2話
俺の名はソウマ、小さい時親に捨てられ森で狼に襲われそうになっていたところを剣聖タツヒトに助けられてそのまま弟子になった。
あれから十年位、マスターの遺言であるGR計画の阻止のために大都市エクセルシティへ向かっている。
というのも、何一つ手掛かりがないのだ。なら人の多い所へ行って情報を集めるしかないと考えた。
山を下りて谷を越え険しい山道を進む。途中で村や町に食料の調達に立ち寄ることもあった。ちなみに町から町へは馬車が出ているがお金があまり無いので乗らなかった。
森の中では熊や狼の魔獣に襲われたが子供のころとは違い返り討ちにした。さらに吹雪や長雨で進めなくなることもあった。
そして今、夜の焚火の前でこの旅最悪の敵、孤独と戦っていた。
今まではマスターと一緒に街へ買い物へ行ってたし、一人で出掛けても山小屋に帰ればマスターがいたから平気だったが、一人でいると夜の闇がより暗く、吹く風はより寒く感じる。
体は大きくなったが心はあまり成長できていなかったようだ。一人で旅を続けてきたマスターのすごさを知った。
夜が明けこの日も朝から街道沿いを歩く。しばらくすると峠の茶屋が見えたので休憩することにした。
リュックと大剣を置いて表にある長椅子に座り、立て看板のメニューを見ていると店の奥から店員のおばちゃんが出てくる。
「いらっしゃい、ご注文はどうなさいますか?」
「えっ、じゃ、じゃあ、団子セットを1つ」
「はい、団子セットを1つね。少々お待ちください」
注文を聞くと店の奥へ入ったのだが俺はしばらく誰とも話をしていなかったからか、はつらつとした声にビックリしてしまった。
よくよく考えると俺はマスター以外の人とあまり話したことがないと気づいた。あとは近くの村の人、買い出しへ行った時に話す店員、あと誰か居たかな……なんて考えていると茶屋の奥からおばちゃんが出てきて、長椅子に団子セットの三色団子とお茶が置かれたのでお金を払う。
「はい、確かに。ごゆっくりどうぞ……あれ、おにいさんこの辺の人じゃないね。出稼ぎかい?」
「えっ? はい、そうです」
急な質問に対してとりあえずそうですと答えておく。誰かもわからない人に正直に「秘密結社を捜しています」なんて言ったら不審者に思われてしまう。
「よくわかりましたね」
「昼前の半端な時間にやってくるのはあんまいないからね。大抵の冒険者は朝の馬車に乗って仕事に向かうもんさ」
「なるほど」
「あんた、エクセルシティは初めてなんだろ? じゃあ、ちょっと街の事教えてあげよう。団子食べながら聞くといい」
俺は「お願いします」と言って団子を食べながら耳を傾ける。
「ここエクセルシティはアマノガワ公爵の治める領地で回りを山に囲まれた盆地になっているのだけど、これは2000年くらい前に隕石が落ちてできたクレーター跡でね。その落ちてきた隕石というのが巨大な魔石という噂で、落下の衝撃で砕けてあちこちに埋まってその魔石を採掘するために人が集まって出来た街なんだって。だから今も盆地の外周では採掘が続いててさらに魔導具の製造開発もして街の発展に繋がるわけね。ついでにこれも噂なんだけど領主の館の下には今も巨大な魔石があって領主は代々守り続けているって話さ」
エクセルシティの成り立ちを聞き終えた俺は出発しようとする。
「さてそろそろ行きます……お話ありがとうございました。お団子おいしかったです」
「ありがとうございました、また来てください」
俺は茶屋を出て坂を上ると開けた場所に出た。そこから周囲を見渡すと眼下に広がるのは大都市エクセルシティ。
「すげぇ、でっかいなぁ」
その大きさに思わず声が出てしまう。盆地の中央の山の上に館がある。あれが領主アマノガワ公爵の住居なのだろう。そこから盆地の外側へと家や道が広がっていく。今いる道の終着地もあの館なのだろう。
鉄道が街中を横断して走っていて都市と都市を繋いでいる。俺は一度も乗ったことがないので乗ってみたい。
盆地のフチでは採掘場所らしく穴があいている。さらにその近くでは煙が立ち上り工場が見える。
俺は再び歩き出す。道は広くレンガ道になり、横を見れば水路。きれいに整備されている。木々の間から畑と家さらに崩れた城壁が見える。だんだん家や歩く人が増えてきた。
しばらく歩くと橋とその先に城門が見えた。門の下では出入りする人々を見張るスーツ姿の騎士と魔導アーマーだ。通り過ぎながら横目で見ると金属の巨体の威圧感がすごい。
魔導アーマーは普通の着用するような鎧と違い人が中に乗って操縦するもので、成人男性の二倍程度の高さがある。さらにその強さは一般的な騎士が10人以上と言われているが正直よくわからない。
門をくぐるとそこは大勢の人、馬車、魔導アーマーが行き交っている。
さっきの騎士団の魔導アーマーは都市の治安を守る事が主な目的なため装甲が厚く頑強に見えるが、街中を行く魔導アーマーは丸みを持った機体や、腕が砲になっている機体、下半身だけの機体が歩いていた。
いつまでも人の多さに驚いてはいられない、俺がまずしなければいけない事は冒険者ギルドへ行き登録して仕事と住む場所を見つけるのだ。GR血盟と戦うにしてもまったく情報が無く、マスターの残してくれたお金はあるがいつまでここに居る事になるのかわからないのである。
冒険者ギルドは大抵大通り沿いにあるので歩きながら探す。大都市だけあって道が広い、建物も大きい、街灯もある、屋台も沢山ある。とても賑やかでまるでお祭りをやっているようだ。
すぐに冒険者ギルドの建物を見つけられたので入る。昼間なので皆仕事へ行っているのだろう閑散としていた。俺は受付のおじさんへ話しかける。
「すみません、登録したいんですが」
「ああ? 新規登録? じゃあこれに名前書いて」
やる気無さそうなおじさんに紙を渡され、そこに名前を書いて渡すとギルドの奥へ入り、戻ってくるとカードを渡される。
「はいこれ、登録済んだんで簡単に説明すると、あそこにある依頼書を持って来て受理したら、依頼主のとこ行って仕事してサインを貰ったら帰ってきてこっちでお金を渡して終わり、わかった?」
「はい、わかりました」
たまにマスターの仕事を手伝っていたからだいたい知っている。さらにギルドは冒険者の生活支援なんかもやっているので住む場所について聞いてみる。
「あと、この辺で借りられるアパート知りませんか?」
「ああ? ギルドの方で貸してるけどどうする?」
「教えてください」と言うと、おじさんは足元から分厚いファイルを取り出し渡される。この中から探せという事だろう。
場所、間取り、家賃が書いてある。俺はとりあえず安いところに住む事にした。
「ここにします」
「この紹介状大家に渡して、家賃払わないとすぐ追い出されるから」
話が終わるとすぐに新聞を読み始めてしまった。なんとも愛想のない事だ。あまり気にしないからいいのだけど。
俺はギルドを出てアパートへ向かうのだが、しだいに道は狭くなり街灯もなくなった。この辺は何件も同じようなアパートがありギルドが運営しているのだろう。
自分の住むアパートへ着くとサバ白模様の猫がいたが目が合うとひとっ飛びで2階の屋根の上へ逃げてしまった。撫でたかったのに残念だ。
1階に1つだけ表札が掛かっているドアがあった。ここに大家が住んでいるのだろう。ノックすると出てきたので老人に紹介状を渡すと代わりに鍵を渡された。
2階の自分の部屋へ入るとそこは何もない部屋とトイレのみ、『起きて半畳、寝て一畳』と聞いた事があるがそれより少し大きく寝るだけの部屋だった。
敵は何処に居て、いつ現れるのかわからないが、今日の所は部屋が埃っぽいので掃除して屋台でご飯を買ってから寝ることにした。




