第20話
ダンジョン開店までもう10日を切りました。
これは昨夜のサムキン(ネトゲ)のチャットです。
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天然女王様 :おひさー
Mr.TK :しばらく
ももちゃん :おひさしぶりー
テキヤのジョー:忙しいな
天然女王様 :忙しいっすー
Mr.TK :死んだかと思ってたw
テキヤのジョー:ww
天然女王様 :ノート持ってったのに、パス忘れて入れんかった(TT
Mr.TK :まさに天然!
ももちゃん :かわいすぎw
テキヤのジョー:w
天然女王様 :明日ダンジョン遊びに行くー!
Mr.TK :見所ナッシングよ。ボス部屋オンリー
天然女王様 :でも行くー! 刀見せて
Mr.TK :構わんよ
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今日はカオルさんも道場の方に行って、門弟の皆さんにご挨拶です。
撮影以外では道場に来ていないので、門弟さん達は配信でしか見ていません。
「トミヤス道場ウキョウ支部におりました、カオル=サダマキと申します。しばらくこちらに在籍する事になりました。皆様、宜しくお願いします」
「「「宜しくお願いします」」」
皆の期待の目。
配信で顔を知っているだけに、期待してしまいますね。
見た目も華奢ですし、新しいフィットネス仲間……
「森戸三傅流、オノダ一剣流、武神練成館合気柔術、オガサワラ鉄砲術、七星流も習っておりますので云々……」
武術ガチ勢でした。
期待していたフィットネス勢の皆さんが、みるみるしぼんでいきます。
りっちー君が隣に立って、
「サダマキ先生には師範代をやって頂きますが、若先生のダンジョンの手伝いもして頂きますので……ん?」
りっちー君が外に目を向けました。
ばたん、ばたん、ばたん、と車のドアが閉まる音。
「また誰か来ましたか……ええと。大丈夫です。別にガチで武術を叩き込むような事はしませんので、フィットネスの方で教えて頂きます。当流にも三傅流、一剣流、武神練成館は一部併伝されていますので、武術勢の方々も教えてもらって下さい」
「……」
カオルさんは驚いた顔で、道場の外を歩いて行く人達を見ています。
どう見ても一般の人ではありません。
ごついサングラスの黒服にがっちり囲まれた人影がちらちら見えます。女です。
耳に手を当てて、何か指示している人がいます。
庭中に黒服達が散って行きます。
左脇の下が微かに膨らんでいます。全員、銃を持ちこんで来ています。
これはすごく偉い人なのでは……
「あ、サダマキ先生。気にしないで下さい。ここには要人の方々が結構来られるので」
「要人?」
くす、とりっちー君が笑って、
「このトミヤス家には、マツ様、クレール様、若がおられるのです。私の所にも、軍や警察から指導をと、そこそこの方が来られますし」
「……」
それもそうですね。
このトミヤス家には、とんでもなく偉い方が来ても全然おかしくありませんよ。
がらっ! ぱしーん!
「ああ、あの開け方は、多分白露王国の女王です」
「は!?」
「神聖白露王国のライサ女王です。後でこちらに来るかもしれませんね」
「はっ!?」
りっちー君はにこにこしています。まじっすか? 余裕ありすぎでは?
……と、思いましたが、門弟の皆さんも普通です。
慌てているのはカオルさんだけです。
(慣れている!?)
皆、なんという事もない顔をしています。
流石、トミヤス道場本部は違いますね。
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「こーんにちはーっ!」
「はーい」
ぱたぱた……マツさんが出てきました。
この薄く輝く金色の美しい髪、雪のように白い肌、青空のように青い目。
いつ見ても美しい!
ただし性格はご先祖様譲りな上、ヲタです。
「あら! ライサ様ではありませんか! お久しぶりでございます」
すらー、と襖の開く音。
テルクニ君も出てきました。
すたすた……
「ほんとに来たんかい」
「てい!」
ぺしん!
「いて」
「もう! すみません、テルクニはいつも」
「構いませんともー! ほれテルクニ、刀はどこじゃ」
「持ってくるよ。母さん、お茶でも出してあげて」
「こらー!」
マツさんの手をすいっと避けて、テルクニ君は部屋に戻って行きました。
「ああもう……どうぞ、お上がり下さいませ」
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「ほほおう……これが……見て良いか」
「どーぞどーぞ」
「むむ、拝見致します」
「A班配置完了。Б班……Г班……Д班……良し、各班待機。E班、巡回開始」
ボディーガードの人達がうるさいです。
実はボディーガードっぽい格好の特殊部隊ですが。
「ささ、皆様、冷たいお茶をどうぞ。日輪国はお暑いでしょう」
「どうぞ。熱中症には気を付けて下さいね」
マツさんとクレールさんが、忙しくお茶を配っていきます。
「ふあーあ……」
テルクニ君は欠伸をかましています。
「おおう……やはりキホ物は映りが良いな……やはり写真では分からんのう。何よりも!」
む! とライサ女王が腕を伸ばします。
「おお、この立ち姿よ! 良いなこれは!」
テルクニ君はテーブルにべったりと顔を乗せてしまいました。
「おおいっ! 人が褒めておると言うのに!」
「俺はもう見飽きたよ……」
「天然ガス輸出止めてしまうぞ。電気代が上がるぞ」
「好きなだけ見ていいからさ……それより、パス忘れたとか何よ」
「あ、うん。パスワードマネージャにサムキンのパス入れるの忘れてしもうて。普段はデスクトップでやっておるから、ノートの方に入れておらなんだのよ。ゲームだけインストールして、うっかり忘れておった」
「いやいや、女王様の私物のノートPCで、パスワードマネージャとかありえないでしょ。盗まれたらどうすんのよ」
「サムキン用PCだから、他には何もないのじゃ。パスワードマネージャも、他のパスは何も入っておらぬぞ。すっからかん。動きが軽くて良いのう。ゲームひとつにPCひとつじゃからのう。羨ましいか? んんー?」
「やっべ超羨ましい!」
「新品で買うと金貨11枚超えじゃからのー。タイムセールで10枚で買ったのじゃ。エリャンウェアのPCは高いわ。グラボは重力TXーR5080!」
「エリャンウェア!? マジで!? 5080かよ! うわー、うらやましす」
にやにや。
「んふふふ。型落ちになったら譲ってやっても良いぞ」
がば!
「マジすかッ!」
「データは完全消去するから、OSからインストールし直しになるが、良いか?」
「全然OK! 本当にくれるの!?」
「んふーん。良いとも良いとも。ただし、ちょびっとお願いを聞いてくれたらの」
「何々? 俺で出来る事?」
「出来る出来る。うちのスペシャルズを鍛えてやってほしい」
スペシャルズとは、白露王国の特殊部隊です。
こことはやりたくねー! と、テルクニ君が言っていた部隊ですね。
「ええー……スペシャルズの人ら、怖いからな……どうしよ」
「なんじゃなんじゃ、ツジギリが。そこはいくらでもかかってこいと言ってほしかったの。何なら、ゲーミングマウスもつけてやるぞ。黒馬の12ボタン。私は有線派じゃから……そう言えばテルクニも有線派だったか?」
「うぐっ! それは欲しい……」
まだ折れない。テルクニ君、スペシャルズの人達は相当嫌なようです。
「仕方ないのう。ヘッドセットもつけてやろう。くんくんするなよ」
「へっへっへ。そんな変態的な事はしませんとも」
はい。折れてしまいました。
「でも、多くても1班ごとにしてよ。1度に5人までね。あそこ狭いから、誤射とか出たら大変だよ。魔術が使えない場所だから、とっさの治療が間に合わない場合あるからね」
「そんなもんは気合と根性でなんとかなる! 極北で鍛えたスペシャルズを舐めるでないぞ!」
「何とかはならんな!」
「うん、分かっておる。言ってみたかっただけじゃ。5人までか……訓練コースのようなものはないのか? 模擬弾を使うとか」
「あるよ。でも、模擬弾はそっちで用意してよねっていう感じ。そこまで客の面倒見れないよ」
「それで実弾入れて入って来たらどうするのじゃ」
「ま、それなら覚悟決まってるでしょ? こっちもそれなりの対応でってね。頭かち割るか首折るか。俺、竹刀でも簡単に◯せるから。むしろ竹刀なしでもいけるから」
「ふーん」
「あ、わざわざ来てくれたから、サービスでついでにもう1個、見せたげるよ。PC楽しみにしてるよ」
はあ! とライサ王女が口を開けました。
王女様、あんまりその顔はしない方が良いですよ。
「おお! ついに雲切丸が見られるのか!」
「どうかなー。ふふふー」
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てくてくてく……
ごとん。
「はいこれ」
「んん? これは?」
「うん。俺、真剣でくる相手にはこれ使うんだわ」
「雲切丸ではないのう? ああ、欠けたりしたら大変じゃからの」
「そうそう」
「では拝見」
くい。
この黒い刀身はあれです!
戦車砲が直撃しても傷一つ付かないあれ!
「こっ……これは……」
ぷるぷるぷる……
「はーあ……はーあ……」
どきどきどき……
「ままっ、まっ、魔神剣では、ないの、か……?」
「そうだよ」
「反則じゃあー!」
「ないない。魔術使えない所だよ。雷出ないし。折れたり欠けたりしないだけ」
「あ、そう言えばそうか……」
「雲切丸は絶対に瑕つけたくないもん。使いたくないよ。現代刀でも良いのはいくらでもあるけどさあ、流石に何人も相手するのはきついでしょ」
「たくさん買えば良いではないか」
テルクニ君が遠い目をしました。
「お金……ないんだよね……給料払ったら、すっからかんなんだ……」
「……すまん……訓練代は弾むように、参謀本部に言っておくから……」
「ありがと……」




