第86話:無理ゲーの終焉――電脳竜の涙と、強制シャットダウン
### 第86話:無理ゲーの終焉――電脳竜の涙と、強制シャットダウン
第四銀河の果て、小惑星群にカモフラージュされた漆黒の超機動要塞『アヴァロン』。
この星系規模の防衛拠点の最深部、無数のモニターが青白く発光する極低温のコントロールルームで、一人の少年が力なくコンソールに突っ伏していた。
「……もう、いいよ。どうせ、どこまで防衛ラインを上げても、バグ(瘴気)は無限湧きだ」
彼こそが、地球(日本)から転生し、この要塞をたった一人で造り上げた元・天才ゲーマー、**ハクト**。
彼の目の前のメインスクリーンには、要塞を取り囲む何千万という瘴気の獣たちが、防衛用ドローンを次々と破壊していく「敗戦のログ」が赤く垂れ流されていた。
#### 1. 絶望のゲーマーと、理系の強制ハッキング
(俺のPSじゃ、このクソゲーはクリアできない。……なら、せめてサーバーごと落とす。バグ共もろとも、全部リセットだ)
ハクトは、虚ろな瞳で「星系自爆シークエンス」の最終コマンドを入力した。
要塞の動力源である星のコアが暴走を開始し、カウントダウンが冷酷な電子音声で響き渡る。
『星系崩壊マデ、残リ:180秒……179秒……』
「……ごめんな、ゼロ。俺のワガママに巻き込んで」
ハクトが背後を振り返る。そこには、彼がゲームの相棒として創り出し、幾度となく共に防衛線を戦い抜いてきたSS級の魔物――**『星骸の電脳竜』**が、全身の装甲をボロボロにし、電子回路をショートさせながら、主の決定に悲しげな鳴き声を上げていた。
『100秒……99秒……98……――』
その時だった。
突如として、カウントダウンの音声が「ノイズ」と共に掻き消えた。
無数にあるモニターの赤いエラーログが、一瞬にして見慣れない「複雑怪奇な数式」によって上書きされていく。
>
> **【System Message】**
> **Administrator Override(管理者権限奪取)。自爆シークエンスを強制シャットダウンします。**
>
「なっ……!? はあぁぁっ!?」
ハクトが跳ね起きた。
「俺の完璧なファイヤーウォールが!? 物理的に閉鎖されたローカルネットワークだぞ!? どこから……外宇宙からハッキングされたっていうのか!!」
『……正解だ、引きこもりのゲーマー君。だが、驚くのはまだ早いぞ』
モニターのスピーカーから、見知らぬ冷徹な男の声が響く。
『――君の「部屋(要塞)のドア」、物理的にノックさせてもらう』
直後、要塞全体を揺るがす凄まじい衝撃音が轟き、分厚いチタン合金の天井が、文字通り「プラズマの閃光」によって円形に溶かし抜かれた。
#### 2. 白銀の強襲:悲しき電脳竜の咆哮
「なんだお前ら!? 俺のゲームの邪魔をするな!!」
天井の穴から降下してきたのは、白銀の流星『アストラル・クルーザー・マキナ』と、そこから飛び降りてきた琥珀色の瞳の少年、そして彼に従う神話級の魔物たちだった。
「間に合った! 君がハクト君だね! 自爆なんてしちゃダメだよ!」
リオンが、無邪気に手を振る。
「うるさい、うるさい! お前らもバグの仲間か!? ……やれ、ゼロ!! こいつらを追い出せ!!」
パニックに陥ったハクトが叫ぶと、ボロボロの電脳竜ゼロが、主の命令に従って巨体を持ち上げた。
『ギュィィィィィン……ッ!!』
電脳竜の口から、空間のデータを直接消去する「デリート・ブレス」が放たれる。SS級の魔物が命を削って放つ、絶対死の閃光。
だが、リオンの前に立った神機獅ノヴァが『グルルォォォッ!!』と咆哮し、超新星のプラズマバリアでそのブレスを真っ向から受け止め、完全に相殺してしまった。
「なっ……俺のゼロの最大火力が、ノーダメージだと!?」
「痛いよね、苦しいよね。主を守るために、自分のプログラムを無理やり書き換えて戦ってたんだね」
リオンは、ブレスを放ち終えて力尽きそうになっている電脳竜の鼻先へ、一切の警戒もなく歩み寄った。
「……っ、来るな! ゼロに触るな!」
ハクトが叫ぶが、リオンの手はすでに電脳竜の冷たい鋼鉄の鼻面に触れていた。
「もう、無理しなくていいよ。君のバグ、俺が全部直してあげるから」
#### 3. 慈愛のテイム:SSS級【電脳神竜】の誕生
リオンの圧倒的な【神羅万象の絆】の慈愛が、カイトが構築した「修復プログラム(ワクチン)」と共に、ゼロの電脳コアへと流れ込む。
『……ピィ……ガガ……』
ゼロの電子音声が、苦痛のノイズから、安らぎの和音へと変化していく。
ボロボロだった鋼鉄の骨格が、黄金の光に包まれて溶解し、全く新しい、流線型の美しい光の装甲へと再構築されていく。
『ピコンッ!』
『星骸の電脳竜(SS級)の浄化およびテイムに成功しました!』
「よし! 君はピコピコ可愛い音がするから、名前は**『ピコ』**だ!」
リオンが名前を呼んだ瞬間――本日三度目となる「規格外の限界突破」が発動した。
**ピカァァァァァァァァンッ!!!!**
光が収まると、そこには全身に宇宙の星図を纏い、七色の電子回路が脈打つ、神々しい竜の姿があった。
『名付けによる超常進化を確認しました。』
『星骸の電脳竜は、**【神界の電脳竜】(SSS級)**へとランクアップしました!』
「エス、エス、エス……!? 嘘だろ、俺のゼロが……あんなピカピカに……」
ハクトが、コントローラー(端末)を取り落とし、呆然とその場にへたり込む。
新しく生まれ変わったピコが、嬉しそうにハクトとリオンの頬を交互にすりすりした。
「ハクト君。この宇宙は、一人でクリアしなきゃいけない『無理ゲー』なんかじゃないよ」
リオンが、へたり込むハクトに手を差し伸べた。
「俺たちと、マルチプレイしよう! 俺の『箱庭』なら、バグ(瘴気)なんて絶対に入ってこれないから!」
その笑顔と、暖かな手のひら。
ハクトの目から、数百年間張り詰めていた「孤独なゲーマーの糸」が切れ、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「……ずるいぞ。そんなの、チートプレイヤー(お前ら)にキャリーされるだけの、ただのヌルゲーじゃないか……ッ」
「あはは! ヌルゲーでいいじゃん! 一緒に遊ぼうよ!」
#### 4. 神の過保護と、究極のゲーミングライフ
ハクトの承諾を得たことで、ジンとカイトが素早く動く。
「メテオ、この要塞のコア・ユニットのみを分離し、箱庭の居住区へ移送しろ!」
『リョウカイ、軍師殿。対象ヲ、コンテナ・エリア・アルファへ格納シマス』
箱庭の緑豊かな平原に、ハクトの「部屋」が無事に引っ越しを完了した。
外に出たハクトは、澄み切った青空と、温かい太陽の光を浴びて、眩しそうに目を細めている。
そこへ、空気を読まない(良い意味で)神の光が降り注いだ。
過保護神アルトワールと、もはや「土下座の妖精」と化した輪廻神クロノアである。
『……ハクトよ。ブラック労働ならぬ、ブラック防衛戦を強いて……』
「はいはい、土下座はもういいよ。あんたらの無茶振りには慣れてる」
クロノアが膝を折る前に、ハクトがジト目で先手を打った。
『カッカッカッ! 良い性格をしておる! 引きこもりのゲーマーよ! 命を懸けたゲームはもう終わりだ! これからは「命の危険がない至高のゲーム」に没頭するがよい!』
アルトワールが扇子を振るうと、ハクトの部屋(要塞コア)が、まばゆい光と共に「究極のゲーミングルーム」へと改築された。
> **【ハクトへの付与:|神域の絶対回線&超・魔導ゲーミング環境】**
> **効果:** どれだけ宇宙の深淵にいようとも、Ping(通信遅延)が永続的に「0ミリ秒」に固定される神具。全宇宙、さらには元の地球(日本)のサーバーにすらアクセス可能で、どんな新作ゲームも発売日と同時に無限にプレイできる。さらに、座り続けても絶対に腰が痛くならない「神のゲーミングチェア」と、エナジードリンクが湧き出る冷蔵庫を完備。
>
「……神(運営)、最高かよ。……俺、もう一生ここから出ない」
ハクトが感動の涙を流しながら、輝くゲーミングチェアにダイブした。
「ハクト君! 後で俺も、コメット(半人馬)とピコ(電脳竜)と一緒に、レースゲーム混ぜてね!」
「ああ。……手加減はしねえぞ、リオン!」
自暴自棄に陥り、星ごと自爆しようとしていた孤独なゲーマーは、リオンのチート級の慈愛と、神の斜め上の過保護によって、真の「スローライフ(ゲーム三昧の平和な日々)」を取り戻した。
SSS級の電脳神竜ピコを新たな仲間に加え、いよいよ『星海巡洋機甲』の戦力は神の領域すら超越していく。
残る危険な転生者は、倫理崩壊の魔獣使い・シズル。
リオンたちの「強制お友達救出ツアー」は、休むことなく次なる座標へとワープの光を放つのであった。




