5話
マシンウェポンの襲撃があった日の未明。
ステラが寝ているとドアを強く音が聞こたので起きると主の返事を待たずにメイドのセツナが寝室へ入ってくる。
「お休み中のところ申し訳ありません。敵です!」
「何ですって!」
ステラはすぐに着替え指揮所へ向かう。
指揮所は領主の館の下の山の中にあり、アマノガワ公爵領内はもちろん近隣の領地さらに大陸中の情報収集を普段は行っていて有事の際には領主がここで指揮を執る。
ステラが部屋へ入ってすぐ職員たちは敬礼をしようとするがそれを手で制してから椅子に座る。
指揮所内部は四角く、壁際の両サイドでは職員たちがモニターを見たり外の騎士と電話で連絡を取っている。中央の巨大なテーブルの上にはエクセルシティ全体の簡略化された立体映像がリアルタイムで映し出されているが東部だけが暗く映像が更新されない。
職員たちは異常事態に混乱していた。
「なんで東部の映像が更新されない! 故障してるのか!?」
「いえ、故障ではありません。原因は調査中です」
「東部では魔法が使えないとの報告が!」
「今、魔力発電所から連絡があり正常に稼働しているとのことです」
「斥候部隊からの連絡は?」
「行ったきり帰って来ません」
「茶屋から何かないのか?」
「エクセルシティ全体が濃い霧に包まれていてあちら側から何も見えないそうです」
「東門の方から逃げてきた騎士から報告がありました。とてつもなく巨大な魔導アーマーが突如現れ東門を破壊しこちらに向かって進行しているようです」
黙って職員たちの話を聞いていたステラは魔法が使えない異常事態と巨大な魔導アーマーと聞いて動き出す。
「私が直接行きます。すぐに魔導アーマーの準備を!」
「えっ、ステラ様自ら……はい、すぐ魔導アーマー準備させます!」
職員は格納庫へ連絡しに行くのと入れ替わりに3人のメイドが現れる。
「我々もお供します」
「ええ、頼むわ」
格納庫は山の下部に位置し魔導アーマーが街へ出られる場所にある。
ステラはドレスのスカートを中央から開き後ろへ回して折りたたんでから真紅のボディの魔導アーマーへ乗り込み、メイドたちは銀色の魔導アーマーへ乗る。
ステラの乗る魔導アーマーの愛称はレッドラビットといい、真紅のボディもそうだが特別仕様となっていて、ステラ好みのスピード、柔軟性、身軽さを重視した作りになっている。
「レッドラビット出るぞ! 早く道を空けろ!」
メカニックの怒号が飛び、行けると手を振り合図をする。
「ステラ アマノガワ、レッドラビット出ます」
レッドラビットは走り外へ出る。続いて3機の魔導アーマーも出る。
「よく聞きなさい。東部に入ったら魔法は使えなくなります。それにこの濃い霧、中では何が起こるかわかりません。予想外の事が起こるかもしれません油断しないように、いいわね!」
「了解!」
レッドラビットは霧に紛れ別の道を行く。大通りを行く3機は金属がぶつかる音を聞き先を急ぐ。
濃い霧の中でぼんやりと巨大な影が見えると先手の一撃を与えるべくひとりのメイドが声を上げる。
「加速しろ!」
近づくと片腕のマシンウェポンが倒れた人に手を伸ばしていたのが確認できた。
門を破壊するほどの力を持った巨大なマシンウェポンはすでに腕を切られていて本当に予想外な事が起きていた。だが3人は自分の仕事をするべくマシンウェポンを三方から囲み剣を抜いて。
「ハイスピードデルタ!」
三方向からの同時に切り抜けた。
だが、マシンウェポンはまったくビクともしなかった。メイドたちは驚愕した。
次はこちらの番とマシンウェポンは近くの魔導アーマーを殴りつけた。すると殴られた魔導アーマーは壁に叩きつけられ動かなくなる。
「クラウド!」
「よそ見をするな! こいつを!」
魔導アーマーの腕からチェーンが発射されマシンウェポンの腕を絡み取り2機で引っ張り拘束する。
「くっ、2機でパワー負けしてる!
「今がチャンスです。お願いします!」
今まで機をうかがっていたレッドラビットは上から急降下して槍をマシンウェポンの首の根元に突き立てた。しかし、槍は折れてしまう。
マシンウェポンは手首を動かし指先から魔導レーザーを発射し鎖を発射した魔導アーマーを撃つ。撃たれた魔導アーマーは爆発して倒れる。
レッドラビットは拘束が解かれた腕に捕まれそうになるが、肩から飛び降りて折れた槍を捨てて剣を抜く。
ステラは自分たちの攻撃が一切通じない事態に焦っていた。
これはもう撤退するしかない状況だが近くで倒れている、マシンウェポンの腕を切り落としたであろう人を回収しての脱出をどうすべきか考えているとマシンウェポンの肩に人が乗っているのに気が付いた。
小太りしたタヌキのような男で手には小槌と鐘を持っている。その男はステラを見てニヤリと笑うと鐘を小槌で叩くと消えた。切られた腕も一緒に跡形もなく消えた。
ステラは何が起こったかわからなかったが、とにかく倒れている人を拾ってこの場から撤退した。
マシンウェポンが消えて間もなく街灯は再び点き、霧は薄くなり、エクセルシティにいつもの朝日が昇った。
マシンウェポンの襲撃があった日の夜。
ステラは事後処理を終えて、寝室の特定の壁を押し隠し扉を開く、その先にある小部屋はエレベーターになっているのでボタンを押して下へ行く。
そしてたどり着くのは山の中のとある場所、エレベーターを降りて目の前にあるのは重厚な扉。ステラは胸元の赤いペンダントを外して扉の光る部分に押し当てる。すると扉は重々しい音を立てながらゆっくりと開く。
中に入ったステラは魔旋位相型超振動ゲージ場縮退炉を見つめてこの日あった事を思い返す。
GR血盟のマシンウェポンがついに来た。さらに東部で発生した謎の魔法が使えない現象、あれもGR血盟の仕業だろう。奴らのマシンウェポンは恐ろしく強く私たちの魔導アーマーは太刀打ちできなかった。だが希望もある。
剣聖タツヒトの弟子ソウマ君だ。彼はマシンウェポンの腕を切り落としていた。彼を中心とした部隊を作り戦力を集め、奴らへの対抗策としよう。急ぎ準備をしなければ、本格的にGR血盟が動き出す前に。




