先輩の生活費
先輩は机に突っ伏したまま動かない。
「先輩?そろそろ起きてください」
「寝てねぇよ」
係長にしごかれてから見事にやさぐれている。
先ほど、金銭関係でめちゃくちゃ怒られてから見事に凹んでいるようだ。
「先輩…自業自得っすね笑」
「なに笑っとんねん」
「これってどっちが悪い?」
明らかに先輩の方が悪いのに、なぜ被害者面されなければならないのだろうか。
こっちが被害者なのに。
「確かに俺が悪いよ?でもさ、なんか1万円ぐらいお前に多く返しているはずなんだけど気のせい?」
「う~ん。利息ですね」
「1日でこんな利息、理不尽すぎる」
「まぁ返してもいいんですけど」
「じゃあ早く返してよ」
「いやでも係長から、先輩がまた金をせびったら言ってくれと言われてるので」
被害を受けた係長がかなり目を光らせるようになった。
特に金銭面で。
今まで仕事はしっかりとやってくれているし、自分も助けてもらっているから多少の金銭の貸し借りは許していたという。しかし、後輩にも借りてそれをギャンブルに使っているということで怒り心頭。そして、見事に係長の管理下におかれたという。
「そのぐらい黙ってくれよ」
「さすがに、ギャンブルに使われたのは腹が立つので」
あと、返してと言われたのが一番腹が立つから。
それに係長にチクれと言われたら従わずを得ない。なぜならサラリーマンでもあるから。
「とにかく今度何かお昼を何回か奢るぐらいで手を取りましょう」
「それならまぁ…いいか」
覚えてたらですけどね…
「そしたら、早速今日から奢ってもらおうかな」
「給料出たばっかですよね」
「どちらにせよお金はないし、忘れる前に奢ってもらおうかなと思って」
僕の計画が崩壊した。
給料日なのに人に奢ることになるとは思わなかった。
というかなぜこんなにも金がないのだろうか…やっぱギャンブルしかないよな。一応聞いてみるか。
「先輩、普段何に金使ってるんですか?」
「いつも?生活費だよ」
「嘘をつかないでください」
そんな見え切った噓つかれたって、僕には分かっている。
「え?だって家賃と食費と水道・電気とか、あとは雑費」
「一度、この紙に内訳と金額を書いてみてくださいよ」
どんな使い方しているのか気になってきたので、書いてもらうことにした。
「んーっと」
家賃:70,000円
食費:40,000円
水道光熱費:13,000円
通信費:15,000円
雑費:25,000円
貯金:30,000円
合計:193,000円
「こんなもんかな」
「家賃補助が30,000円あるから、実質163,000円ですね」
これなら先輩ぐらいの収入があれば、割と余裕があるぐらいなのだが…
「娯楽費は?」
「え?10,000円ぐらい?」
「嘘をつくな」
娯楽費でその金額は嘘でしかない。
「嘘じゃないって。たまに飲みに行くぐらいだから」
「じゃあなんでそんなにお金がないんですか?」
「なんでだろうな。ただ生きているだけなのに」
「ちなみに賭博代は?」
「あ~それはな」
賭博代:40,000円
「思ったより使ってないんですね」
「まぁ、それなりにセーブはしてるよ?俺も考えてるから」
「プライベートの計画性は信用できないです」
仕事の計画性はしっかりとしているのに。
プライベートに関してはクズである。
「だって、賭博で倍率2倍のに賭けたら倍の80,000円だよ?そしたらプラス」
「でも、そのお金を賭けるんですよね?」
「もちろん」
「つまり収支は?」
「ゼ~ロ」
「ギャンブラーがよ」
とにかくひどい使い方をしている。
これがギャンブル依存症の末期症状か。
「他にはないんですか?」
「え~と舟券の賭博代でしょ。あとは馬券という生活費」
「馬券は生活費ではありません…え、待って。馬券の費用は別なんですか?」
「うん、これはね」
生活費(馬券):50,000円
「ふざけてんのか」
「俺一応先輩なんだけど」
賭博だけで90,000円使っていやがる。実際、当たった分も賭けているってことはもっと使っているんだろうか。
完全にこれのせいで金がないだけだろこれ。
というか絶対にこれ以上使ってるだろ。じゃなきゃこんなに毎日金が無い無い言わない。
「だって賭博代でこんなに使っていたら、そりゃ金欠になるに決まっているじゃないですか」
「ある意味、これも貯金だと思ってるんだけど」
「んなわけねぇだろ」
「だから先輩だって」
賭博なんて、当たらなきゃ金をドブに捨ててるようなもんだ。
当たっても、その金を使っているのであれば外れているのと同じだ。
「大丈夫だって。生きてればどうにかなるよ」
「人の金をギャンブルに使っている時点で、人の尊厳は死んでいますよ」
プライドというものはないんだろう。後輩に金を借りている時点でないんだろうな。うん。
「おい。そこのギャンブラーちょっと」
「先輩、係長から呼ばれてますよ」
「あの呼び方どうにかなんないかな」
先輩は係長に呼ばれた。ギャンブラーという呼ばれ方で。
「でもな~」
僕は係長に呼ばれた先輩を見る。
係長は分からないところがあったのか先輩を呼んだらしく、色々教えていた。
細かい内容を色々教えているらしく、かなり話し込んでいる。
「仕事だと、かっこよく見えるんだけどな」
普段がひどくてたまに忘れるが、仕事だとほんとに頼れる人である。
僕が一つ悩んでいる間に二つ解決しているような人である。
こないだのスパゲッティコードもそうだが、プログラマーとしての能力が非常に高い。というか、会社員としての能力が高い。
コミュニケーションもしっかりとしているし、”仕事の”能力が高いからこそ上司からの評価も高いのだろう。
「あっ話が終わったのかな?」
先輩は話が終わったのか、係長と楽しそうに話している。
そして、係長の肩を揉んでいる。その後手を擦り合わせている何やら話し込んでいる。何かせびっているのか?
だんだん係長の顔が険しくなってきた。
係長がまた先輩の首根っこを掴んで、別室に連れていかれた。
「…コミュニケーションがしっかりしているは嘘かも」
その後、先輩はこっぴどく叱られたという。
ご覧いただきありがとうございました。
次回は1週間後になります。お楽しみください。




