第14話
そしてその夜――
無事にスポンサーの話も終わって、昼から今までのんびりとネトゲをしていたテルクニ君ですが……
ぴん。
個チャです。
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テキヤのジョー:動画見た
Mr.TK :何の動画?
テキヤのジョー:TK道場の動画
Mr.TK :うちの道場? 誰の?
テキヤのジョー:ももちゃん
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(まじかよ!?)
レスも忘れて、さっとAlt+TAB。
攻略サイトの隣に新しいタブを開き、動画サイト……
(げっ!?)
『#1 これが本物の実戦武術! トミヤス流!』
恥ずかしいサムネ!
でも公開1時間前で、視聴数1万!?
(りっちー!?)
『……そういうものは武術ではなく、趣味止まりだと思うのです』
『なるほど。確かに理屈では、という方も多いでしょうが、リチャード先生は実際に戦場におられました。そういう方のお言葉となると、私個人はもっともなご意見だと思います。視聴者の皆様はどうでしょうか』
『いや、失礼しました。趣味は言い過ぎですが、伝統舞踊と変わりないかと』
『武術ではなく、踊りですか』
(やめろって!?)
テルクニ君、顔が青いです。
コメント欄は……
192:名無しの剣豪さん:キツい事言ってるけど、個人的にはまあ正しいような。でも下手すると武術世界から総スカンされますよ。
193:名無しの剣豪さん:→192:総スカン! 懐かしい言葉ですね
194:名無しの剣豪さん:こいつら日輪国の武術家にケンカ売ってんのか
195:名無しの剣豪さん:こいつらも日輪国の武術家だろ
196:名無しの剣豪さん:トミヤス流って怖いんですね。ガチすぎて正直引きました
197:名無しの剣豪さん:文句あるなら斬りに来いって、それでダンジョン?
198:名無しの剣豪さん:なるー! こえーな。でも相手にされるんか
199:名無しの剣豪さん:確かに。そもそもシカトきめるかもね
200:名無しの剣豪さん:あっちはああ思う、で済むのかな
201:名無しの剣豪さん:で、済めば良いと願う。南無
(もう荒れそうじゃねえか!)
クリックして停止。Alt+TAB。
ゲームに戻りましょう。
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テキヤのジョー:動画見た?
テキヤのジョー:落ちたのか?
テキヤのジョー:おーい
テキヤのジョー:知らんかったのか
テキヤのジョー:TKの所の指導員、キツい事言うな
テキヤのジョー:まあ認めたくない現実だからよしよし。偉い人は分かってる
テキヤのジョー:戻ったら連絡くれ
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「ああっ!」
待った! テルクニ君、キーボードクラッシャーしないで下さいね。
「……くっ!」
テルクニ君、どこへ行くんですか?
ぱしーん!
そんな乱暴に襖を開けてはいけません。
「カオルさん!」
カオルさんも癖でAlt+TABです。
今はゲームではなく、次の動画の編集中なんですから、画面は変えなくても良いのですが、癖ですから仕方ないですね。
「テルクニ様」
「何あの動画!」
「あ! ご覧下さいましたか! 渾身の編集が」
「じゃなくて! もろケンカ売ってるじゃん!」
「良いではありませんか。それで相手が増えるのであれば。リチャード様は何か間違えた事を仰っておられましたか?」
「い、いや……言ってないけど」
確かに、トミヤス流的には、りっちー君的には、という意見だけです。
「ふっ。あれで挑発されるような輩は、その程度という事です。ああ、トミヤス流ではそうなんですか。うちはこうなんです、私はこうです、と、他のあり方を認められない、狭量な者では?」
ド正論きました。
「文句を言うような者は、武術にいちばん大事な、心法が出来ておりません。それで武道! 道とはよく言ったりです」
「そっ……そうかもしれないけど」
「全て返り討ちにして、トミヤス流とテルクニ様の名を広げましょう。話題にもなれば、来るのは狭量な輩のみではないでしょう。まともな方も配信されておりますし、是非コラボなどと足を運んでいただけるやもしれません」
「コラボ!?」
なんといきなりコラボ宣言です。カオルさんは力が入ってますね!
「フギ先生には、先程、打診を」
「は!? フギ!? フギって、ヨシタカ=フギ!? 三傅流!?」
「はい。私、三傅流道場にも足を運んでおりましたので、個人的にも知っておりますし。テルクニ様はご存知でしょう」
「当たり前でしょ!? 知ってるよ! 動画上げてるでしょ! 教えてフギ先生チャンネルでしょ! 見てるよ! うちにも三傅流は併伝してんだから!」
「あ、でしたら話は早いです。良いお返事が頂けましたら」
「やめて!?」
「申し訳ございません。もうメールは送ってしまいました」
「げえっ!?」
「フギ先生はお忙しいですし、次はどこに致しましょう。動画は配信しておりませんが、やはり剣術となればヤナギ車道流」
「やめてちょうだい!?」
「現時流など……もうアドレスのある所には全て送ってしまいましょうか。スケジュールは」
「やめてっ! ねっ!? ねっ!? お願い! 僕の身が持たないよ!」
カオルさんのインフルエンサー力が爆発してしまいました!
これからどうなる! トミヤス流!
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すぱーん!
今度はりっちー君の部屋の襖が開きます。
「若」
「若じゃあねえーッ! りっちー!」
「は?」
「はあ? じゃねえよ……てめえ、あの動画なんだってんだあ? ああ?」
テルクニ君、カオルさんの時とは随分と態度が違いますね。
下には強くいきましょう。
「おめえ、他派に喧嘩売ってんのか!?」
「若」
りっちー君、今日はビビりません。
「動画は私も見てみました。お言葉ですが、あれくらいで良いかと」
「あんだとテメー!」
「若。今の時代、武術家は名前と看板で勝負致しませんと」
「ああ!?」
「良くも悪くも、若の名と、トミヤス流の看板は多いに知られます。暴力的で多いに結構! 我らは武術家! 殺しの技を学んでおります武術家! 道を求める武道家ではございませぬ!」
「うっ!」
「トミヤス流は武道にあらず! 武術! ただ術のみ! お忘れですか!」
「ううっ!」
これは痛い所を突かれました。
「お父上のマサヒデ様も、それを承知で他派との交流に励み、今のトミヤス流の道を拓かれたのです。当流に数多ある術も、開祖カゲミツ公のみでなく、マサヒデ様のご苦労もあってこそ。その道も、我が後を追うことなく、各々自由に拓けとのお言葉を残されております」
「ぐう……」
テルクニ君、膝をつくほどにショッキングでしたか?
むしろ、格下のりっちー君にやられてしまった感でしょうか。
自分もその辺りは十分に承知していますもんね。既に何人も◯してますし。
「その……通りだ……」
「若。これは他派との交流のチャンスとなるかもしれませぬ。この国には数多の流派がございます。例え当流の言い分に文句があって来られたとしても、それらの技術を盗む良い機会となりえます」
「むう」
「では、サダマキ殿との配信は続けます。宜しいでしょうか」
「くっ……か、構わん。構わんが、奥伝とかは出すなよ」
「承知しております。どうせ、私がまともに使える技術など、たかの知れたものです」
「それもそうだな」
ずきゅーん! こんどはりっちー君にショック!
自分で言っていても、他人に「うん、そうだね」なんて言われるとキツい!
「わ、若。その、自分で言っておいてなんですが、もう少し、お言葉を」
「す、すまん。俺も慌ててたんだよ」
「……」「……」
気不味い沈黙が流れました。
「じゃ、俺さ、部屋に戻るからさ」
「は……」
テルクニ君、貴方も剣術で看板張ってるんです。
そろそろ腹を括って下さいね。




