僕は先輩に送ってもらう
残業を切り上げて、先輩の車に揺られ帰宅している。
いつも乗っている満員電車とは違う。余裕がある空間で、座って帰れる。なんて至福だ。
「先輩ありがとうございます。何か飲みます?」
運転してくれている人には、感謝の気持ちで飲み物を渡さないと。
「いいって。お返しなら舟券で」
「前言撤回で。何もいらないですね」
「なんてひどい」
この先輩にお礼はいらないな。
すぐにそう判断する事ができた。
「とりあえずそこのコンビニ寄ろう」
「夕飯ですか?さっき買ってませんしたっけ」
「自分の飯は買ってない」
「そっか、買ったのは宝くじだけでしたね」
夕飯よりも宝くじを優先する男。これが先輩なのである。
なのに、いつも腹減った腹減ったと言いながら人の食べ物を探しにくる。
欲まみれの男である。
「宝くじが当たったら仕事辞めれる」
「当たるといいですね。来世までに」
「夢がないな」
夢なんてあってたまるものか。
なぜなら…
「目の前に反面教師がいるので」
「誰のことかな」
「あんただよ」
「だから先輩だって」
これだけ夢に負け続けている人間を見ていたら、誰だって夢なぞ見なくなる。
むしろ現実をよく見るようになる。しっかりと働いていないとこうなるんだなと。
少し話している間にコンビニ到着していた。
「先輩。とりあえず財布をよこしてください」
「なんでだよ。俺の財布だぞ」
「財布の管理をするために」
また、自分の財布の中身をすべて宝くじやら何やらに使ってしまう可能性があるので、先に財布を奪っておいた。
僕は優しい。先輩の身を案じてあげたのだ。そんなことしても、僕が見ていないところで色んな賭け事に使っていそうだが。
「でも奪ったところで無駄だ」
「…!?」
財布の中身がないだと…
「気づいたようだな。財布に金がないことを!」
「そういえば…!」
「そう。俺は財布の中身をすべて宝くじに変えてしまったのさ!」
「クッ…忘れていた」
すっかり忘れていた。この人がとんでもないバカだということを。
5,000円をそのまま宝くじにしてしまっていたということを。
思い出して再度呆れてしまった。
「これで俺の支払いを止めることはできないのさ!」
「とりあえずスマホを寄こしてください」
「えっ」
「キャッシュレスもダメです」
キャッシュレスは現金よりも危険である。
「ちなみにクレカ入ってる」
「あなたは絶対にクレカを使ってはいけない」
「そんな言われ方する?」
クレカなんて絶対使わせてはいけない。こんなお金の使い方をする人間には絶対に。
みんなもお金は計画的にね!
「リボ払いなんてしてないから」
「本当に気を付けた方がいいですよ。色々」
「一応ギリギリ支払えてるから」
「ギリギリの時点でやばいですよ。とりあえずこれは僕が預かります」
先輩の懐を守るため、今だけ懐の管理をしている。
今だけしても無駄なのは重々承知しているが。
「とりあえず買いに行きましょうか」
僕たちはコンビニに入り、各々好きなものを購入した。
僕はさっき買ったカップ麺などがあるので、ちょっとしたスイーツを買った。
先輩は腹が減ったといい、カップ麺1つ・のり弁当1つ・おにぎり2つ・プリン1つを購入した。
「先輩食べすぎじゃないですか?」
「腹が減りすぎてる。今日なら食べれる気がする」
「そんなこと言って食べられないやつですよこれ」
「いや絶対いけるね」
そう言いながら買い物かごに入れていた。
後日お昼休みを一緒に食べていたら、今日買ったカップ麺を食べていた。
僕は買い物かごをレジに持っていきお会計をした。
全部で1,500円ぐらいだった。やはりコンビニの商品はかなり高くなっているのを肌で感じる。
「買ってきましたよ~」
「おっ、ありがとうな。今度金渡すわ」
「まぁ今日はいいですよ。仕事手伝ってもらったし、送ってもらっていますしね」
「まじ!?じゃあ遠慮せずもらうわ」
ここで遠慮しないところさすが先輩過ぎて、もはや驚かない。もう呆れている。
実際のところ色々お願いを聞いてもらったし、家まで送ってもらっている。色々感謝はしているので、形としてお礼をしたという形だ。
「タダ飯助かるぜぇ~この浮いた分何に賭けよう」
「やっぱ奢るのやめようかな」
この喜び方をされると奢る気が失せる。後半部分を心の内に秘めておけないのだろうか。
「その浮いた分を、別の生活費に使ってください」
「えっ?賭博…」
「違います」
本当にどうしてやろうかこいつ。
自分の食費とかに充てようとか考えないところがすごいところだ。
「でも最近生活費(馬券代)を減らすようにしてるよ?」
「本当ですか?」
(生活費)馬券代
旧:50,000円
新:30,000円
「減りましたね。それでも多い気はしますがね」
「そうでしょ」
「でもなんか、賭博代と生活費(馬券代)を別で捉えてましたよね?」
この人は賭博代と生活費(馬券代)を別々で勘定に入れている。
なぜかは知らない。ただ、二つ合わせて90,000円使っていたのだ。
「そっちの賭博代も減ってるんですよね?」
「そっちはね」
賭博代
旧:40,000円
新:60,000円
「プラマイ0って…何も変わってないじゃないですか」
「浮いた分を別で充ててるだけだよ」
「…先輩」
「ん?」
「帰りましょうか」
「だな」
こんな夜に深いことを考えるのはやめた。
遅くなって申し訳ございません。
ご覧いただきありがとうございました。
次回は1週間後になります。お楽しみください。




