第17話
朝食終わりに、テルクニ君はカオルさんと会議をしました。
「この先、色々な国の軍人が来ると思われますが」
「やだよねー」
「まあ、諦めて頂くしか。ただ、ここはまずいという国はございますでしょうか。その辺りは、情報省から少し、何と言うか」
「うわあ、圧力的な? 外務省とか? 参謀本部とか?」
「その辺りは国によりましょう。どこへの圧力だかお願いだかは分かりませんが、多少の調整なりはして頂けますかと」
んー、とテルクニ君が頬杖。
「イシャール軍はちょっとね」
「何故でしょう」
「あそこ、ずーっと戦乱時代だから、やべー人が多いんだ。りっちーみたいのが普通。ちょい違うかな。肉体的に強いってわけじゃないけど、メンタルがね。一般市民も全員ガチ。24時間、いつミサイルが飛んでくるか分かんない所で、赤ん坊の時から毎日生活してんだよ。そりゃメンタルもブっ飛んで鍛えられるって。そこで育った人の軍。カオルさんには想像出来る?」
「……」
「僕らからしたらちょっと異常。でも、向こうはそれが普通。分かるかな、この怖さ。来るってなったら、そんなのが頭数揃えてゾロゾロ来そうで怖いかな。目、ギラギラさせてさ」
ふむふむ、とカオルさんが頷きます。
自分も死がお友達の仕事ですが、これもまたヤバそうです。
万にひとつもないでしょうが、テルクニ君がやられて、魔神剣を持って行かれたりしたら大変です。
「確かに、かの国の軍人が頭数を揃えてとなりますと、近隣住民の不安もあります。その点は伝えておきましょう。ですが、流石に突っぱねる事は出来ません。来るにしても少数で、というくらいに収める事になりますが」
「十分」
「他にはどこかありますか」
「白露。一般の軍人だったら良いけど、スペシャルズはなるべくやめてほしいな」
「実際にまみえた事はありませんが、そこまでですか」
「ヤバいよ、スペシャルズ。イシャール軍とは違う感じで。白露は気候が悪いでしょ。国民全員、産まれた時からもう鍛えられてるんだよね。ここも環境が違うんだ。軍人は世界のどことも、雰囲気違うよ。前に立てば分かるけど、カオルさん、背中うわってなると思うな」
「それほどですか」
「それほどだね。スペシャルズは、僕もちょっと、この人達はやべーなーって感じたもん。日輪国で訓練! なんて、バケーション気分じゃないの。まあ、訓練ならよし、くらいでね。ガチはちょい面倒。逆恨みで狙われるとね」
「なるほど……他には」
ううん。他にどこか……ありました。
「これは絶対に来ないと思うけどさ」
「はい」
「チームタスク」
「タスク……米衆の?」
チームタスクは普通の特殊部隊ではなく、特殊部隊の混成部隊といった感じです。
陸海空+諜報部の中でトップクラスを選別して作られます。凄いです。
「うん。でもまー、これは外交では絶対に押さえらんないから無駄。例えば、魔神剣、うちの国に欲しいね。行って来てってなったら、情報省でも分からないように密入国して来るんじゃない。僕もカオルさんもやられる事はまずないと思うけど、結局はどこの誰かも分からず終い。そうなると、後始末が超面倒でしょ? 軍人ぽいけど、これどこの軍だ? いやー、そうなったら、流石にメディアも押さえらんないっしょー。米衆もだけど、日輪国も大騒ぎになっちゃう」
「あ、なるほど」
「でも、いつでも訓練に来なよ! 大歓迎さ! って姿勢見せとけば、堂々と来るから良いよ。向こうも、今日は宜しく! なんてニコニコして来るよ。その辺、あの国の良い所かな。ただ、灰蘭(米衆連合国諜報部)がうろつき出したらちょっと気を付けて。僕も気を付けておくけどさ。変に渋い顔すると、逆効果かもしんないから。もし見つけたら、こそこそしないで来ても良いよお! 大歓迎だから! ってね」
「それらの者はお任せ下さい。他には」
「……魔の国。特殊作戦隊」
カオルさんが目を逸らせます。
「……それはそうでしょうが……断れません」
テルクニ君、ノックダウン。テーブルにぺったりです。
「だよねー! お爺ちゃん(魔王様)送ってきそう! きっついなあー!」
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とんとん、と書類をまとめ、カオルさんは涼しい顔で始めました。
「実は、情報省からは既に訓練希望が」
「はや!」
「一般の挑戦者として潜り込みますので、あまり気になさらず。テルクニ様でしたら、それと察せられると思いますが、ぶちのめして下さって結構です」
カオルさん、ぶちのめしてとは……同僚なんですが。
「あそう? ぶちのめしてちゃって良いの?」
「はい。まあ、真剣ではなく、竹刀勝負にして下さいますと。一般人に紛れて来ますので、訓練コースではなく、体験コースで来ると思います」
「あはは。そりゃそうだよね。一般人が訓練とかね」
「内容によっては、スポンサーもと連絡が」
カオルさんの攻めが始まりました!
「むむっ……」
省庁のスポンサー! これは大きい!
情報省もトミヤス流を採用して、ニンジャを生み出しているのですから。
ただ、半分以上は決定していますが、テルクニ君の様子も見られています。
ちょっとあいつで大丈夫? という不安の声もあります。最後は内容次第です。
「情報省のスポンサーとなりますと、冒険者ギルド同様、希望すれば人員の出向も可能です」
「むうっ!」
「勿論、質は冒険者ギルドのそれとは違います。表の案内人として立たせ、不審者の排除なども行えますし」
「うぬう!」
「一般人に扮した軍人なども、許可なく参られたら、何故身分を隠して? と、入る前に追い返せますので」
「ぬう……なんと魅力的な」
「さすがに、冒険者ギルド程の人数は出せませんが、将来拡張した際、実地訓練として守り役に置く事も可能です」
1人しかいないテルクニ君には、夢のようなお話ですね。
「……ぽい人が来たら、真面目にやるかな」
「ありがとうございます。それと、テルクニ様は雰囲気で分かりましょうから、必要ないかもしれませんが、基本的な忍の見分け方を」
「うん」
「握手をしてきた時、綺麗な半身で手を出してきたら、忍と判断して結構です」
「あー。特殊部隊系の人もそれ多いよね」
「はい。それと、米衆連合の場合、方言ばりばりの者は灰蘭が多いです。普通に喋れますのに、わざと方言でカタコトにと教育されます。まあ、多くは訓練目的で来ましょうから、何となくズレている雰囲気がなければ平気です。わざわざ灰蘭からありがとう、と握手を返して下さい」
「……やらしいね」
「灰蘭はどうも自分の国の諜報潜入が一番、という自負が強いので……鼻っ柱を折ってやるのも、良い訓練です」
む、とテルクニ君があの人を思い出しました。
冒険者ギルドオリネオ支部社長のオオタケさんです(※9話)。
「あのさ、カオルさん」
「はい」
「オオタケさん、灰蘭の人じゃないよ」
「はい。冒険者ギルドの人員は、全て身元を確かに洗っております」
「早いね……」




