↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/42

第16話


 ここはとある田舎のコンビニ近くの路地。


 皆さん、知ってますか?

 ああいう事務所って、近くに一軒家が多いコンビニの周りに結構あるんです。

 そういう所の空き家に入って、転々としてるパターンですね。

 特に、路地に入った所の空き家がベターです。カチコミしづらいですから。

 雑居ビルとかは、今は減りました。


 結構大きな組でも、こんな事をやってたりします。

 Wik◯の情報で「ふーん。ここに事務所がねえ」

 今もそこに居るかは分からないですよ。

 あなたの家のすぐそばの空き家に居たりして!


 路地に入ったら、空き家に見えるボロい一軒家。

 でも、ボロい家なのに、やたらとカメラ付いてるな……

 あれ? でもSEC◯Mとか防犯会社のシールないなあ……

 その家、危険かもしれません! 近付かないでおきましょう!


 そして、海外マフィアの場合……


「あのアパートです」


「ははーん。住民は丸々構成員ってパターン?」


「はい」


「一般の人は居ないんだね」


「はい」


 と、こういうパターンが多いです。

 建物の割に、防犯設備だけは過剰な程にしっかりしている。

 外国人がやたらと多い。

 通路にタバコの吸い殻がいっぱい。

 見た事ないカップ麺のカップが落ちている。

 何故か掃除がされていないんですね。

 そんなアパートは、ちょっと気を付けましょう。


「さすが情報省、こんなド田舎のマフィアまでしっかり掴んでるなんて、いい仕事するね」


「畏れ入ります」


「木造じゃん。ま、終わったら燃やしちゃうかな……あ、なんか情報探しとかする? 構成員の名簿とか、密輸……はこの辺じゃ聞かないけど、なんかそういうルートの情報とかみたいの、少しはあるかもしれないし」


「まあその……したいです」


「じゃ、これ」


 テルクニ君がポケットから出したのは、100均で売っている赤外線ポインター。

 見た目だけはですが。


「これ、赤外線、強くしてあるからさ。カメラの死角から10秒当てて」


「テ、テルクニ様……慣れておられますね」


「これも傭兵の知恵ってやつ」


「私共の世界でも使う手です」


「そうなんだ? 知らなかったよ。じゃ、カオルさん、裏頼むね。近付く時にカメラに映らないように。一応、燃やす前に中のPCとかは全部壊すか運ぶかするけど、離れた所にカメラの映像保存してるかもしれないから」


「はい」


「探す時間は、始末してから30分だけね。建物は跡形なく燃やすけど、周りに足跡とか残さないでよ」


「テルクニ様、その辺りは心得ております」


「はは! だよね! じゃ、行こうか。終わったら呼ぶよ」


「少々お待ちを。私が先にジャマーを置いてきます。周りを見ていて下さい」


「よろしくー」



----------



 ぴー……

 と、音はしませんが、赤外線をカメラにしっかり当てます。

 かなり強くないと、これで防犯カメラは潰せませんよ。


(よし、と。こんなもんか)


 ばたん。

 あ、誰か出て来ました。

 見た目は普通の人ですね。

 首を右に、左にとかしげながら、カメラを見ています。

 どうやら、あれが監視役のようです。


「あの、どうかしました?」


「あん?」


「あ、すんません。なんかその、カメラ見てるから」


「うるせえな。行けよ」


「あなた、ここの人ですか? 泥棒とかじゃないですよね? 警察呼びますよ」


「ああもう! ここの人! ほら、これ! そこの鍵!」


「ドア開けてみてもらえます? じゃないと」


「分かったよ! うるせえガキだな!」


 つかつか……


「ったく」


 鍵を差し込んだ瞬間。

 ごす!


「く」


「……」


 テルクニ君が倒れそうになった構成員の方を、そっと抱きます。

 ゆっくりと下ろして、音が出ないように。

 おやおや、首の後ろに刺さっているそれは、棒手裏剣ですね。意外とアナログ。


(よし、と。他が出て来ねえうちに)


 鍵が刺さったままのドアがあります。

 死体の手を握らせて、ドアノブを回します。


 こういう時、手袋をしたり拭いたりはNGです。

 指紋は出なくても、手袋の跡は残ります。

 拭いたら指紋がない。あ、誰かが拭いたね、とバレます。

 布で適当に拭くくらいだと、指紋は消えませんよ。超丁寧に拭きましょう。


 でも、テルクニ君、そこまで気を使わなくても良いんですよ。

 今回は後で燃やしてしまうんですから。これは癖ですね。


 がちゃり。


「すいまっせーん……」


 しーん。


「誰かー、居、ま、す、かー?」


 しーん。

 すす、と死体を中に入れて、チェーンを掛けたら、しっかり鍵を閉めましょう。


 さて皆さん、ここでテルクニ君の靴に注目。

 これは靴底が柔らかくて、平たくなった特性の靴です。平たいからって、滑ったりはしないんです。しかも足跡が付かない特別製。軍の隠密系の部隊がよく使うものです。

 なんと、泥の上を歩いても、痕跡がほとんど残らないという優れモノなんです。

 底が柔らかいので、固い所を歩いても足音はしません。

 音響反応式の地雷にも引っ掛かりませんよ。


 おっと、そんな事を言っている間に、テルクニ君がPCの前に。

 ここでネトゲをインストール! とかいうネタはいりませんよ。


「しょっぺえPC使いやがって……これ何年落ちなんだよ」


 かちかちかち……


「くそ、遅えな。もいいか」


 さっさと電源を落として、窓の外に出してしまいましょう。

 大体、こういう所のPCはノートばかりです。

 何かあった時、持ったまま逃げられるようにですね。


 すー。押し入れの中に金庫は……指紋認証。


(めんどくせーなー)


 これはカオルさんに任せましょう。


 そーっと窓を開けて、来い来い、と手招きすると、カオルさんが闇の中から出て来ました。


「よく、ここに居ると」


「そういうの、僕は見慣れてるから。じゃ、まずひとつ……これはカメラの映像しかないと思うけど」


「は」


 カオルさんが暗がりに戻って、現代美術的というか、ジョ◯ョ立ち的なポージング。


 人間って、頭と左右の肩の三角形の形が分かってしまうと、暗くて見えなくても、人が居る、と判断出来てしまうんです。影の中でこういうポーズしていると、つっ立っていても、目の前を歩かれても意外と気付かれないという高等テクですね。流石はカオルさんです。

 でも、そのポーズは明るい所ではしないようにしましょう。



----------



 きゅ、と最後の構成員の首をワイヤーで締めて終了。


 こき、こき、と首を鳴らして、窓からぴょん!


「カオルさん」


「は」


 影から、ぬるりとカオルさんが出て来ます。


「最初の部屋に金庫。2階の右から3番目にも金庫。30分ね」


「は!」


 カオルさんが、しぱ! と最初の部屋に飛び込みました。

 開いた押し入れに、指紋認証の金庫。


 転がっている死体を見て、手を見ます。

 まさか、指をざっくり!?


 ……なんて事はしません。


 指紋認証の指をつける所に、ぽんぽん、と粉をつけて、ふ! と吹いてから、粘土っぽい物をつけて。

 ぺりっと剥がせば、しっかり指紋が取れました。


 ぴ。


 あらら。押し付けたら、簡単に金庫が開いてしまいました。

 指紋認証だからって、安心してはいけません。

 使った後にちゃんと拭く人は少ないですからね。

 一番面倒なのがアナログの金庫というのを覚えておきましょう。


 手提げ金庫は問題外です。

 中に爆弾や水酸化ナトリウムを詰めておくと少しだけ安心。

 開けたら証拠が消えるように、十分な量を仕掛けておきましょうね。

 トラップを解除されたら? だから問題外なんです。


 さて、中身は数枚のDVDと外付けHDD。

 カオルさんもにっこり。

 良い情報があるといいですね。

 さあ次の部屋に行きましょう……



----------



 そして30分後。

 ぼん! と木造アパートが燃え上がりました。

 火勢はものすごいのに、全然火花が飛びません。さすがはテルクニ君の魔術です。

 さあ、近所の人が来る前に離れましょう。



----------



 次の日、2件の火事が、とニュースに出ました。

 幸いな事に、周囲に被害はなかったそうですが、どちらも全焼です。


 被害者数は不明と出ました。

 この先もずっと不明のままです。

 身元不明の外国人が死んでも、この国では何故か報道されないのです。

 海外マフィアの派手な銃撃戦で何十人と死んでも、ニュースには出ないのです。

 さすがに路上でやったりすると出ますが。


 ただ、日輪国人に被害が出ると、そこだけニュースに出ます。

 身元不明の外国人死者の事は触られもしません。不思議ですね。

 不思議ではありませんか? あ、そうですか。


 北コーリャンの不審船が何隻か漂着した時も、船から大量に死体が見つかりましたが『不審船漂着』だけでした。

 地元では戒厳令のように夜間外出禁止令が出たのですが、それも警察や消防からではなく、地元住民が慌てて回覧板を回しただけです。


 インタビューも、


「あんなに死体が見つかって、夜は怖くて歩けませんね」


 カットされて、


「夜は怖くて歩けませんね」


 と、なります。

 こういう闇って、探すと意外とすぐ近くにあるんですね。


「まあ! すぐ近くではありませんか」


「んん?」


「テルクニ、火事ですって」


「ありゃあ」


「出火原因は不明。何だったんでしょうね。うちも火の元には気を付けませんと」


「いや、母さんがいれば、隕石が落ちてきても平気な気がするけど」


「勿論ですとも」


「ミサイルが飛んで来ても怖くないね」


「当たり前ではありませんか」


「母さん、火事が怖いの」


「私が怖いのは、お父様とゴキカブリだけです」


 くす、とカオルさんが笑いました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。