第九話 宮崎琴音(2)
「えーっと……パートナーっていうのは……?」
いや、待て待て。告白だったら「パートナー」なんて曖昧な表現使うだろうか。早とちりだったら恥ずかしいのでまずは聞いてみることにした。
「あ、ごめんなさい! なんか自分の中で話が先に進んじゃいました……。私将来プロゲーマ―になりたいんです!」
やはり俺に対す愛の告白ではなかったようだ。ほっとしたような残念なような複雑な気持ちだ。
「それで、きっと私一人では無理だと思うんですよね。協力し合い共に高みを目指していけるような……そんな人を……パートナーと呼べる人を……ずっと探していたんです!」
先ほどまでの弱々しい宮崎さんからは想像もできないような力強い思いがセリフに込められていた。
「それは俺でいいの? たまたまこのゲームが上手くいってるだけで他のゲームとかはそんなに上手くないような……」
「あのゲームがあれだけ出来るというのは、それだけ一つのゲームに研究と情熱を注ぎこめるということです! 他のゲームでも一緒に研究し合えます!」
こんな展開にはなってしまうとは、と騙しているようで良心が少し痛む。
「だめ……ですかね……?」
「あー……ちょっと考えさせてほしいかな……」
「全然大丈夫です! じゃあ明日の朝10時、学校近くのあかしあ公園で待ち合わせしましょう! そこで答えを聞かせてください!」
なんと展開が早い。まさかすぐ明日で指定されるとは思わなかった。
「オッケー。すまんね」
「明日楽しみにしてますねっ!」
最終的には承諾するだろうと確信を持っているかのように迷いなく笑顔で手を振りながら家へ入っていった。
ゲーム画面になると戦闘モードになって性格が変わるかもと言っていたがいまのやりとりを見る限り頷ける。ゲーム画面ではなくゲームに関係することだとどうやら本当にそういう感じになってしまうらしい。
しかしどうしたものか。宮崎さん自体はとても好みで可愛いので、助けになってあげたいとは思うが目の前でスキルが使えないからゲームが下手なのがばれてしまう。後々幻滅されたくもないしやはり断るのが妥当だろうか。
スキルを使用して過去を最高のものにやり直そうとしているのになかなか上手くいかないものである。
一応、一晩色々なパターンを考えた結果、パートナーについては一旦断り今までのようにゲーム仲間としてなら協力したいということで結論づいた。
残念がる宮崎さんを見るのがとても心苦しいが、もちろん約束を破るわけにはいかないので翌日指定された公園へと向かう。
時間よりも5分程早く着いてしまったがまだ宮崎さんの姿はなかった。昨日の帰り際のテンションと彼女のイメージ的には10分くらい前には到着してそうな勢いだったので少し意外な気がしたが直に来るだろうと大人しく待つことにする。
待ち合わせ時間から10分過ぎたが宮崎さんの姿はまだない。
遅れるなんてことあるだろうか。もう少しだけ待つことにした。
30分過ぎた。これは絶対におかしい。
自転車に飛び乗り昨日の記憶を頼りに宮崎さんの家まで急ぐ。
と、自転車で少し走るとさほど広くない裏道に人だかりができており、何やら騒がしい。近隣には警察車両が何台も停まっており交通規制もされて近づけないようになっている。何が起こったんだ。とても嫌な予感がする。
ふと近くにいた女性の会話が聞こえてきた。
「高校生の女の子らしいわよ。ちょうど見た人がいて、素人目に見ても即死だろうって」
人だかりをかき分けて出来るだけ近づくと壁に激突して大破している車が見えた。そんな、まさか。いや、あるわけがない。まだ宮崎さんだって決まったわけじゃない。
きっと公園で待っているはずだと慌てて戻ったが当然彼女の姿はなく、さすがに家にまで行く勇気はなかった。
その後はどうやって自分の家に帰ったのかすら覚えていない。気付いた時には部屋にいた。
すがる思いで夕方ゲームにログインするが流奈ルミナスは昨日からログインしていない状態だった。ちょうどサイコカナメがログイン中になっている。
カザハラ:ルミナスって今日インしてないよね? なんか知ってる?
サイコカナメ:今日は連絡とってないなぁ。どしたの?
カザハラ:いや、知らないなら大丈夫
当然ゲームなどできる状況ではなくすぐにログアウトした。
寝たのか寝てないのか正直わからない状態で気が付けば朝を迎えていた。はっきりさせるためにやらなければいけないことがある。玄関口に行き、真っ先に朝刊を手に取り、普段は絶対に見ないお悔やみ欄を祈る気持ちで確認した。
そこには宮崎琴音の名前が記載されていた。
信じたくはなかったが悪い予感は的中してしまった。自分が軽い気持ちで過去を変えてしまったばかりにとんでもない結果をもたらしてしまった。
せめてあの時、その場で返事をしていれば……そう言えば椿谷さんの時にもした後悔だ。その時とは比べ物にならない程に深刻だが。
自分に出来ることは何もないのか、震える手でスキル書を取り出した。前に一度確認したがその時は過去に戻るようなスキルはなかった。
まずは自分の取得済スキル一覧を確認するが当然この状況をどうにかできるようなスキルはない。もう一度すべてのページを確認しようと、次のページを開くと今までは存在しなかったページが増えていることに気付く。
スキル名:次元の崩壊
効果:30日以内の過去へ3回戻ることができる
使用リスク:レアスキル3つを失う
達成条件:死ぬほど辛い絶望を味わう
なんだこれは。書いてあることが本当なら過去へ戻れる。レアスキル3つをなくしてしまうようだが、そんなことはどうでもよい。このスキルを取得し一昨日の夜に戻る、あの場でパートナーを受け入れ次の日は大人しく家にいてもらう、これで間違いなく交通事故には合わないはずだ。
絶対に助ける。転生後の人生まで後悔はしたくない。
「ふぅ、やるか……次元の崩壊!」
唱えた瞬間部屋の壁や床が大きく曲がり崩壊していくような感覚に捕らわれた。同時に激しい頭痛が襲い思わず目を閉じてしまう。
「あのゲームがあれだけ出来るというのは、それだけ一つのゲームに研究と情熱を注ぎこめるということです! 他のゲームでも一緒に研究し合えます! ……って聞いてますか!?」
目を空けると先ほどまで自分の部屋にいたはずが、夜空の下、宮崎さんがテンション高めに呼びかけてきた。
あの時だ。無事に戻れたようだ。転生した過去をまたやり直すという、まさかそんな事態が起きるとは思わなかった。でも宮崎さんは生きている。本当によかった。
「あー、ごめんごめん、聞いてる! わかった! パートナーになる!」
「ほんとですか!? ありがとうざいます!!」
とても喜んでくれた。本来は断ろうしていたが出来ることなら見たかった笑顔である。言ったからにはゲームぐらいスキルなしでも上手くなってやるよ。
「明日はとりあえず引きこもってゲームしようか! また今度、パートナーとして今後の打ち合わせしよう。明日は10時にゲーム集合で」
「わかりましたぁ! では名残惜しいですが……おやすみなさい!」
元気いっぱいに手を振りながら玄関へと入っていた。
ここまできちんと言えば明日一日は無事に過ごせるだろう。
次の日は朝10時にオンライン上で集合。サイコカナメも含めて予定通り。特に変哲もないいつも通りの光景だ。今日の一日だけ家にずっといてくれればいいんだ。意地でも引き留めてやる。
そして運命の一日が終わり日付が変わった。無事に過ごしきった。これでとりあえず危機は達したであろう。張りつめていた緊張がとけて倒れ込むように眠りについた。
しかしその翌日、流奈ルミナスは一度もオンラインになることはなかった。
いや、そんなわけはないと思いながらも、結局連絡は取れなかった。
さらに翌日、お悔やみ欄には宮崎琴音の名前が記載されていた。
常に意外性のある展開を考えているんですが、
逆にそれがありきたりで王道展開になっているような気がしないでもないです。
物語の練り方が足りないかなとも思ったり。
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