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【60】あたし達の未来に向かって

 あたし達は王国からトリックススターズ・スプレンデンスという称号をもらえる事になった。


 王国の武官アルミナの説明だと、これから王様と謁見するんだそうな。その時の挨拶の仕方とか教わったけど、王様が魔戦士組合員に会ってくれるってちょっと驚いた。



「王の間へは武器は兵士以外は持ち込めませんので、ここに置いて行って下さい

 それではこちらへどうぞ」


 あたし達は少し緊張しながらアルミナの後を追って歩いた。

 途中何十人もの兵士が警備している通路を通り、一段と華々しい扉を通って王の間へ入った。

 煌びやかな王の間には騎士らしき者や、軍の将校の制服を着た者が左右に分かれ、あたし達に注目していた。

 軍服の中にはリドナのテントに居たアンハイド将軍や、ドラド村の近くで演習をしていたサルファー将軍も居た。サルファー将軍の部下のあの岩二人がここに居ないのがせめてもの救いだね。

 あれから特に言わなかったけど、あたしとクリーダは常に付けミミと付けシッポを付けたままになっていて、それらは今もマイペースに動いているよ。

 まぁ、身なりについて特に何も言われなかったし大丈夫じゃないかな?


 あたし達は階段の上に座る王様の玉座の前に横に並び、アルミナに言われた通りに跪いた。

 あたし達を案内して来たアルミナはと言うと、なんと王様の玉座の右横に立っている。その玉座の左側にもアルミナと同じ格好をした別の武官が立っていた。

 玉座の横に立っているって事は王様の警護なのか、もしかしてアルミナって兵達の中でもかなり偉い人なんじゃないか? ただの案内人だとばかり思ってたんだけど。



「私がこの国を治めるマトラである、本日は皆よく来てくれた」


 玉座に座るマトラ王が最初に挨拶した、広場の銅像はもっと若かったからあれは昔の姿とかなのだろうか? このマトラ王はそこそこ高齢に見えるな。



「では、これより称号の授与を行います

 名前を呼ばれた者は立ち上がって下さい」


 アルミナが進行役をするのか、偉い人も色々と大変なんだね。



「王国指名、ソーサラー、スフェーン・アウイン

 王国指名、プリースト、シンナバー・アメシス」


 スフェーンとシンナバーは「はい」と返事をしてその場に立ち上がった。



「王国ラボラトリー指名、バーサーカー、ヘリオ・ブラッド」

「はい」


 ヘリオが名前を呼ばれて立ち上がった。

 へぇー、ヘリオは王国ラボラトリー指名なのか。ラボって事は魔法とか武器とか作ってる所かな? 横文字って辺りがちょっと胡散臭い感じがするけど。



「王国軍指名、科学魔導士、クリーダ・ヴァナディン」

「はい」


 クリーダはサルファー将軍に指名されたんだろうか、ルクトイ30体を壊されて立場なかっただろうから、クリーダが特別だって事に出来れば丸く収まりそうだし。



「そして、今回の選考からの選出ですが」


 ……っと、最後はあたしか。


「小細工魔法士、ルビー・サファイヤ」

『んなッ!?』


 その名前を呼ばれた事にあたしは驚いてしまったんだ。何故なら、その名前はあたしが組合に登録していた名前ではなかったからだ。そればかりか……。



「ルビー・サファイヤ、どうしました? 起立してください」


 アルミナは不思議そうな顔をして、あたしに規律を促した。


『は、はい』


 ふと隣にいるクリーダを見ると、目を丸くしてあたしを見ている。そりゃそうだ、今まで違う名前をあたしの名前だとずっと思ってたんだからショックだろう。あたしはクリーダに苦笑いして見せた。

 どうやって王国がこの名前を知ったかは分からないけど、これがあたしの本当の名前なんだ。

 スフェーンとシンナバーはニヤニヤしてあたし達の様子を楽しんでいた。



「ルビー・サファイヤ、気分でも悪いのか?」


 なんと、王様直々にあたしの名前を呼んだ、驚いて王様を見上げたら……。


「ププゥーーッ! うわぁーはっはっはっ! こりゃ愉快だ!」


 いきなり王様が吹き出して大笑いし始めたよ。なんだなんだ!?


『んにゃん?』


 何が何だか分からずこう言ったら。


「ブッ! ぶわーーーッハッハッハッ!」


 更に大爆笑到来! 一体何だってんだ。あたしはポカーンとした顔でマトラ王を見ていたよ。


「つけミミやつけシッポ……それに喋り方まで、

 何から何までコランド・サファイヤにそっくりだな」

『えッ!?』


 王様が言った「コランド・サファイヤ」はあたしのお婆ちゃんの名前だ。でも何で王様がお婆ちゃんの名前を知ってるんだ!?



「コランドは私の古い友人でな、サファイヤは私が与えた姓なのだ

 ルビー、お前の事はコランドから聞いていたぞ?

 余り身内の者を心配させるのは感心せんな」


『うぅ……はい……』


 お婆ちゃんが王様の友人で、サファイヤが王様のだって!? どういう事かさっぱりわからない。あたしは王様に叱られて軽いパニック状態に陥っていた。



「王様、進行してもよろしいでしょうか?」


 進行を止められたアルミナが困った様子で言った。


「あぁ、止めて悪かった、続けてくれ」


 そう詫びる王様はまるで叱られた子供の様だったよ。



「以上の者に、トリックススターズ・スプレンデンスの称号を与えます

 この称号の効力により特例任務の参加、軍を含む国家の戦略への参加の制限も解除される事になります

 この称号に恥じない行動を行う事、それだけは王国からの命令とさせて頂きます」


 なにこの称号の威力!? 特例任務だけじゃなく軍や国家の作戦にも参加出来るんだってさ。重要な 戦略に参加させるってならきっとそれなりの調査はされたのだろう、そりゃ名前が割れちゃう訳だ。

 そして、あたし達はこの称号と100万丸の他に、新しい組合員のバッヂをもらった。デザインは全く同じだけど、ゴールドのふちがされてて少し立派なバッヂだったんだ。




「ルビーさん、今回は少しお仕置きをしなければならないみたいですね」


 ふてくされた顔のクリーダが、横に座っているあたしの腕をギュッと掴んで言った。


『うぅ……ごめんなさい……』


 あたし達5人は、あたしやスフェーンやシンナバーの生まれ故郷の「カイナの村」に向かって走っている乗り物の中に居た。

 運転はまたヘリオに任せている、今後はずっとヘリオに任されそうな気がするけどね。

 その横にスフェーンとシンナバーが座り、そこには二人で楽しそうに話をしてクスクス笑ういつもの様子があった。

 あたしはと言うと、後ろの席でクリーダのお仕置きを受けていた。具体的にはぬいぐるみの様に抱きかかえられると言う罰なんだけどさ。



「何故わたしにちゃんと名前を教えてくれなかったのですか?」

『だって、全てを生まれ変わるつもりだったんだんにゃん』


 そうなんだ、新しい自分に生まれ変わるつもりで新しい名前を名乗ったんだよ。確かに最初はね。



「本人にはちゃんとした理由と覚悟があったのよ、だからいいんじゃなーい?

 おチビたんもこの短期間にずい分成長したよねぇー」

「えぇ!? ヤバイじゃない! おチビに抜かれる! って思ったけど奇跡が起こらない限りないか

 クイーンオブおチビの称号は伊達じゃないねッ!」


 大部分はあんたらのお陰だけどな。


『シンナバーも成長すべき箇所はあるんじゃないのかんにゃん?

 例えばその、少年的ナイスバディとか』


 負けじとシンナバーに反撃を仕掛けるあたし。さぁどう出るんだ? カチンとか来るのか?


「えーッ!? これはあたしのチャームポイントなんだよッ! 例えおチビのお願いでもこれだけは譲れないねッ!」

「プッ、シンナバーはそのままでいいのよぉー? チャームポイントなんだからぁ」

「でしょでしょー!? 流石あたしのスフェーン様は分かってるねーッ!」


 この二人……ホント大嫌いだよ。いい意味でだけどね。


「そういう事なら、ルビーさんもこのままでいいですよ

 でも、帰ったら登録書類は正しく修正して下さいね」


 クリーダはそう言うと、あたしをぎゅっと抱きしめた。あたしの頭の上にある付けミミがバサバサっと音を立てて動いていた。


「……なぁ、ところでオレってカイナの村の方向わからないんだけど?」


 カイナへの道筋を案内されず一人置いてかれているヘリオがぼやいた。


「ベイカと反対の東の方向に向かうんにゃん」


 あたしはヘリオの背後からアバウトに東の方向を指差してあげると、ヘリオは仕方なさそうにその方向へ乗り物の行き先を変えた。

 草原を走る白い花の形をした乗り物は、デコボコした道をカイナの村に向かって走って行く。

 その走りはまるで、あたし達が今後経験して行く未来の様にも思えた。


 あたしの名前は「ルビー・サファイヤ」、小細工魔法を使う万能魔法使いだ。


小細工魔法士は今回で最終回とさせて頂きます。

途中ネガな部分が多く、欝な気分になった人も居るんじゃないかとも思いましたが、どうしても入れたかった設定でした。

ルビーさんはちょっと個人的な事情による所の特別なキャラなので許してください。


シリーズはまだまだ続けて行きたいと思っていますので、次回作もぜひご覧頂ければ幸いです。

次回はとにかく笑える内容にして行きたいなと思います^^。


最後まで読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m


~~設定資料~~

*トリックススターズ


クリーダ・ヴァナディン:科学魔導士、魔法と科学を合わせた魔法使い、ルビー大好き

ルビー・サファイヤ:小細工魔法士、お婆ちゃんがいる、両親はもう居ない、飼い猫の名前はダイヤ、ヘリオの剣術を会得、真っ赤な両手剣を手に入れた

シンナバー・アメシス:プリースト、ランク6、家が教会、父はフェルドスパー・アメシス司祭、スフェーン大好き、片手棍二刀流を使いすぐ前へ出て行く最凶のプリーストとして悪名名高い

スフェーン・アウイン:最強のソーサラー、ランク8、ルビーとは昔色々あったらしい

ラピス・ラズリ:(科学魔導士に登場)伝説の勇者クラス、ナイト、体内から常に発生する聖なる光はあらゆる攻撃を無効にする。魔戦士組合には入っていない、大男

ヘリオ・ブラッド:最強クラス、バーサーカー(本人はファイターと言いたい)、ランク10、ルビーに一目惚れ、巨大な両手剣を使う、細身、長身



*その他の戦士

エルバ・パイロモル:銃士、ランク9

ミメット・アズ:召喚士、ランク8、300種類の召喚が可能、得意な召喚はエキドナ(魔力の続く限り傷付けられないと言うが)

オプテーゼ:ソーサレス、通称爆裂魔導士、スフェーンに憧れて魔法の研究をしている


*その他


・ナボラの町

オーピメント・テン:町なのに市長、司祭(後に国際親善の責任者として司祭長に)、通称テン市長


・ドラド村

ベニト:いたずらっ子の少年

アンドラ:ベニトの母、父親については事情あり


・カイナ

フェルドスパー・アメシス:シンナバー・アメシスの父、教会の司祭

コランド・サファイヤ:ルビーのお婆ちゃん、小細工魔法士


・リドナの街

突然変異の魔物の討伐作戦の地、マトラの首都に近く、建物も大きく栄えている


・マトラ王国

アルミナ:武官

マトラ王:コランド・サファイヤの古い友人、サファイヤと言う姓はマトラ王がコランドに与えたと言う


*名称・お店


ダック・ドナルド:ハンバーガー屋

センタッキー:フライドチキン

シスタードーナツ:ナボラの町に本店のあるドーナツのチェーン店、ヴェーロンのパン、ジョーボレー・ヌボー(ワイン)を販売


*兵器


ルクトイ:10メートルを超える生物兵器、大きな目が主砲、小さな目多数は謎


*軍

サルファー将軍:階級は准将、ドラドの近くの演習場の軍の代表、ルクトイ30体をクリーダに消滅させられた

岩2人:(中佐とか少佐あたりでいいや)たまに2人ともオカマ言葉になる、常に2人はシンクロしている

アンハイド将軍:階級は少将、突然変異の魔物討伐の時の将軍、本屋の店主が似合いそうな顔、小柄

アンモチン大佐:アンハイド将軍の部下


*精霊魔法

コンプレッション・エクスプロージョン:爆裂魔法、半径10数メートルが吹き飛ぶ

ソニック・トルネード:通常巨大なトルネードを小さく凝縮して超高速回転で破壊力抜群

エレクトリック・バースト:雷魔法、超高温の光の柱、スフェーンが使うと完全電離プラズマ化が可能

次元の膜:土と水と氷の魔法を組み合わせ、いくつもの工程を得て引き起こせる重力波を更に加速させ、11次元中のどれかの次元の膜を開く手間のかかる魔法


*科学魔法

プラズマ:二億度の紫に煌くプラズマを放出

黒っぽい丸い玉(名前がない):数メートル~の薄暗く透き通った玉、触れると真っ黒に変色し光の速度を超えた超重力で潰れる

核融合に至る光の玉:膨張の後、核分裂を起こし、そのまま4億度を発する核融合に至るクリーダの切り札(放射能はナシと言う方向で…)


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