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4話

 暗闇の中に光が差すと自分が寝ていたと自覚してもう朝になったのだと気が付き起きようとしたのだが、どういうわけか体は重い上に頭もぼんやりとして働かない。そこで昨日のことを順番に思い出す。すると昨日というより今日だが魔導アーマーとの戦いを思い出した。

 魔導アーマーの腕を切り落とした後、俺は気を失ったはずなのに今はふかふかのベッドにお花畑にいるようないい香りに包まれている。何処だここはと体を起こして周りを見ると部屋の中は天蓋のついたベッドとサイドテーブルだけでクローゼットのような収納は無い。その上色鮮やかな壁に床一面の絨毯、こんな贅沢な部屋の使い方をしている所を見るとどうやら貴族の家に居るらしい。

 なぜこんな所に居るのか巨大魔導アーマーはどうなったのか聞くために部屋を出る。

 ゆっくりとドア開けると執務室があり女性がいた。机の上の沢山の書類に囲まれている、銀色の髪は後ろで纏められていて歳は俺より年上くらいで気の強そうなハッキリとした目の女性と目が合った。


 「あっ、おはようございます」


 唐突にすごい美人との出会いに咄嗟に出た間抜けな言葉だった。


 「ふふっ、おはよう。でももうお昼ですよ。もう起きて大丈夫?」

 「はい、もう大丈夫です。えーっと」

 「そうね、いくつか話したい事もあるからそちらのソファへどうぞ」


 そう言われ仕事机の前にあるソファに座り女性もテーブルをはさんで正面に座ると、メイドがお茶を出してくれたのでお礼を言ってから正面の女性に目を向ける。

 この女性の堂々として丁寧で優雅な動作が気品がある人だと分かる。それと豊満な胸の谷間には赤いペンダントが日の光に反射して輝き、着ているドレスは白を基調として金糸の刺繍がふんだんに縫い付けられている。


 「では私から、私の名前はステラ アマノガワ、アマノガワ領の領主をやっているわ」


 まさかの目の前の女性は領主と分かり驚き姿勢を正す。


 「俺はソウマです。今は冒険者です。助けていただきありがとうございます」

 「いえ、違うわ助けてもらったのはこちらの方。君なんでしょ、マシンウェポンの腕を切ったのは?」

 「はい、そうですけど……マシンウェポン? あれは魔導アーマーではないのですか?」

 「その質問に答える前に君の事少し調べたのだけれど、昨日エクセルシティに着いて冒険者ギルドで登録、そして今日の未明にマシンウェポンと戦闘でいいかしら?」

 「そうです」


 エクセルシティに着いて昨日今日で戦闘に巻き込まれているのだから、何か疑われているのはしょうがないので様子を見ながら答える。


 「セツナさん、大剣を持って来てください」


 そう言われるとお茶を出してくれたメイドが部屋を出てすぐ大剣を持って来た。


 「この大剣はあなたの物でいいのかしら?」

 「はい」

 「これも調べたのだけれど全然わからなかったわ。常に光り輝きひとつの金属の塊で出来た不思議な剣、これはいったいどこで?」

 「わかりません、それはどこからかマスターが拾ってきた物なんです」

 「マスター? その人との関係は?」

 「剣や魔法の師匠で育ての親でもあります」

 「なるほど、ちなみにその師匠の名前を聞いてもいいかしら?」

 「剣聖タツヒトです」

 「剣聖タツヒトですって!」


 マスターの名前を出した途端テーブルに手をつきに身を乗り出した。


 「あなたの師匠って剣聖タツヒトなのね? 今、彼はどこに?」

 「マスターはもう亡くなりました」


 ステラ様はマスターの死亡を聞くと落ち着いて座りなおす。


 「そんな……残念ね。もう一度会ってお話をしたかった」

 「マスターとは知り合いだったのですか?」

 「ええ、聞いてないかしら。昔はエクセルシティの騎士団に所属していたこともあってよくここに来ていたのよ。私が最後に会ったのは何時だったかしら。先代のアマノガワ公が亡くなって暫く私を支えていただいて、やるべき事が出来たと行ってしまわれたのよね」


 ステラ様はお世話になったマスターの思いを馳せてから。


 「さて、あなたがマスターの弟子だというのなら話してもいいわね。我々の敵GR、この言葉聞いた事あるわよね」

 「?!」


 驚いた、この人も知っていたようだ。マスターと知り合いなのだからおかしな事はないのかもしれない。


 「その表情知っているのね」


 顔に出てしまったようだ。そもそも騎士団ではなく領主が直接話をしているのは、俺と重要な話をするつもりでここへ連れてきたのだと考え正直に答える。


 「はい、俺は剣聖タツヒトの遺志を継ぎ、GR計画阻止のためにエクセルシティへ来ました。しかし、マスターから聞いたのは秘密結社GR血盟とその目的の世界征服というだけで、情報を集めようとここへ来たら今朝のマシンウェポン?と戦うことになりました」

 「そういえばさっきの質問に答えてなかったわね。GR血盟の持つ特別な魔導アーマーをマシンウェポンと呼ぶの。君は直接戦ったからわかると思うけどその力は強力で騎士団の魔導アーマーでは歯が立たなかったわ」

 「まさか、それほどの強さが」


 エクセルシティは世界一の魔科学を有していると聞く、魔科学の産物である魔導アーマーの性能も他の都市の物とは一線を画すはずなのに歯が立たなかったなんて思いもしなかった。


 「ではあのマシンウェポンはいったいどうなったのですか?」

 「消えたわ。突然一人男性がマシンウェポンの肩に乗ったと思ったら切られた腕と一緒にね」

 「消えた? いったいどんな魔法を……あっ、そういえばマシンウェポンと戦っている時、どういうわけが魔法が発動しなかった、というより威力が極端に落ちていたんです。あれはいったいなんだったんでしょうか?」

 「それもこちらで確認しているわ。そのせいで騎士団本部との連絡は取れず、騎士たちの連携が取れず、電気も止まり、都市機能は停止したわ。どんな魔法を使ったのかまったくわからないのが現状よ」

 

 魔法が使えなくなる魔法、矛盾した魔法の存在により騎士団は相当混乱したのだろう。

 俺がエクセルシティに来たのは間違いではなかったようだ。ここに居て戦う準備を整えなければならないと思っていると。


 「ソウマ君、今私は奴らと戦える力を求めているわ。そこで君の力を見込んで頼みたいのだけど騎士団に入らないかしら?」

 「俺の力ですか?」


 俺は自分の手を見る。実際に戦うまでどこか楽観視していた所があったのだと思う。だからマスターは山を下りて世界を知れと言いたかったのかもしれない。でもエクセルシティに着いてすぐにマシンウェポンと戦うとは予想できなかっただろうけど。


 「そう、こちらの魔導アーマーでは太刀打ちできなかった。でも君は違う、戦う力を持っているの。いつ動き出すかわからない相手だから騎士団で準備をするべきだと思うの。私から情報や必要な物も提供するわ。どうかしら?」


 敵が動き出すまでギルドで働いて待っているよりも、マスターが昔騎士だったというのなら同じ道を進むのも悪くないと思った俺は「よろしくお願いします、ステラ様」と言って頭を下げる。

 

 「普段は様なんて付けなくていいわよ、もっと気楽に話しかけてくれて構わないわ。私たちは共通の敵を持った協力者なんだから」

 「はい、ではこれからよろしくお願いします。ステラさん」

 「よろしくね。ソウマ君。あっ、そうそうここで私たちがあった事は秘密にしてね、敵がどこに居るかわからないから」


 俺とステラさんの話が終わり、帰り際にメイドのセツナさんから大剣を受け取る。


 「ではステラさん、彼のお見送りお願いね。またね、ソウマ君」

 「失礼しました」と言ってから部屋を出る。ドアを閉める時に見えた優し気な笑顔が素敵だった。


 俺はセツナさんに案内され誰ともすれ違わずに館の裏から外へ出る。山を下りてご飯を買ってから家に帰ろうと思ったが、その前に大通りを歩いて戦いの痕跡を確かめる。

 剥がれた石畳、割れた窓、亀裂の入った石壁、折れ曲がった街灯、道の端には壊れた魔導アーマー、そして無残にも破壊された城門。

 昨日くぐった門は瓦礫の山となって、今は建設用の大型魔導アーマーが瓦礫の撤去をしている。


 俺はまだGR計画について何も知らない、だが壊された街並みを目に焼き付けてGR血盟の世界征服を阻止すると戦う決意をする。

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