僕は先輩にすねられる
「………」
「………」
先輩の財布とスマホを家に忘れてきてしまった。
それを伝えてから約1時間程経っただろうか。先輩が一切口をきいてくれなくなった。
「あっ、これも行かないのか」
昨日残した仕事の残務処理をしていた。だが、この残りの仕事。そう上手くは終わらせてくれなかった。
何度プログラムを動かそうとしても、エラーが発生しまう。
調べて色々やってはいるのだが……どうも想像通りにいかない。
「あの~先輩」
「………(プイッ)」
話しかけてもずっとこの調子だ。
何を話そうとしてもずっと無視される。
「カタカタカタ」
あと、話しかけるたびにタイピングの音が大きくなる。
それが数分間続く。うざいぐらいだ。
「いい加減話してくださいよ」
「はぁ…」
先輩が溜め息をこぼしながら立ち上がる。
いや、こっちがため息を吐きたい。
【何だよ】
「まさかの記述式」
ホワイトボードに返事を書く。
メッセージでいいんじゃないかと思ったが、言葉にすると怒りそうなのでやめておいた。
「さっきからエラーが直らないんで少し見てもらいたかったんですけど」
僕が先輩にそう言うと、僕のモニターを覗いてくる。
少し覗き込んでから先輩は僕のキーボードをぶんどる。
そして、トントンとキーを叩いた。
「あっ動いた」
先輩が少し手を加えただけでプログラムは正常に動き始めた。
「先輩なにしたんですか?」
先輩は何も言わずにホワイトボードのマーカーを取り出す。
そして、ボードになぐり書きで書く。
【文字のスペルが違う場所があった。それを直しただけだ】
「……あっここが違ったのか」
パッと見ただけで間違っている箇所をすぐに見抜いた。
こうやってすぐに見抜く力はさすがである。
「ありがとうございました」
「はぁ………」
また溜め息を吐いて、ホワイトボードに書き出す。
【プログラムのバグはすぐに見つけて直せるのに、お前のバグはどうして見つけても直せないんだろうか】
「もしかして、今日財布とスマホを忘れたことをバグって言ってます?」
【そう】
「言いすぎじゃないですか?」
いや確かに僕が悪いのは分かってはいる。分かってはいるのだが、こんなに言われることだろうか。
「それを言えば先輩が一番のバグであり、何度直そうとしても直らなかったのは先輩ですよ?」
「グッ。そ、そんなこと。というかお前が忘れてこなければ…」
「そんなことありますよね?というか、元はといえば先輩がまず人の金で賭博、宝くじ購入して、そして自分の持ち金を全部使って宝くじを購入したから、僕が先輩の懐を管理したんですよ?もうこれで分かったでしょう?すべての元凶は先輩です」
先輩が何か言い訳をしようとした。しかし、その前に僕は言論でねじ伏せた。
バグと言われたことに腹が立った。それ以上に財布とスマホを忘れたことを言い訳をし始めたことに対して腹が立った。
「確かに今回は僕が悪いですよ?ただ。元はといえばあなたが人の金で、そして自分の金で余計なことをしなければこうなることはなかった?そうですよね?」
「はい」
「というか一回座ってください」
「はい」
立っているのにすら腹が立ったので座らせる。
先輩は椅子に座り始めた。
「誰が椅子に座っていいといいました?」
「えっ」
僕は床を指差す。
「えっと、それは」
「何か?」
「………はい」
先輩は床に座る。
何も言ってないのに正座をしている。
「とにかく。先輩はいい加減お金の管理をしっかりしてください。係長や僕から金を借りていますよね?そしてそこから賭博に回して。恥ずかしくはないのですか?」
「ごめんなさい」
「係長や僕からお金を借りるのはまだ許します。ただ、それを賭博に使っている時点でいかがなものかと?」
「………はい」
「それにですね………」
今まで溜まっていた鬱憤を吐き出した。
そしてここから30分ほど先輩に対して説教を行った。
ご覧いただきありがとうございました。
次回は1週間後になります。お楽しみください。




