、ライサはここに居てね。俺、竹刀で良いから」
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そしてトミヤス道場前。
「ではですね、A班、Б(ベー)班、B班、Г(ゲー)班、Д(デー)班と、班ごとに行きましょう。武器は大きな音がしない物なら何でもありです。爆発物は駄目ですよ。警察呼ばれると面倒なんで。皆さん、サプレッサーは? 着けてますよね?」
む、と班長達が頷きます。
やっぱりスペシャルズは違いますね!
なんだか、小さく頷くだけで迫力があります!
「良かった。発砲音すると、警察が来ちゃいますからね。こっち3人は頭に当たっても全然構わないですが、皆さんは味方の誤射には気を付けて下さいね。実戦出た事ある人なら分かると思いますが、誤射ってかなりあるんで」
うむうむ、と班長達が頷きます。
やっぱり怖い!
「は」
「あと、流れ弾に気を付けて下さい。建物内ならいくら撃っても大丈夫ですけど、玄関は特に。壁も雨戸もケブラー中に仕込んでるんで、拳銃なら絶対に貫通しませんから。つっても、ワンホールショットは勘弁して下さい」
は!? とりっちー君とカオルさんがびっくり仰天。
「え!?」「そうだったのですか!?」
「……」
スペシャルズの人達も流石にびっくりです。
「りっちー、大丈夫だよ。しけらないように魔術仕込んでるから。結構大変だったんだぞ」
ケブラーは湿気に弱いんです。
湿気で丈夫さががくんと下がるんですね。梅雨時は大変です。
防刃ベストです、ケブラーです。丈夫ですよ。
うん、夏場は汗と湿気には気を付けましょう。さっくり刺されたら大変です。
ガチで考えてるなら、素直にプレート入りか、UHPEにしましょうね。高いけど。
「来年で運用期限だから、入れ替え作業手伝えよ。次はセラミック入れるからさ。あ、窓も防弾なんで平気です。本宅の窓も防弾にしたいけど、綺麗じゃないって母さん達が文句言うから……ぶつぶつ」
「わ、若……そ、それは、かなり掛かるのでは?」
「費用は全部レイシクランのお爺ちゃんが出してくれるよ。うちは家族が家族だから。ライサみたいなお客さんも来るし、万が一は許されないの。分かるでしょ?」
「いや、そこは承知ですが……」
この小さな道場や、平屋の数寄屋の家屋に、ケブラーが埋め込まれていたとは。
何だか、他にも色々と仕込まれていそうな感じですよ。
「で、訓練内容ですけど」
皆の驚きを華麗にスルーして説明開始!
「何処からでもいいんで、突入して僕を倒して下さい。以上です」
シンプル!
「カオルさんとりっちーも中にいるんで、気を付けて下さい。この2人は倒さなくても良いです。で、僕らの武器ですけど……」
テルクニ君が持ってきたのは、蟇肌竹刀と袋と真剣。
「はい、りっちー。はい、カオルさん」
「は」「はい」
「こういう感じ」
テルクニ君が竹刀の肌を触って手を向けると、白い粉。
「この白い粉が着いたらダウン。でー、こんなんで倒れやしないと思いますよね……よっこいせ」
袋から出したのは板っぽい……
こんこん。ごんごん!
「これ、レベルⅣの防弾プレートです。はい。ちょっと持って下さい」
「はい……・確かに」
米衆連合製 セラミックス レベルⅣ、と書いてありますね。
書いてあるだけかもしれないですけど、この重さは間違いなさそう。
ちなみにレベルⅣのプレートだと、アサルトライフルの徹甲弾も止めます。
「横を持ってこっち向けて下さい……そうそう。じゃ、動かないで下さいね」
テルクニ君……まさか。
真剣を手にとって……まさか! やるんですね!
きん!
「ま、トミヤス流、ある程度真面目にやってると、こんなの楽なものなんで……」
す、と綺麗に納刀。
格好良すぎです。
「おっ!?」
持っていたレベルⅣのプレートが! ズレちゃうズレちゃう!
「馬鹿な!?」「うっそだろ!?」「おいおいおい!?」
真っ二つに斬られたプレートを持った班長の人が、目を丸くして皆に見せてます。
хорошо(ハラショー)です!
「それ、本物のレベルⅣです。ま、少なくとも9mmは止めます。皆さんの銃はアレでしょ? ヤリギン443。試してみても良いですよ。PBP(443で使う9mm徹甲弾)あるなら是非。最低でもレベルⅢないとPBPは止められませんからね」
「……」
「というわけで、僕『達』相手だと全身をレベルⅣプレートで包んでも無駄ですので、当たらないで下さい。僕、こういう事が出来るから生き残ってこれたので」
あれも? これも?
と、班長がりっちー君とカオルさんを指差します。
「勿論。この2人も真面目にやってますから」
真剣を袋に入れて、蟇肌竹刀を取るテルクニ君。
良いですよ! 格好良いですよ!
この2人も出来るってのは嘘ですけど。
「じゃ、始めましょうか。A班から順番です。開始は10分後です」




