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僕と先輩の過去

入社してまだ一週間も経っていないぐらいのときの話だ。


『お前何回こっちに聞いてくるんだよ!!』

『すみません…すみません…』


僕は当時の教育係にめちゃくちゃ怒られていた。

教育係からお願いされた仕事を行っていたのだが、当時何が何だかよく分からないので色々その教育係に聞いていた。

最初は不愛想ながらも話を聞いてくれていた。ただ、何度か聞いているうちにどんどん不機嫌になっていったのだ。


『すいません、また…』

『お前何回目だ?』

『えっ?』

『お前何回こっちに聞いてくるんだよ!!』


そして回想の最初に戻る。

同じことを聞いているわけではなかったのだが、何回も聞いてこられるのが腹が立ったのだろう。


『少しは自分で考えろよ!』

『はい…すみません…』


そこから僕と教育係の距離がどんどん離れていった。

僕はわざわざ聞かないように色々自分で調べながら行っていた。何ならその教育係に聞かずに他の人にこそこそと聞いていた。

そして入社から一か月経ち、職場にようやく慣れてきたある日。


『お前あれできたのか』

『えっ?あれって?』

『4/25ぐらいにお願いしたやつ。今日提出だぞ?』


教育係はそう僕に言ってきた。

しかし、この人がお願い仕事は元々5/12で提出期限を設定されていた。

それなのに、5/2の今日に提出と言ってきた。

そのため、仕事自体は全然進んでいない状態であった。


『全く進んでいないです……』

『なんだと!あ~あ今日提出なのになぁ!』


教育係はすごくニヤニヤした顔をしながら僕にプレッシャーをかけていた。

ただ、当時の僕は提出日が思っていた日付と違っていたこと、それなのに全く仕事が進んでいなかったことに対して焦っていたため、教育係がニヤニヤしていることなんか気付いていなかった。


『お前どうしてくれんだ!期限も守れねぇなんて社会人失格だな!』

『すみません…すみません…』


僕はただ頭を下げることしかできなかった。

そうやって怒られてるとき。


『つまらない噓ついてるんじゃないよ』


そう声を掛けてくれた人がいた。

それが先輩である。


『うるせぇなお前なんだよ。何も知らないくせによ。こいつの教育係は俺なんだよ』

『そうかもしれない。ただ、提出日はお前が間違ってんだよ』


先輩がそう指摘すると、教育係はギクッと体を震わせる。

しかし、そこでは負けずに反論する。


『提出日は口頭で伝えてあるんだよ。それを聞いてないお前がなんで知ってんだよ』

『これを聞いてみろよ』


先輩はスマホを取り出し、録音されていた音声を再生する。


【この仕事5/12までによろしく~】

【は、はい】


先輩は確実な証拠を教育係に突き付けた。


『これでも今日提出日なのか?』

『……ごめん!間違えてたすまん!』


先輩に指摘されてから、手の平を返すように謝ってきた。

さすがに焦っていた僕でもここで気づいた。

この人はただ嫌がらせで今日提出日と言ってきたのだ。

僕は怒りがふつふつと湧いてきた。

ただその時。


『てめぇふざけんじゃねぇぞ!新入社員いじめて何が楽しんだこの野郎!』

『いじめてなんか…』

『てめぇがパワハラしてる証拠は挙がってんだ!』

『そんな……』


僕はこの教育係から他にも嫌がらせを受けてきた。

それをパワハラとして先輩が動画等を撮ってくれていた。


『これは上司に提出する!』

『それだけは……!』

『うるせぇ!パワハラするやつなんかと一緒に仕事できるかボケ!』


先輩はその教育係を連れて上司の所へと向かった。

僕もパワハラの被害者として連れてかれた。

そこで僕は今まであった出来事をありのままに話した。

それを聞いていた、部長は、


『辛い思いをさせてしまって申し訳ない。あとはこちらで対処する。今日は帰ってもらっていいよ』


と言ってくれた。

帰って良いとは言われたが、先輩に一つ感謝を伝えたいと思った。そのため、終わるまでしばらく休憩室にいた。

そして話し合いが終わったのか、会議室から先輩が出てきた。


『あれ?まだ残ってたの?』

『その…これだけは伝えておきたくて…ありがとうございました!』

『わざわざ良いのに~。それよりもごめんな。気付いていたのにもっと早く言ってやれなくて』


先輩はずっと前から気付いてくれていた。

ただ、証拠を集めるためにわざと泳がせていたという。


『証拠がないとどうしようもなくてな』

『……ぐすっ』

『えっ!?泣いてる?ごめんね!?』

『違くて…安心したというか、なんというか』


自分が思っていたよりも心にダメージを受けていた。

ずっといつ辞めようか。社会人ってこんななのか。自分が弱いだけか?とか考えていて、やはりやつれてはいたと思う。

ただそれに気付いて守ってくれた人がいるということが嬉しかったのと同時に、すごく安心したのだ。


『とりあえず明日から教育係は俺になるから。ゆっくりでいいから覚えていこうな?』

『はい……!』


そして、次の日から先輩が僕の教育係として色々なことを教えてくれた。

先輩は教え方がとても分かりやすく、自分の覚えるスピードも格段に上がった。

あの日先輩が僕を助けてくれた日から、僕は先輩を尊敬するようになった。

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