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アルヴァン民族記  作者: 佐藤湊
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第3話 現代で言うところの社長令息

あれから三年が経った。


俺は三歳になった。


三年。


たったそれだけの時間だが、俺にとっては長かった。


転生した直後は何が起きたのかさっぱり分からなかった。自分が赤ん坊になっていることすら理解できず、周囲の人間が話している言葉を聞いては、その意味を一つずつ拾っていくしかなかった。

パニクっていたせいで心を落ち着かせるのに苦労したが、日本人的わびさびの精神で乗り切った。


やはり、私は野球というドロドロになりながら棒で小さな球を打ち、品性もなく走り回り、地を這いずり回る謎の競技を嗜む愚民どもとは違うのだよ!ッフ


そして、幸いなことに、言葉を覚えること自体は難しくなかった。


前世の日本語とは明らかに違う言語なのに、なぜか頭の中では意味が分かる。話すことも、成長するにつれて自然とできるようになった。


そして、この三年間で俺は一つのことを心掛けていた。


聞くこと。


仲良し夫婦が何を話しているのか。........愛の囁き


使用人オバサンたちが何を話しているのか。......ちょっと奥さぁんン的な話。


家を訪れるオッサンが何を話しているのか.......旨いつまみと酒の話


俺はできるだけ周囲の会話に耳を傾けた。


三歳児なら、大人たちの話など理解していないと思われる。


それは俺にとって都合がよかった。


意味が分からないふりをして遊びながら、大人たちの会話を聞く。


食事をしながら聞く。


父さんの膝に座りながら聞く。


母さんに抱かれながら聞く。


そうして集めた情報を、夜になってボッチで整理する。隣の部屋からの声がうるさいが


最初は、頭の中に流れ込んできた情報と、実際に見聞きしたものとの区別すらつかなかった。


だが、時間が経つにつれて少しずつ分かってきた。


俺の名前は、リース・ブリガン。


父親は、コルマック・ブリガン。


母親は、アイリーン・ブリガン。


そして俺が生まれたのは、アルヴァン民族という民族だった。


アルヴァン民族は、大森林に暮らしている。


国はない。


王もいない。


その代わり、複数の部族が存在している。


その中でも特に大きな部族が三つあり、それぞれを大族長が治めている。


そして三つの大部族のうち、最も大きな部族を治める者が、アルヴァン民族全体の首長になる。

歴オタ的観点から指摘すると準国家と言える部族連合だ。


ここまでは、三年間の生活でかなり理解できた。


問題は――俺自身の立場だった。


転生した直後、父さんが言っていた。


「この子こそブリガン族の次期大族長、リース・ブリガンだ!」


当時の俺には、その言葉の意味が分からなかった。親バカの哀れな妄想かと思ったが


今なら分かる。


父さん――コルマックは、ブリガン族の大族長だ。


そして俺は、その長男。


つまり――。


「……俺、社長令息なのか」


子会社のだけど...


誰もいない部屋で、思わず呟いた。


この世のモノとは思えない言葉だったが、幸い聞いている者はいない。


俺は自分の小さな手を見つめる。


前世では、ごく普通の高校一年生だった。


それが今では、異世界の大森林に暮らす民族の大族長、その長男。


しかも、周囲の大人たちの話を聞いている限り、俺が将来父さんの地位を継ぐことは当然のこととして扱われている。


「……大族長、か」


まだ実感はない。


俺は三歳だ。


剣も満足に振れない。


大人たちのように森を駆け回ることもできない。


政治なんて、もちろんしたことがない。


それでも、この三年間で一つだけ確かなことが分かった。


この世界での俺には、前世とは比べ物にならないほど大きな役割が与えられている。


そして、それを知ったとき――。


日本人的歴オタ精神が爆発した。


「……面白そうじゃないか」


主に権力を傘に着てあんなことやこんなことも....


ぐっふぐふふふふふ....

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