↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/62

ロシアの脆弱な脇腹

前書き

ウクライナの泥沼、中南米や中東での手駒の喪失。プーチンすら見誤った世界線の狂いは、ロシアの「南の脇腹」たる沿海州へ向けて静かに触手を伸ばしていた。

かつてロシア帝国を疲弊させ、革命の引き金となった東の島国。その「戦力そのものは無視できるはずの国」が、いまや何をしてくるか分からない最大の不気味さとして、モスクワの独裁者の脳髄を侵食し始める。

モスクワ、クレムリンの奥深く。重厚なオークのデスクの前で、最北の独裁者は深い疲弊とともに、一枚の極東地図を睨みつけていた。

防弾ガラスの向こう、赤の広場には冷たい雨が降っている。だが、独裁者の脳髄を焼いているのは、ウクライナの凍土よりもさらに遠く、東の果てから漂う「不気味な気配」だった。

この時点で、ロシアの国家戦略は完全に狂い始めていた。

ウクライナとの戦闘は泥沼化し、中朝国からの全面的な弾薬・兵備支援を受け、さらには北朝鮮の歩兵戦力まで前線に融通させておきながら、未だに決定的な戦果を挙げられない。そればかりか、中南米の反米ゲリラや、中東でアメリカを揺さぶるはずだった手駒(プロキシ)たちが、まるで駆動油を抜かれた機械のように、同時多発的に「干上がってすり潰されている」という不可解な報告が相次いでいたのだ。

(……これは、一体何が起きているのだ?)

プーチンですら、世界を動かすターニングポイントを完全に見誤っていた。

アメリカには巧妙なSNS情報戦を仕掛けて世論を分断し、EUには天然ガスのバルブと難民の波で揺さぶりをかけ、機能不全に追い込んだはずだった。西側諸国は内側から腐り落ちていく――その完璧なはずのシナリオの裏で、なぜかロシア自身の「南の脇腹」たる沿海州が、音もなく食い破られようとしている。

あろうことか、極東の国境線を越えて、あの東の島国が牙を剥いてくるかもしれないという、およそ正気とは思えない軍事インテリジェンスすら浮上し始めていた。

あの国は、かつて日露戦争において無敵を誇ったバルチック艦隊を全滅させ、ロシア帝国を極限まで疲弊させてロマノフ王朝崩壊とロシア革命の端緒を作った、忌むべき因縁の国だ。

現代の自衛隊の「正規戦力」そのものは、我が国が誇る数千発の核兵器や圧倒的な軍事規模に比すれば、無視できるレベルのはずだった。だが、今の日本(、、)は何をしてくるのかが全く分からない。彼らが仕掛けているのは、既存の軍事ドクトリン、現代のハイブリッド戦の教科書にすら存在しない、国家の枠組みそのものを無視した「何か」だった。

ウクライナという正面の敵に加え、東から迫る正体不明の影。最北の独裁者は、その冷徹な仮面の下で、致命的な恐怖をまた一つ肥大化させていた。

神の視点(あるいは秋田の居間)(肉付け版)

独裁者がどれほど優秀な情報機関(FSBやSVR)を動かし、どれほど衛星写真を解析させようとも、その原因が**「日本の秋田のゴミ屋敷で、のんだくれた男が引いた一本の出汁(、、)」**にあるとは、地球上の誰も気づいていなかった。

阿久津博の仕掛けた『お掃除』は、日本国内の利権や中朝系ネットワークを叩き潰しただけでは終わらない。バタフライエフェクトのように、世界の裏物流を根底から狂わせていた。

中朝国がロシアに莫大な武器・弾薬を供給するサプライチェーン。その決済に使われていた闇の資金洗浄(マネーロンダリング)ルートには、多くの「半島由来の日本の裏組織」や「歌舞伎町やミナミで動くクスリの密売資金」が、極めて重要なドサクサとして混ざっていたのだ。

しかし、第一部において、詩織おひいさまが静かに下した「あんな汚いもの、お掃除しちゃってください」という厳命。

これにより、日本国内のクスリの密売人と中朝系組織は、文字通り「全滅」を迎えた。代わりに日本の裏社会の覇権を握ったのは、博の手回しによって現役復帰を果たした、筋の通った昔気質のアニキたち。彼らは「シャブと外道の外貨稼ぎは御法度」として、中朝国への資金還流を完全に遮断した。

日本の夜の街から吸い上げられ、中朝国を経由してモスクワへ流れるはずだった、年間数千億円規模の裏資金のパイプが、根元からバきりと折れた瞬間だった。

資金が止まる。

すると、中東のテロ組織や、中南米の反米ゲリラへ支払われるはずの「報酬(インセンティブ)」が滞る。

傭兵たちは武器を置き、ゲリラは霧散し、ロシアの手駒たちは勝手に干上がってすり潰された。

すべては繋がっていた。

クレムリンの独裁者を戦慄させているのは、戦略核でも、最新鋭のステルス戦闘機でもない。

秋田の川反の片隅で、冷奴を突きながら「あいつら、勝手に転んでくれないかなぁ」と呟く、一人の男の冷徹な計算、ただそれだけだったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。