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第8話 武器を知る!

ブリガン族の領域について教えられた翌日、俺は朝から父さんに呼び出された。


「リース、今日は武器について教える」


「武器?」


「ああ。お前も5歳になったからな」


俺は少しだけ期待した。


転生してから5年。前世の記憶を持つ俺としては、異世界の武器に触れる機会を密かに楽しみにしていた。特に弓には興味がある。アルヴァン民族は狩猟を生活の中心にしているから、弓はかなり身近な存在だ。


もしかすると今日から本格的な弓術の訓練が始まるのかもしれない。


そう思っていたのだが。


「まずは斧を持ってみろ」


「....は?」


俺の前に置かれたのは、子供でも扱えるように柄を短くした小さな斧だった。

これが武器?え、武器なの?


「これで何をするの?」


「薪を割る」


「支配者階級が薪割り?」


何の冗談だろう?


「斧は生活道具だが、武器でもある。」


そう言われて、俺は改めて斧を見る。


確かに、よく考えてみればその通りだった。


アルヴァン民族は大森林で暮らしている。木を切り、薪を作り、木材を加工する。そんな生活をしている以上、斧は戦争のときだけ取り出す特別な武器ではない。


「斧は戦うためだけに使うものじゃない。森で生きるなら、使えるようになっておいたほうがいい」


「なるほど」


「ただし、扱いを間違えれば危険だ。だから最初は俺が見ている」


父さんは俺の横に立ち、斧の持ち方を教えてくれた。


俺は言われた通りに握る。


思っていたより重い。


「……これ、大人は普通に使ってるの?」


「普通に使う」


「すごいな」


「お前もそのうち普通になる」


そのうち、か。


俺は斧を眺めながら、少しだけ遠い未来を想像した。


大族長の長男として育てられている以上、いずれ俺も武器を使うことになるのだろう。


細長い長剣とかをを巧みに使う品格のある美白剣士に!


ただ、俺の一族はアルヴァン民族の中でも武勇より知略を重視する。父さんも剣を振り回して敵を倒すようなタイプではない。


だったら俺も、そこまで武器に秀でる必要はないのかもしれない。

たしかに、イケメン軍師も捨てがたい。


そんなことを考えていると、父さんが薪を置いた。


「じゃあ、割ってみろ」


「うん」


俺は斧を振り上げる。


そして――。


「せいっ!」


ガツン。


斧は薪の端に当たった。


当然のように割れない。


「……」


「……」


父さんと俺の間に沈黙が流れた。

ま、まぁ...美白イケメン軍師に武力を求めるのも野暮ってもんさ!


「もう一回」


「はい」


今度は少し狙いを変える。


ガツン。


やっぱり割れない。おっとこれは....


「……父さん」


「なんだ?」


「これ、この中に鉄入ってない?」


「入っていない。それに、最初から簡単なわけがないだろう」


「そういうものなの?」


「そういうものだ」


俺は少し安心した。


異世界に転生したからといって、いきなり何でもできるわけではないらしい。


その後、何度か挑戦してようやく薪に小さな亀裂が入った。


「おお!」


俺が思わず声を上げると、父さんが笑った。


「そうやって少しずつ覚えていけばいい」


どうやら今日のところは、薪を完全に割ることよりも、斧を安全に扱うことのほうが重要らしい。


「なら、まずは薪割りからだな」


「えっ」


「明日もやるぞ」


「弓じゃなくて?」


「斧だ」


「……」


俺は無言で空を見上げた。木々に遮られた静な空間に鳥の軽やかな囀りが聞こえる


どうやら俺の異世界生活は、華々しい剣術から始まるわけではないらしい。


まずは薪割り。


大族長の長男としての第1歩が薪割り。


……まあ、森の民族なのだから仕方ないか。


俺はそう自分に言い聞かせながら、地面に置かれた薪を眺めた。


やっぱ、めんどいわ

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