1話
外では雪が降り、山小屋の中で魔石ストーブが部屋を暖かく包み込む。
この日一人の老人が長い旅を終えようとしていた。
「ソウマ、いいかよく聞け」
「はい……マスター」
俺の名前を呼ぶのは師匠の剣聖タツヒト。今はもうやせ細ってガリガリになり、ベッドから起きることもできなくなっている。
「GR計画を阻止しろ」
「ジーアール計画、それはいったい?」
「奴は言った、大地の再征服と」
「世界征服するということですか?」
「そうだ、だがそれだけではない。何か別の恐ろしい事をしようとしているのは確かだが……ワシは人生をかけて追いかけてきたが奴らの真の目的をつかめなかった」
「やつらとはいったい何者なのです?」
「秘密結社GR血盟、昔から存在する謎の組織だ。大きな事件の裏には必ず奴らの陰がある。ワシの仲間達も犠牲になった、このまま仲間の無念を晴らさず、何も成せずに終わるのかと思った……そんな時ソウマ、お前に会えたんだ」
「はい……」
俺は震える声で返事をした。なんとか笑顔で送り出そうと努める。
「お前に会って、体を鍛え、技を教え、意思を託した。そうするべきだと運命を感じたからだ」
「俺はあの時会っていなければ死んでいました。恩を返す時が来たのです。マスターのしてきた事を受け継ぐのが俺の運命なのです」
「そうか、お前に押し付けたようだと思っていたが杞憂だったか……そうだ、あれを持っていけ」
マスターは視線だけを動かす。その先の壁に掛かっているのは柄から刀身まで全体が白く輝く一つの金属で出来ている人の背丈ほどある大剣だった。
「ワシが死んだら山を下りて街へ行け。そこで見て、聞いて、体験しろ。さらに経験を積めばお前はもっと強くなれる。だが注意しろ奴らはいつもどこかに潜伏している」
「はい……」
「ソウマ、おまえなら奴らに勝てる」
「はい……」
「おまえならGR計画を阻止できる、そう信じているぞ」
「はい……」
「もう……休むとしよう」
「おやすみなさい……マスター」
その後、偉大な勇者剣聖タツヒトが目覚めることはなかった。
山小屋の近くに作った墓の前で礼をする。目印程度の小さい墓石の下にはマスターの遺灰が埋まっていて、近くの村の人に弔うのを手伝ってもらった。
「行ってきます、マスター」
最後の挨拶をして、旅に必要な荷物の入った大きなリュックを背負い、紐のついた布袋に入った大剣をリュックの上に乗せるが結構邪魔だなこれ。
出発しようとした時、ふと気付いた。
「どこに行けばいいんだ」
俺はマスターの言う敵を捜す以前に自分の進む道さえわからなかった。




