第十話 宮崎琴音(3)
本来事故に合う日を回避しても結局死んでしまうという考えたくもない状況が訪れてしまった。こうなってくると話は一気に変わってくる。
それは根本的に自分と宮崎さんが仲良くなってしまうという分岐によって生じているかもしれないという可能性が出てくるからだ。
チャンスはあと2回しかない。どこまで戻れば宮崎さんは死なないようになるのか。宮崎さんの家の前で断ったらどうだろうか。しかし何か違う気もする。その前だとオフ会自体だが、そもそもオフ会が行われなかった場合はどうだろうか。その場合は宮崎さんとはただのクラスメートというだけの現状維持なので大丈夫に感じるが……。
考えを巡らせてみるが考えてどうこうなることではない。まだ2回もチャンスはあると考え、後悔しないための行動をとることにした。
「それで、きっと私一人では無理だと思うんですよね。協力し合い共に高みを目指していけるような……そんな人を……パートナーと呼べる人を……ずっと探していたんです!」
戻った先は宮崎さんの家の前だった。どうしてもこれ以上前に戻る気にはなれなかった。ここまでお互いを知り、仲良くなったという状態をゼロにしたくはなかった。
「ごめん、パートナーの話の前に少し俺の話を聞いてくれる?」
「えっ、なんでしょうか! なんでも聞きます!」
なんとしても死んでしまう未来を変えなければならない。意を決して言葉を紡いだ。
「いきなりとても変なことを言うわけだけど……信じてほしいことがあって……」
「うんうん」
「俺はすでにこの状況が3回目で……過去をやり直しに来てるんだ」
「……え?」
前置きはしたが当然すんなりと信じてもらえるわけはない。
「言いにくいんだけど1回目はパートナーになるという返答を少し待ってもらうことにしたら次の日交通事故で宮崎さんは死んでしまった。2回目はパートナーになると言って次の日外出させないようしたらその次の日に死んでしまった」
何か少しでも信じてもらえそうなエピソードはないか……そうだ。
「ちなみに少し考えさせてほしいと言ったときは、明日10時に学校近くのあかしあ公園集合と言われたんけどどう?」
黙って聞いていた宮崎さんの表情が一瞬はっとした。
「今度こそ……どうやったら今度こそハッピーエンドになれるか。一つ思いついたことがるんだけど……言ってもいい?」
「はい、大丈夫です」
少し身構える素振を見せた。
「宮崎さんが亡くなった時、本当に悲しくてやばかったんだ。考えた結果もう一歩先へ行くことを思いついた。パートナーにはなる。でもパートナーだけじゃなくて……俺と付き合ってください」
人生で初めての告白だ。手汗が半端ない。宮崎さんはまったく予期していなかったようで突然の告白に傲然としている様子だったが、すぐに先ほどと同じ笑顔を浮かべた。
「えぇと……私達まだ全然お互い何も知らないけど……でもそれだけじゃないっていうか……そういうの関係なく上手くいくような気がします! だからこちらこそよろしくお願いします!」
俺の突然の告白に彼女は頷いてくれた。
彼女を死なさないためにはなんとなくこれしかないと思った。注意を促すため未来で起きた出来事を話し、もっと近くで守れるように彼氏になる。
死なせたくないという思いも当然あるが、もちろん俺自身が気付けば彼女のことを好きになっていたという部分の方が大きいかもしれない。
その後、未来での出来事を詳しく話した。この後もしばらくは何が起こるかわからないので充分に気を付けるように注意を促し、しばらくはあまり外出しないようにお願いした。
本心はわからないが、「彼氏の言うことは聞く系の女子なんです!」と元気に約束してくれたので今日のところは解散することになった。
冷静に考えると人生初めての彼女がこうもあっさりできるとは思ってもいなかった。転生前の人生はなんであんなにも上手くいかなかったのか、とりあえず積極的に行動しないといけないんだなというのを改めて感じた。
明日からまた忙しい日々が始まる。今度こそ絶対に守ってやるという決心を固め今日のところは早く寝ることにした。
次の日、一応お悔やみ欄を見るが宮崎琴音の名前はなかった。すっかり確認するのが癖になっているらしい。
テレビをつけて朝のニュースを見ると、ふと見覚えのある街並みが映った。どこだったかなと記憶を辿ろうとしたがすぐにその場所を思い出し、その場で立ちすくした。
『朝5時頃住宅街の一軒家で火災があり、焼け跡から住民と思われる遺体が発見されました』
宮崎琴音の名前がテロップに表示された。
俺は運命に負けたわけだ。全知全能の神よ、一体どうなってるんだよ。次出てくることがあれば俺の中から抹殺してやるよ。
本当に短い幸せだった。チャンスはもうあと1回しかない。次は間違うことができない。戻るべきところはここしかなかった。
目を覚ますとパソコンの前にいた。日付を確認するが2週間程前まで戻っていた。デスクトップを見るといつものゲーム内のチャット画面だった。
サイコカナメ:こうやっていつまでもこの三人で遊んでたいね~
流奈ルミナス:そうですね
サイコカナメ:カザハラさんは今後忙しくなったりするの?
いつも通りの他愛のない雑談で、たしかこの時は普段みんなゲーム以外で何をしてるのかという話題だったはずだ。丁度良いところまで戻ってこれた。
カザハラ:実は残念なお知らせが
サイコカナメ:なんだ!? 他ゲーに浮気!?
カザハラ:実はアルバイト生活だったんだけど正社員決まっちゃって
サイコカナメ:おおー! おめでとうー!
流奈ルミナス:おめでとうございます
カザハラ:多分忙しくて今後ゲームできなくなるかも……
サイコカナメ:それは仕方ないよ
流奈ルミナス:ですね
カザハラ:とりあえず、あと少しの間だけど仲良くしてください!
もちろん真っ赤な噓だが、これでいいんだ。宮崎さんとはこれ以上親しくなるわけにはいかない。次死なせてしまったらもう過去には戻れないんだ。絶対に死なないようにするにはゲーム内においてもこれ以上仲良くならないこと。転生前と同じようにただのクラスメートを維持することだ。
いつもより長かった夏休みが終わった。宮崎さんの訃報がその後出ることはなかった。
若干の不安を胸に登校し教室に入ると特に何も変わらない宮崎さんの姿があった。とても懐かしい気がする。
元気ならそれでいいんだ。と、自分の席まで行く途中になぜか目が合った。
「おはようございます」
いつもは挨拶すらしない程度の関係だったが、わざと話しかけてみたくなった。果たしてどんな反応を見せてくれるかな。
「あ、おはよう……」
まあ一度も話したことないやつからいきなり挨拶されたら当然の反応かもしれない。あの笑顔を見れることはきっともうないんだろうなと思いながら席へ着いた。
初めてできた彼女は残念ながら自分の中にだけ存在する空想の賜物だ。
少し更新が遅れてしまって申し訳ないです!
途中で思いついた短編を書いてしまったせいで遅くなってしまいました。
文字数少し少なめですがきりがよかったのでこのあたりで。
ここまで切ない系の話にする予定はなかったんですが何故かそうなってしまうことが多いです。
次回からはまた新章の予定です。




