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3話

 まだ夜が明けない時間、門を見張る騎士たちはあくびを噛み殺しながらたまに通る商人に目を光らせていた。だがこの日は特別霧が濃く伸ばした腕の指先が霞むほどだった。


 「今日、霧濃いな。何にも見えないのに商人たちは逞しいな」

 「ああ、そうだな。でもなこういう時はろくでもない奴が紛れ込むもんだ」

 「紛れ込むも何も入ろうと思えばどこからでも入れるけどね」


 城門があるのは大きい街道のみで、昔は街を壁が囲んでいたが次第に街は大きくなったり、時代とともに不要となり必要な所を残すのみになっている。

 騎士たちが無駄話をしていると突如空気の壁のような風が吹いた。騎士たちはただの風ではない纏わり着くような何かの異常さに警戒態勢を取る。


 「なんだ? 魔獣か?」


 魔導アーマーが剣と盾を構え慎重に前へ出ると巨大な金属の塊が見えた。それは魔導アーマーよりさらに大きい機械の巨人だった。


 「何だこれは!……明かりを!」


 魔導アーマーの後ろで控えている騎士たちは魔法で光の玉を作り出そうとしたが魔法が使えなかった。


 「何をやっている! はやくしろ!」

 「魔法が使えない! あっ? うわあああっ!」


 騎士たちは動き出した巨大魔導アーマーに蹴飛ばされ、魔導アーマーは張り手を受け止めようとしたが城壁に叩きつけられた。

 門の上で非常事態を見ていた騎士たちはすぐさま落とし格子を下ろし騎士団本部に連絡を入れようとする。


 「こちら東門、第0913騎士団、本部応答せよ! 本部応答せよ! おい、なんで電話が繋がらないんだ!」

 「こっちもだ! 式神が飛ばない」


 手紙を紙で作った鳥の中へ入れ魔法で疑似的な命を作り目的地へ飛ばす式神、さらに魔導具の電話も城門の電気も使えなくなり騎士たちは慌てふためく。

 騎士たちがパニックになっている間に巨大魔導アーマーは閉じた門へ近づき、拳をふりかぶる。


 「おい! まさか! にげろおぉぉ!」




 ソウマは雷が落ちたような音で目を覚ました。だが雷ではないのはすぐに分かったので外へ出て確かめてみる事にした。


 「何だ、すごい霧だ。何も見えねぇ」


 俺が霧の濃さに戸惑っていると緊急事態を知らせる鐘を叩く音が聞こえてきた。まさかエクセルシティに着いて早々GR血盟が動き出したのかと思い、白く輝く大剣を部屋に取りに行ってから音のする方向へ向かう。

 大通りへ向かう途中避難してくる人々が路地に逃げ込んで来た。徐々に人の数が増えていき前へ進めなくなったので細く人のいない路地を進む。破裂音がだんだん大きくなってきた。

 しまったと思った。まずは何が起きているのか様子を見るつもりだったがまだ街の土地勘が無いがためにそのまま大通りへ出てしまった。


 耳元で太鼓を叩くような音と金属を引きずるような音が聞こえる。

 音がどんどん近づいてくると地面が揺れ、空気が震え、窓ガラスが割れる。

 そして、深く何もかも包み隠そうとする霧と暗くある物すべてを引きずり込む闇夜の中から、点滅する街灯の不確かな光が音の正体を照らし出す。


 高さは3階か4階を越えるくらいあり建物が動いているのではと錯覚するほど大きく、色は漆黒で樽のような体形が威圧感や恐怖感を与える。さらに角は2本あり鬼か悪魔を想起させ、煌々と光る満月を二つに割って張り付けたような目がこちらを見ている。


 「何だこの巨大魔導アーマーは!」


 まだこれが何なのかはわからないが、街を破壊しているのはこいつであるのは確かなので大剣を構える。すると巨大魔導アーマーは手に持った何かをこちらに放り投げる。引きずっていた物は騎士団の魔導アーマーだった。

 たぶんこいつは無謀な冒険者が出てきた程度にしか思っていないだろう。俺は素早く飛来物の下を潜り巨大魔導アーマーの足を切りつけながら走り抜けた。

 俺は切断出来ると思っていた。だが驚いたことにとてつもなく硬く表面を傷つけただけだった。修行中色々な物を切ってきて魔導アーマーだって切った事はあるがこの巨大魔導アーマーはただデカいだけじゃなかった。

 魔導アーマーは手をこちらに向けると各指先から光線が連射される。


 「魔導レーザー!」


 普通の魔導アーマーなら銃から発射するがこいつは指から出すことが出来るようだ。

 大剣を構えて跳ね返すが威力が一発の凄まじく徐々に押され離される。俺の位置からは剣は届かないので走って近づこうとしてもレーザーに狙い撃ちされてしまう。

 ならばとまずは敵の足元を魔法で崩して一瞬でいいから怯ませて一気に近づこうと考えレーザーの合間にタイミングを見計らい魔力を込め大剣を地面に突き立てた。


 「……?」


 何も起こらなかった。そして動きの止まった瞬間をレーザーが直撃して吹き飛ばされ地面を転がる。

 どういう事か分からなかった。魔法を使い魔導アーマーの足元に穴を空けるつもりだった。

 街で使われる石畳や建物の建材などは強化魔法で強度が上げられ簡単に壊れないようになっているが、そもそも魔法が発動せず魔力は霧散したのだった。

 体中が痛くゆっくりと立ち上がると都合のいい事に魔導アーマーからこっちへ来てくれた。止めを刺しに来たようだ。そして片足を上げ勢いよく落とす。


 「がっ!」


 大剣を盾のようにして受け止めると石畳は割れ足が地面にめり込む。このままではぺちゃんこにされる。

 どうやってぶった切るかを考えようとするが耐えるのに精一杯で頭が回らない。少しずつ視線が下がってくる。自分が押し潰されているのか地面に埋もれているのか。

 視線が下がってふと気づいた。点滅する街灯の近く、魔導アーマーのいた場所の地面がへこんでいるのだ。魔導アーマーの重さでへこんだのかと思ったがそれにしては範囲が広いように見える。

 これはつまり魔法が発動していたという事。魔法が使えるのなら出来ることは増える。落ち着いて考えるがどんどん押され足が埋まっていく。そこで俺はこいつが上から押し潰しに来るのであれば下を行く事を選択した。

 もう限界であるかのようにギリギリまで耐えてから地面の下へ潜る。思った通り土の中は魔法が使える。敵がこちらに気が付く前に土の中を泳ぐように移動する。そして大剣にありったけの魔力を込め魔導アーマーの背後に飛び出す。


 「マスターから頂いた剣、魔法、命にかかれば、デカいだけの魔導アーマーの1機や2機!」


 魔導アーマーはこちらに振り向こうとしている。俺は真っ二つにするつもりで切りかかる。大剣は光り輝き、振り下ろせば魔導アーマーを切り分ける。


 !?


 俺の渾身の一撃は魔導アーマーの左腕を切り落とした。無くなった腕の部分を確かめている。まさかあのタイミングで躱されるとは思いもしなかった。

 着地して剣を正面に構え直そうとしたが力が入らず持ち上げられない。さっき地面に潜る前に踏まれたのだろう頭から血が滝のように流れているのに気が付く。

 非常にまずい事になった。怪我を治そうにも魔法が使えない上に、魔導アーマーの腕を切ったがまだ動けるはず。なんなら操縦者が出てくる可能性もある。

 魔導アーマーの指先がこちらを向く、魔導レーザーを放つつもりだ。だが、俺は体を思うように動かせず次第に視野が狭くなり目の前が暗くなって……。

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