第16話
ここはとある田舎のコンビニ近くの路地。
皆さん、知ってますか?
ああいう事務所って、近くに一軒家が多いコンビニの周りに結構あるんです。
そういう所の空き家に入って、転々としてるパターンですね。
特に、路地に入った所の空き家がベターです。カチコミしづらいですから。
雑居ビルとかは、今は減りました。
結構大きな組でも、こんな事をやってたりします。
Wik◯の情報で「ふーん。ここに事務所がねえ」
今もそこに居るかは分からないですよ。
あなたの家のすぐそばの空き家に居たりして!
路地に入ったら、空き家に見えるボロい一軒家。
でも、ボロい家なのに、やたらとカメラ付いてるな……
あれ? でもSEC◯Mとか防犯会社のシールないなあ……
その家、危険かもしれません! 近付かないでおきましょう!
そして、海外マフィアの場合……
「あのアパートです」
「ははーん。住民は丸々構成員ってパターン?」
「はい」
「一般の人は居ないんだね」
「はい」
と、こういうパターンが多いです。
建物の割に、防犯設備だけは過剰な程にしっかりしている。
外国人がやたらと多い。
通路にタバコの吸い殻がいっぱい。
見た事ないカップ麺のカップが落ちている。
何故か掃除がされていないんですね。
そんなアパートは、ちょっと気を付けましょう。
「さすが情報省、こんなド田舎のマフィアまでしっかり掴んでるなんて、いい仕事するね」
「畏れ入ります」
「木造じゃん。ま、終わったら燃やしちゃうかな……あ、なんか情報探しとかする? 構成員の名簿とか、密輸……はこの辺じゃ聞かないけど、なんかそういうルートの情報とかみたいの、少しはあるかもしれないし」
「まあその……したいです」
「じゃ、これ」
テルクニ君がポケットから出したのは、100均で売っている赤外線ポインター。
見た目だけはですが。
「これ、赤外線、強くしてあるからさ。カメラの死角から10秒当てて」
「テ、テルクニ様……慣れておられますね」
「これも傭兵の知恵ってやつ」
「私共の世界でも使う手です」
「そうなんだ? 知らなかったよ。じゃ、カオルさん、裏頼むね。近付く時にカメラに映らないように。一応、燃やす前に中のPCとかは全部壊すか運ぶかするけど、離れた所にカメラの映像保存してるかもしれないから」
「はい」
「探す時間は、始末してから30分だけね。建物は跡形なく燃やすけど、周りに足跡とか残さないでよ」
「テルクニ様、その辺りは心得ております」
「はは! だよね! じゃ、行こうか。終わったら呼ぶよ」
「少々お待ちを。私が先にジャマーを置いてきます。周りを見ていて下さい」
「よろしくー」
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ぴー……
と、音はしませんが、赤外線をカメラにしっかり当てます。
かなり強くないと、これで防犯カメラは潰せませんよ。
(よし、と。こんなもんか)
ばたん。
あ、誰か出て来ました。
見た目は普通の人ですね。
首を右に、左にとかしげながら、カメラを見ています。
どうやら、あれが監視役のようです。
「あの、どうかしました?」
「あん?」
「あ、すんません。なんかその、カメラ見てるから」
「うるせえな。行けよ」
「あなた、ここの人ですか? 泥棒とかじゃないですよね? 警察呼びますよ」
「ああもう! ここの人! ほら、これ! そこの鍵!」
「ドア開けてみてもらえます? じゃないと」
「分かったよ! うるせえガキだな!」
つかつか……
「ったく」
鍵を差し込んだ瞬間。
ごす!
「く」
「……」
テルクニ君が倒れそうになった構成員の方を、そっと抱きます。
ゆっくりと下ろして、音が出ないように。
おやおや、首の後ろに刺さっているそれは、棒手裏剣ですね。意外とアナログ。
(よし、と。他が出て来ねえうちに)
鍵が刺さったままのドアがあります。
死体の手を握らせて、ドアノブを回します。
こういう時、手袋をしたり拭いたりはNGです。
指紋は出なくても、手袋の跡は残ります。
拭いたら指紋がない。あ、誰かが拭いたね、とバレます。
布で適当に拭くくらいだと、指紋は消えませんよ。超丁寧に拭きましょう。
でも、テルクニ君、そこまで気を使わなくても良いんですよ。
今回は後で燃やしてしまうんですから。これは癖ですね。
がちゃり。
「すいまっせーん……」
しーん。
「誰かー、居、ま、す、かー?」
しーん。
すす、と死体を中に入れて、チェーンを掛けたら、しっかり鍵を閉めましょう。
さて皆さん、ここでテルクニ君の靴に注目。
これは靴底が柔らかくて、平たくなった特性の靴です。平たいからって、滑ったりはしないんです。しかも足跡が付かない特別製。軍の隠密系の部隊がよく使うものです。
なんと、泥の上を歩いても、痕跡がほとんど残らないという優れモノなんです。
底が柔らかいので、固い所を歩いても足音はしません。
音響反応式の地雷にも引っ掛かりませんよ。
おっと、そんな事を言っている間に、テルクニ君がPCの前に。
ここでネトゲをインストール! とかいうネタはいりませんよ。
「しょっぺえPC使いやがって……これ何年落ちなんだよ」
かちかちかち……
「くそ、遅えな。もいいか」
さっさと電源を落として、窓の外に出してしまいましょう。
大体、こういう所のPCはノートばかりです。
何かあった時、持ったまま逃げられるようにですね。
すー。押し入れの中に金庫は……指紋認証。
(めんどくせーなー)
これはカオルさんに任せましょう。
そーっと窓を開けて、来い来い、と手招きすると、カオルさんが闇の中から出て来ました。
「よく、ここに居ると」
「そういうの、僕は見慣れてるから。じゃ、まずひとつ……これはカメラの映像しかないと思うけど」
「は」
カオルさんが暗がりに戻って、現代美術的というか、ジョ◯ョ立ち的なポージング。
人間って、頭と左右の肩の三角形の形が分かってしまうと、暗くて見えなくても、人が居る、と判断出来てしまうんです。影の中でこういうポーズしていると、つっ立っていても、目の前を歩かれても意外と気付かれないという高等テクですね。流石はカオルさんです。
でも、そのポーズは明るい所ではしないようにしましょう。
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きゅ、と最後の構成員の首をワイヤーで締めて終了。
こき、こき、と首を鳴らして、窓からぴょん!
「カオルさん」
「は」
影から、ぬるりとカオルさんが出て来ます。
「最初の部屋に金庫。2階の右から3番目にも金庫。30分ね」
「は!」
カオルさんが、しぱ! と最初の部屋に飛び込みました。
開いた押し入れに、指紋認証の金庫。
転がっている死体を見て、手を見ます。
まさか、指をざっくり!?
……なんて事はしません。
指紋認証の指をつける所に、ぽんぽん、と粉をつけて、ふ! と吹いてから、粘土っぽい物をつけて。
ぺりっと剥がせば、しっかり指紋が取れました。
ぴ。
あらら。押し付けたら、簡単に金庫が開いてしまいました。
指紋認証だからって、安心してはいけません。
使った後にちゃんと拭く人は少ないですからね。
一番面倒なのがアナログの金庫というのを覚えておきましょう。
手提げ金庫は問題外です。
中に爆弾や水酸化ナトリウムを詰めておくと少しだけ安心。
開けたら証拠が消えるように、十分な量を仕掛けておきましょうね。
トラップを解除されたら? だから問題外なんです。
さて、中身は数枚のDVDと外付けHDD。
カオルさんもにっこり。
良い情報があるといいですね。
さあ次の部屋に行きましょう……
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そして30分後。
ぼん! と木造アパートが燃え上がりました。
火勢はものすごいのに、全然火花が飛びません。さすがはテルクニ君の魔術です。
さあ、近所の人が来る前に離れましょう。
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次の日、2件の火事が、とニュースに出ました。
幸いな事に、周囲に被害はなかったそうですが、どちらも全焼です。
被害者数は不明と出ました。
この先もずっと不明のままです。
身元不明の外国人が死んでも、この国では何故か報道されないのです。
海外マフィアの派手な銃撃戦で何十人と死んでも、ニュースには出ないのです。
さすがに路上でやったりすると出ますが。
ただ、日輪国人に被害が出ると、そこだけニュースに出ます。
身元不明の外国人死者の事は触られもしません。不思議ですね。
不思議ではありませんか? あ、そうですか。
北コーリャンの不審船が何隻か漂着した時も、船から大量に死体が見つかりましたが『不審船漂着』だけでした。
地元では戒厳令のように夜間外出禁止令が出たのですが、それも警察や消防からではなく、地元住民が慌てて回覧板を回しただけです。
インタビューも、
「あんなに死体が見つかって、夜は怖くて歩けませんね」
カットされて、
「夜は怖くて歩けませんね」
と、なります。
こういう闇って、探すと意外とすぐ近くにあるんですね。
「まあ! すぐ近くではありませんか」
「んん?」
「テルクニ、火事ですって」
「ありゃあ」
「出火原因は不明。何だったんでしょうね。うちも火の元には気を付けませんと」
「いや、母さんがいれば、隕石が落ちてきても平気な気がするけど」
「勿論ですとも」
「ミサイルが飛んで来ても怖くないね」
「当たり前ではありませんか」
「母さん、火事が怖いの」
「私が怖いのは、お父様とゴキカブリだけです」
くす、とカオルさんが笑いました。




