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第91話:絶唱の歌姫と、凍てつく星の不死鳥――宇宙に響く、終わらないアンコール

### 第91話:絶唱の歌姫と、凍てつく星の不死鳥――宇宙に響く、終わらないアンコール

 リオンたちの次なる目的地は、第二銀河に浮かぶ幻想的な星系『晶海の聖域クリスタル・オーシャン』。

 そこは水ではなく、無数の水晶の粉塵が海のように漂う美しい星であった。だが、その美しさは今、死の静寂に呑み込まれようとしていた。

「……マスター。前方より、超高周波の『魔導音波』を検知。……これこそが、この星系を瘴気から守り続けている盾です」

 メテオの報告と共に、メインスクリーンには星全体を包み込む「光の波紋」が映し出された。

 だが、その波紋は弱々しく、今にも途切れそうに震えている。

「お師匠様、見てください! あの星の軌道上に、とんでもない熱量……いえ、極低温のプレッシャーを感じますわ!」

 シズルが震える指でモニターの端を指す。そこには、翼を広げるだけで空間そのものを凍りつかせる、美しくも禍々しいSランク魔物――**『凍星の不死鳥クリスタル・フェニックス』**が、歌声の源(星)を見下ろして旋回していた。

#### 1. 限界の歌姫:枯れ果てた喉と最後の祈り

 星の地表にある水晶の聖堂。

 その祭壇に立つ一人の少女、**カノン**は、もはや立っていることさえ奇跡に近い状態だった。

「……あ、あぁ……。……まだ、止めちゃ……ダメ……」

 彼女は地球(日本)でアイドルを目指していた女子高生だった。この世界に召喚されて以来、彼女の歌声は「瘴気を分解する特殊な共鳴」を生み出し、星を救う唯一の希望となった。

 だが、休むことのない三十年のライブ(防衛戦)。彼女の喉はすでに潰れ、魔法で無理やり声を絞り出している。

(……もう、声が出ない。……みんな、ごめんね。……最後は、笑顔で終わりたかったな……)

 彼女が静かに目を閉じた瞬間、空から不死鳥が急降下してきた。その絶対零度の氷炎が、聖堂の屋根を砕き、彼女を永遠の氷に閉じ込めようとした――その時。

#### 2. 劇的な共演セッション:慈愛の不滅の歌声

 ――**ドォォォォォォォンッ!!!!**

 聖堂の空に、白銀の戦艦が割り込んだ。

「間に合った! ――ノヴァ、火を貸して! ――カメ吉、みんなを護って!」

『グルルォォォォッ!!』

『ォォォォォ……!!』

 SSS級の神機獅ノヴァの黄金プラズマと、大陸亀カメ吉の神域防壁が重なり合い、不死鳥の氷炎を完全に遮断した。

「え……? 誰……?」

 カノンが呆然と見上げる中、リオンがハクヤ(神狼)の背から舞い降り、彼女の喉にそっと手を添えた。

「カノンちゃん。もう、頑張って一人で歌わなくてもいいんだよ。君の歌声、とっても綺麗だね。……今度は、俺たちの家族みんなと一緒に歌おう?」

 リオンの手から、全知の図鑑の力とカイトが構築した「音響修復コード」が流れ込む。

>

> **【System Message】**

> **声帯および生命力の完全修復。これより、全宇宙に「慈愛のアンコール」を放送します。**

>

 カノンの喉から、かつてないほど澄み渡った、神々しいまでの歌声が溢れ出した。

 その歌声に導かれるように、リオンは空を見上げ、威嚇する不死鳥へ微笑んだ。

「不死鳥さんも、カノンちゃんの歌を聴きに来たんだよね? 寂しかったから、自分も一緒に歌いたかっただけなんだよね?」

 リオンの【神羅万象の絆(ユニバーサル・テイム)】が、絶対零度の不死鳥を優しく包み込む。

『ピコンッ!』

凍星の不死鳥クリスタル・フェニックス(Sランク)のテイムに成功しました!』

「君はとっても涼しげな声で鳴くから……名前は**『セレナ(せれな)』**だよ!」

 ――**ピカァァァァァァァァンッ!!!!**

 カノンの歌声とリオンの名付けが共鳴し、不死鳥の氷が七色の虹へと変化した。

『名付けによる超常進化を確認しました。』

『凍星の不死鳥は、**【星天を詠う神鳥アストラル・ディーヴァ・フェニックス】(SSSランク)**へとランクアップしました!』

#### 3. 神の七度目の土下座と、至高のコンサートホール

 カノンと星の民たちは、カメ吉(大陸亀)の背中にある広大な「神域の森」へと移住した。

 そこには、ハクト(ゲーマー)が設計した「全宇宙最高の音響を誇る野外ステージ」が用意されていた。

 カノンが、潤った喉で深呼吸をしていると、空からお約束の光が。

**ズザァァァァァッ!!**

『本当に、本当に申し訳ありませんでしたぁぁッ!! 夢を追う乙女に三十年も連続無休ライブを強いるなど、神として最低のブラックプロデューサーの所業!!』

 輪廻神クロノアの、もはや神速に達したスライディング土下座(七回目)が芝生を抉る。

『カッカッカッ! 良い礼だクロノア! もはやお前の土下座は箱庭の時報だな!』

 アルトワールが、今回も金ピカのサイリウムを振りながら現れた。

> **【カノンへの付与:|歌姫の至高・不滅の黄金声帯&全自動バックダンサー《レジェンド・アイドル・ボイス》】**

> **効果:** どれだけ歌っても喉が枯れず、歌えば歌うほど若返り、聴く者すべてに「HP・MP全回復」のバフを与える神の歌声。さらに、彼女が歌うと、周囲の魔物たちが「SSS級のクオリティで完璧なバックダンス」を勝手に踊り出す。

>

「……すごっ。私、もう一生喉の心配しなくていいんだ。……神様、とりあえずこの新曲、聴いていって!」

 カノンが笑顔でマイク(神具)を握る。

> **【民たちへの付与:至福の観客・小マイナー・ベスト・オーディエンス】**

> **効果:** 彼女の歌を聴くだけで「毎日が夏休み」のような高揚感を得られ、ストレスが完全に消滅する。

>

「「「うわぁぁぁぁっ! 推しが今日も尊いぃぃ!!」」」

 民たちが、一万年分の疲れを忘れて、光る棒を振り回しながら歓喜の声を上げる。

#### 4. 作戦完了、そして新たなる旅路へ

「お師匠様! これで今回の救済ミッション、すべて完了ですね!」

 シズルが、新入りのSSS級神鳥セレナとじゃれ合いながら、嬉しそうに報告した。

「うん! ゲンショウおじいちゃん、マルコさん、カノンちゃん。みんな家族になれて良かった!」

 箱庭は今や、大陸、経済、文化をすべて飲み込んだ、一つの「小宇宙」へと進化した。

 カメ吉が泳ぎ、リヴァイが跳ね、ノヴァが駆け、ピコが演算し、ミラーが映し、セレナが詠う。

 神々ですら諦めた絶望の外宇宙。

 だが、リオンの『全知の図鑑』には、まだまだ空欄(お友達の席)がたくさん残っている。

「ジンさん、カイトさん! 次の座標はどこ!?」

「……フッ。リオン君、君の好奇心には星の数でも足りないな。……次は、宇宙のさらに奥。まだ誰も足を踏み入れていない『深淵の特異点』を目指すぞ」

 白銀の超弩級戦艦『アストラル・クルーザー・マキナ』は、賑やかすぎる家族たちと、神々の果てしない過保護を乗せて、次元の果てへと再び消えていった。


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