↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/154

112 懐かしき時代を今ここに

カーン カン カン


「ばるす」


ジバババババ


「うわ~、目が、目がぁ~」


コンコン、ギュイーーン


「ドラゴンの目って焼けるのか」


ベビーサンダーで、バリを削りつつ尋ねる。


「振っておいて、まさかのリアクション!」

「常にリアクションが、貰えると思ってるようじゃ、芸人は務まらないぞ」

「いや、芸人じゃ無いし。と言うか、溶接機使ってなに作ってるんです?あと目が焼けるって何です?」

「なにって、見ての通りだよ。それと溶接の光を直視すると、目に悪いのは日本じゃ常識だぞ」


カスを掃きつつ答えるが、見ればわかるだろうに。


「眩しかったけど、別にどうということはないですが?その作ってるのは…トロッコじゃないから、カマドつき台車?」

「なん……だと、……悲しいけどこれ、世代差なのよね」

「???」




事の始まりは一週間ほど前のことだ。


「おかげさまで母も仕事ができて、喜んでいます」

「そうか、それは良かった。それで、今日はどうしたんだ」


竹製品作りが始まってしばし、再びノブタから相談を受けた。


「実はですね、引退した年寄の男衆が、なにか仕事を斡旋してもらえないかと、言い出しまして」

「狩りや衛兵じゃ駄目なのか」

「まだまだ普通に体は動きますが、荒事となるとやはり若い者には、ついていけないと言いまして」

「オークは働き過ぎじゃないか?」

「そうですかねえ?」

「希望はどんな仕事なんだ」

「マイペースに一人でできる仕事がいいのですが、反面で人との接点は欲しいそうです」


つまり、自由業やフリーランスが良いけど、寂しいのは嫌と………。


「客商売なら最低限の束縛はされるぞ?」

「それは仕方ないです」

「ならちょっと考えてみるよ」


そして俺は、一晩じっくり寝ながら、この件を解決する策を考え、ひとつの策を思い付いた。


「邪魔するよ〜」

「これはこれは、お館様。ようこそお越しくださいました」

「南町の荷車について聞かせて欲しいんだけど良いか?」

「荷車ですか」

「ああ、南町の荷車の、素材や構造を知りたい」

「多くは木製ですが、鉄の荷車もありますよ。ドワーフ製の方が軽量ですね。小さいものなら、幅一メートル弱で長さも二メートルないぐらいですか。大きいのは、軽トラの全長くらいありますよ」

「それは、人力用か?馬車用か?」

「両方ありますが、町のなかでは小さい方が、取り回しが楽ですね。それとドワーフ製は人力用も魔力強化で金属を薄くできますから、見た目よりはずっと軽いです」

「それじゃ、店のリアカーの車輪を馬車風にしたら、南町でも違和感なく使えると思うか?」

「フレームがパイプだと、見る者が見れば不自然ですが、丸棒ぐらいなら平気でしょう。何か考えがおありですか」

「ああ、ちょっと作りたいものがあってな、こんなのや、こんな感じの物なんだがな」


スマホで古い写真を見せる。


「これは箱馬車ではないですよね」

「低資金で開店できる移動式の店だな。南町や他の町で売れたらと思ってる」

「なるほど、露天も常設では敷地料がかかりますから、移動式で安くできれば、出店も増えそうですね」

「そうか、普通は地代がかかるのか、ありがとう。参考になったよ」

「いえ、いつでもお声がけください」


いつもの商人……(アーキンドという名前らしいが、この世界の言葉では商人をあきんどとは言わないので、単なる偶然だろう)の店を後にして、店へ……ホムセンへ向かう。ドルトンに電話をいれて、鍛冶屋を紹介してもらい、リヤカーを見てもらう手配をして、次にヨルンへと電話する。


「ヨルンか、ちょっと探して欲しいものが、あるんだけど頼めるか?資料はメールで送るから、ダンジョンで探して欲しい。……ああ、人集めは任せるよ、とりあえず軽トラの荷台に乗る程度でいいよ」


さて次は……。

店内を歩き、目的のものを探す。

うん。この釜と煙突でいいかな。


そして、俺のリヤカー改造が始まった。完成したら鍛冶師に投げて、この世界風にアレンジして作ってもらう。

龍雄のやつは見学で、俺が呼んだ訳じゃないし、進んで手伝いをしてくれているわけでもない。食わずに生きられるから、働く必要はないという。少しはオークを見習えと言いたい。


「若干武骨ではあるが、機能に問題はないはずだ。よし、この線で仕上げよう」


ジジジジジバババババ。カッコンカッコン、ギュイーーン、ギュウーーン。


「煙突はここで……扉を付けて……吸気を……」


「お館様~~頼まれた物を、持ってきましたよ」


ヨルンと先日の後輩が台車にのせた袋を持ってやってきた。


「おお、ありがとう」

「これは、何を作ってるんですか」

「これか、これは移動式の店だな。持ってきてもらったそれも、これに使うんだ」

「移動式の店ですか?」

「ああ、今の時期にちょうどいい店だな。あ、持ってきてもらったそれ、きれいに洗って煮沸してくれるか」

「これを?」

「そう、それを煮沸して乾かしてくれ。終わったらそこのかごに、入れといてくれ。それと明日の午後に売り物の試作するから、よかったら来てくれ」

「はあ……」


翌日。


「ウマ!」

「これは、いつから売り出すんです?」

「いや、試作したけど俺が売る訳じゃないから。オークのじいさんたちに、声をかけるつもりだけど、他に希望が有れば、検討する」

「それなら、自分にも預けてもらえませんか」

「キール?」


ヨルンの後輩で冒険者のキールが、なんか乗り気だ。


「今ポーターやってるやつで、冒険者に向いてなさそうなのが、何人かいるんですよ。そいつらにやらせたらどうかと思って」

「だからって、冬だけの仕事じゃ困るだろ、夏はどうするんだよ」


ヨルンが懸念を口にする。


「売るものに会わせて、夏向きの屋台も作れるぞ。なんなら通年でやれる商売でもいいし」

「え、そんなのあるんですか」

「あるある」


焼き鳥などの串焼きなら、いつでも売れるだろうし、パンやクレープと合わせれば、立派な軽食屋になる。


「でしたら是非一台お願いします」



チリンチリンチリン

南町の通りに鐘の音が響く。


「ん、鐘の音?あの荷車か?」

「おい、あの荷車煙が出てるぞ、火事じゃないのか」


チリンチリンチリン


「い〜し、や〜~きいも〜お〜、焼きたて〜え〜、やき〜いも。さあいらっしゃい、ほっかほかの、焼き芋だよ~~」


チリンチリンチリン


「甘くて美味しい、ほっくほくの焼き芋だよ〜。い〜し、や〜きいも〜お〜、焼きたて〜え〜、や〜きいも〜〜」


リヤカーを引く少年が、口元に筒をあて声を張り上げ、俺が教えた売り文句を言いい、合間に鐘を鳴らす。このリヤカーの焼き芋屋は俺が子供の頃に、小さな鐘を鳴らしながら住宅街を流して売っていた、おじいさんの焼き芋屋を参考にしている。軽トラの焼き芋屋も普通にあったが、経費の違いからかリヤカーの方が、甘くて大きい芋だったので人気があった。見かけなくなって、しばらくした頃、自動車との接触事故で引退したと噂話で聞いた時は、がっかりしたものだ。


「石焼き芋?石焼き芋って何だ」

「さあ?石焼き芋って言うなら、石で芋を焼いたんじゃないか」

「そんなの美味いかあ?それに芋を焼くなら石いらなくねえか」

「だから、俺も知らないよ。あ、あれ、客じゃないか?」

「客?…女と子供しかいねえな」

「だけど、ずいぶん集まってないか」

「もしかして美味いのか?」

「子供が買えるなら安いんだろうし、ひとつ味見して美味きゃ、土産にするか」

「…そうだな、甘いもんなら子供が、喜ぶかも知んねえな」

「お〜い、あんちゃんひとつくれ」


道端にいたおっさん共が、リヤカーに引き寄せられていく。


「はい、お買い上げありがとうございます」


少年はぶ厚い皮手袋をはめると、リヤカーの荷台に据え付けられた鉄箱の蓋をあけ、箱のなかをかき回す。鉄箱からは、じゃらじゃらがらがらと音が聞こえるが、蓋は小さく中の様子は少年にしか、わからないだろう。


「お客さん、開店サービスで大きな芋にしておきますよ」


少年は取り出した芋を薄茶色くなった竹の葉で、くるりとくるんでおっさんに渡す。


「ん?落ち葉でくるむのか」

「落ち葉と言えば落ち葉ですけど、これは竹って言う植物の葉で、食べ物をくるむのに向いているそうですよ」

「へ~」


男は芋を割って片方を、連れに渡す。


「あちっ、おい、そっちの包みのある方くれよ」

「俺だって、熱いのは嫌だよ」

「あ、もう一枚どうぞ」


もめ始めた二人に少年店主は、もう一枚の葉をだす。


「おお、助かる。お、甘くてうまいな、よし俺にも二つくれ」

「ありがとうございます」


少年は芋を手早く竹の葉でくるんで、紐で縛って客に渡す。

包みには俺が用意した、真竹の葉を利用している。真竹の葉は乾燥しておけば傷むことがなく、使用時には洗って水気を拭き取るだけで柔らかくなる。前世ではちまきの包みや、おにぎりの包みで目にすることが多かった。

同じように食材を包む物としては経木(きょうぎ)という、杉や桧を薄く削り出した物があり、こちらは肉屋や魚屋などで生の切身を包むのに使われた。現代では発泡トレイにのってラップをされた肉が主流だが、昔は肉屋で何をどれだけといえば、店主がそれに合わせて切り分けて、経木に包んで売ったものだ。(経験とカンで切るので多少の誤差があるが、実測すると注文より気持ち多い)

例えるならば、経木は天然のキッチンペーパーや、天ぷらの敷紙だろうか。程よく水分を吸ってくれ、食材の臭さみも消してくれるなど、食品の包みに適しているので、生産を検討している。


「ふっふっふ、サクラ大作戦、成功だな」


旧帝国も帝都も美味さに震えるだろう。


「サクラってあの、仕込みの連中ですか」

「見慣れない形式の謎の屋台だが、客が群がっていると気になるだろ」

「流石お館様。ですが、このような売り方をしても、よいものでしょうか」

「最初の人寄せだけだよ。実際美味いし値段だって、安いから許容範囲って事で勘弁してくれよ」

「真似をしてはいけませんか」

「ハッハッハ、商売は信用が第一だ、彼らにはまだ失う物も無いが、アーキンド商店であれば、失う物がどれ程になるか。それを承知でやるなら止めないが、悪徳商法として検挙はするぞ」


お前の案なのに捕まえるのか、というツッコミはさせない。何故ならここでは俺が法だからだ。前世で何商法だか忘れたが、サクラが煽って客を乗せて、高額商品を売りつける商法が問題になってたのは知っている。でもまあ、焼き芋の一つや二つで問題なんてあるまい。


「検挙するなら、先に止めてくださいよ。いえ、もちろん店の看板に泥を塗るマネはしませんけども」

「夏になったら氷菓子や、冷たい飲み物を売るのもいいだろうな。釜を積んでいるから、肉を使った軽食屋も出来るから、以外といい稼ぎになるぞ」


焼き芋の屋台ばかり作っても、飽きられて共倒れするだけだからな。他の屋台も交えれば、客も選択肢が増えるし飽きられることも少ないだろう。それに、俺としては本命が別にある。

日本ではノスタルジックかもしれないが、こっちじゃあ最新の流行になるだろう。

次回予告。

夜の街角に灯る明かり(前)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。