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124 神と人族

説明回です。

「この世界でいう神は、三神というか三組存在する。全く知られていないが、最初の神であるこの世界の創造神は、この世界をつくり多様な生物を放ってから、別の世界を創るべく旅立った。だが、代わりにこの世界を管理する者を選定した。それが俺をこの世界に連れてきた、最初の管理神で、二組目の神だ。この神は、世界や生物の状態を監視し、適切な繁栄を得られるようにすることが役目だったのだが、ある時この世界で適応できずにいる種族を見つけた。それが、聖光神国に代表される純血の人族だ。ここまでは良いか?」


皆が頷くのを見て、俺は話を続ける。


「この世界は、魔力がありそれを利用することを前提として、世界がデザインされている。だが、人族はこの魔力との親和性が、極端に低かった。皆無と言っても過言ではないだろう。そこで、管理神は人族が世界に適応できるように、生物の進化に手を加えた。これが、当人の望む姿へ進化できるという性質だ。それは、何代も重ねるうちに魔力への親和性を得るということを期待しての事だったが、結果として他者を倒すことで、進化を早めるということに繋がり、より交戦的な種族を生み出すことになる。一方で、この性質により、人族に近い容姿をした種族が産まれてくると、そうした近似種族と人族の混血化が進み、この世界に対応できるニュータイプの人族が現れた。そうした者はこの中央大陸に最も多く、古代魔法王国や、この森にあった国等で繁栄していた。だが、そうした近似種族の少ない北大陸では、なおも人族は苦難を強いられた。そこで、次にとった手段が、人族に魔法以外の力を付与する事だ。これは加護と呼ばれるもので、魔法に似た治癒の効果や、個人の適正に応じたユニークスキルとして、発現した。

この力を持って、人族は魔物や敵対的な異種族を退け、北大陸はおろか中央大陸にも進出してくる。そして人族の繁栄と共に生まれたのが、聖光神教の元になった考え方で、それは


“神は、人族がこの世界に君臨するための力を与えたもうた。真に神から望まれているのは人族だけである。人族こそが正当な支配者である”


と言うものだった。


人族が、繁栄し始めたことを確認した管理神は、ここでしばらくこの世界から消える。本神は、ちょっとした休憩のつもりだったが、その間にいくつかの文明が滅び、他の世界にまで影響する戦争を見逃す事になる。一方で人族側は、この管理神不在の衰退期を“異族が繁栄する事で、神が害された”と考えた。実際、管理神が離れている事で、加護の力が弱まるなどの症状が出ていたため、この説は広く支持され、従来の人族こそが選ばれた存在という考え方と相まって、聖光神教が誕生する。


そして、問題の管理神はといえば、そんな状況など露知らず、久しぶりに休憩から戻ってみれば、せっかく繁栄させた人族も大きく目減りしているし、他世界にまで及ぶ戦争が起きていたと知る。同時に偶然巻き込まれた俺が、魔力のない世界でこことは違った繁栄をしている文明に、生まれ育っている事を知り、人族への追加支援として、俺にホームセンターや鑑定の力をくれて送り込んだらしい」


俺は、管理神というのは不動産屋か、マンションの管理会社のような存在と思っていた。けど、最初の管理神は、生物へ手を加え外から別の要素を入れている。これが越権行為なのか、与えられた権限の範囲だったのかは不明だ。


「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」

「まあ、送り込んだ先が森の中で、俺が人族と敵対的な立場を取るとは思っていなかったようだけど、そうやって最低限の事後処理をした後、地球との賠償問題で揉める前にと、管理神職を勝手にやめて、雲隠れしてしまったそうだ。あとを引き継いだ三組目、現在の管理神は、まずは俺への支援へと動き、その後地球側との交渉や、創造神への報告などで忙しかったため、俺との連絡が途絶えていたんだそうだ」

「…え〜と、ちょっと気になったのですが、僕らのような転生者はその話と、なにか関係あるのでしょうか」


龍雄から質問が入る。


「あるぞ、異種族に元人間を転生させることが、人族に有益だと考えたみたいだな。モーブなどは、異種族を人化させるための起爆剤で、龍雄の場合は俺と同じで、人族側の戦力にするつもりだったみたいだ。俺が異種族側につかなきゃ、それもうまく行ったんだろうけど、本神は仕込みだけして逃げちまったから、後のフォローも無くて、今のこの結果になったわけだ」

「神といえど、なんとも頭の悪そうな話じゃな。聞いていると、こっちの頭がクラクラしてくるようじゃ」

「そんな経緯があった上で、現在の管理神から、なるべく死人を出さずに、人族の勘違いを正して欲しいと言われたんだよ」

「いや、それ無理でしょう。治癒の力はともかく、ユニークスキルを持った者がいるなら、正直戦争は避けたいですけど、あっちもそんな戦力があるなら、引かないでしょ。それに話し合いをするにしても、今の話をどうやって理解してもらうんです?」

「実は、それが一番の問題で、いい方法が思いつかないから、とりあえず切り崩せるところを切り崩して、あっちの国力を削いでいる状況なんだよ」

「ユニークスキルとやらが、どんなモノか分かっているのか?」

「それもよくわからない。だけど、俺の例を見ても必ずしも戦闘に、適したものではないと思う。その代わり空間転移や認識阻害などという、他に類を見ない能力を持っている者が、居るのかも知れないが」


以前の暗殺者騒動を思い返してみれば、不自然な部分があった。こちらの大陸には、帝国の魔法の鍵で来たとしても、帝国人以外の森の種族とは、言葉が通じないはずだ。ケットシーには人族語を話せる者もいるが、この森では各種族の言葉が日本語に変換されて、言葉を交わしている。そこに異端審問官が混じったなら、会話が成立しないなどの違和感を、早期に感じていたはずだ。

そして、いきなり敵地に最高戦力を送って来ないだろうし、ユニークスキル持ちにしては、結果がお粗末すぎるので、異端審問官は何者かに認識阻害などの、効果を付与された捨て駒と見るべきだろう。


「ユニークスキルとか、まるで勇者みたいですね」

「まあ、確かにこの世界の勇者、という考え方もできるかな。それが、普通の現地人なのか転生者かは、分からないけど」

「転生勇者とか勘弁してくださいよ」

「勇者はドラゴンを退治するというのが、お館様たちの世界の一般常識じゃったかのう」

「現実にはドラゴンなど居ないので、常識と言えるか分からないが、そうした伝説はあるし、後に作られた話としても、邪悪なドラゴンを退治するという英雄物語は多いな。転生者についてはMgr viewで見る限りは、内政チートが疑える変な物はないようだから、心配いらないんじゃないか?」

「それもまた、フラグになりそうなんで、ホントこの話題は勘弁してください」


達雄はえらく警戒してるが、人族に力を与えた、管理神はもう居ないのだから、勇者モドキの能力だって下がっているはずだ。ぞれに対して、直近で力を与えられた俺達は、能力低下していないし、引き継ぎしてくれた管理神からの支援があるのだから、龍雄が負けるなんて無いはずだよ。


「ま、それでも身内に死人を出してまで優先する必要はないから、管理神の要望は努力目標って事でいいと思う」


『アオ〜ンアオ〜ン』


そんな話をしていると、唐突に発情期の猫のような声が聞こえた。


「すまにゃい、にゃーの電話にゃ」


そう言って、アントニャオ殿下は、腰のホルダからスマホを抜き取り、通話を開始した。

その着信音はどうかと思いますよ。

そして、スマホを猫耳に当てて、話を始める。大きいとはいえ猫だから、耳に当ててもマイクは充分、口に届く。


『殿下、化け物にゃ。あれは駄目にゃ、今すぐ帰りたいにゃ』

「化け物にゃと⁉それは、どういう」

『にゃ〜〜〜〜〜〜もう駄目にゃ プツッ』

「お、おいどうしたにゃ…駄目にゃ、もう切れてるにゃ」


そう言って、殿下はその場の皆の視線に答えるように、首を横に振る。


「だいぶ慌てている様子の声が、漏れ聞こえたけど、なにかトラブルですか?」


会話はほとんど筒抜けだったけど、一応聞く気はなかったんだよという感じで尋ねる。


「聖光神国に潜入しているはずの、ヨシコー•ワシマからだったにゃ、化け物がどうとか言っていたにゃけど、詳細はわからにゃいにゃ」


ヨシコー•ワシマ…ああ、男装の麗人とか満州のジャンヌ・ダルクとか呼ばれた人に、よく似た名前の潜入工作員だったな。


「だいぶ逼迫(ひっぱく)しておったようじゃが、無事だとよ」


バタン!


長老の言葉を遮るように、ドアが勢いよく開かれ。


「殿下、教国の“天使”は化物にゃ!!」


件の人物…だと思われるケットシーが、飛び込んできて叫んだのだった。


言語理解アプリのおさらい


日本人、アメリカ人、ドイツ人、中国人、インド人など、それぞれ違う言語を話す者が、このアプリの影響を受けると、その会話が全て日本語になります。しかも翻訳ではなく、意識せず日本語で話し、日本語を聞いて理解できるという効果です。

ここに、アプリの影響を受けない英語圏の人物xが混ざった場合、xの言葉は英語として伝わり、他の人物の言葉はxにそれぞれの言語として伝わります。

この場合、英語であればアメリカ人や母国語以外に英語を話せる者とも会話できますが、それはあくまで英語として伝わりますので、相手には“日本語を話せてない”ことが分かるわけです。

例外的に、奈良健人だけは、相手に日本語を言葉を理解させられますが、アプリの影響を受けていない者の言葉は、奈良健人にも理解できません。

したがって、異端審問官が、ケットシーの検査を通っていることに、疑問が生じるわけです。

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