表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/102

第85話:閑話・神への尋問会議と、S寄りのAランク(自暴自棄と倫理崩壊)

### 第85話:閑話・神への尋問会議と、S寄りのAランク(自暴自棄と倫理崩壊)

 聖女ナナミ、大賢者マグナス、そして覇王カイザー。

 宇宙の各所で崩壊寸前だった「緊急事態(Sランク)」の転生者たちを、強引かつ慈愛に満ちた物理的お引っ越しで救い出し、アストラル・クルーザー・マキナの艦内はかつてない賑わいを見せていた。

 だが、作戦室(円卓会議場)の空気は、それとは対照的に冷ややかなものであった。

「……さて、輪廻神クロノア様。土下座の準備はよろしいですか?」

 カイトが白衣のポケットに手を突っ込み、眼鏡をギラリと光らせる。

「我々のリオンが優しすぎるのをいいことに、宇宙のバグ処理を丸投げした挙句、同郷の魂を地獄に放り込んでいた件について……包み隠さず吐いてもらいましょうか」

 ジンが、冷たい笑顔で円卓にナイフ(ペーパーナイフだが殺気は十分)を突き立てた。

『ヒッ……!? い、いえ、隠すつもりなど毛頭ございません! 何でもお答えします!!』

 宇宙の魂を司る最高位の神であるクロノアは、正座の姿勢からいつでもスライディング土下座に移行できる構えで、ガタガタと震えていた。

 その隣では、過保護神アルトワールが『カッカッカッ! 怒られよクロノア!』とポップコーンを食べており、冥界神アイゼルが『……身から出た錆ですわ』と冷たい視線を送っている。

#### 1. 転生神の告白:宇宙に散った魂の総数

「まず、規模感を知りたい。この外宇宙アウター・ヴォイドに、どれだけの転生者を配置し、現在何人が生き残り、どれほどの民がそれに付き従っている?」

 ジンの的確な尋問に、クロノアが空中にホログラムのリストを展開した。

『数千年前から召喚した転生者の総数は、約三百名。……現在、生体反応が確認できるのは【百十二名】です』

「……半分以上が、すでに星と共に消滅しているのね」

 エルフのアイリスが、痛ましげに目を伏せる。

『生き残っている百十二名のうち、約八十名は、独自の防壁を完成させ、何百万という民を抱えて「安定したコロニー」を築いています。彼らの救助は急務ではありません』

 クロノアが星図の緑色の光点を指し示す。

『問題は、残る三十名弱。その中でも即時崩壊の危機(Sランク)にあった三名を、リオン様が今回救出してくださいました。……本当に、足を向けて寝られません』

「なるほど。つまり、まだ放置すれば危険な状態にある者が二十名以上いると」

 カイトがタブレットにデータを打ち込む。

#### 2. S寄りのAランク:狂気に呑まれゆく者たち

「クロノア。その残りの危険な連中の中で、最も緊急性が高い『S寄りのAランク』の情報を出せ。即死はしないが、放置すれば致命的な事態を引き起こす奴らだ」

 ジンの要求に、クロノアは二つの赤い光点をピックアップした。

『はい。現在、星系規模の被害を出す恐れがある「S寄りのA」事案が二件あります』

**【Case 1:自暴自棄の要塞都市(同郷・地球の転生者)】**

『一人は、地球出身の元・天才ゲーマーにして引きこもりの少年、**ハクト**。彼は自身の能力で星を丸ごと「超機動要塞」に改造し、圧倒的な火力で瘴気を完全にシャットアウトしています』

「それなら安全なんじゃないの?」とサラが首を傾げる。

『物理的には無敵です。……しかし、彼は数百年間の孤独な防衛戦に精神を病み、「もうこんなクソゲー(防衛戦)は飽きた。どうせクリアできないなら、星ごと自爆してサーバーを落とそう(リセットしよう)」と、**自暴自棄の星系破壊プロセス**を進行させているのです!』

「うわぁ……一番タチの悪いタイプの引きこもりだ」

 シンが顔を引きつらせる。

**【Case 2:倫理崩壊の魔獣使い(異世界の転生者)】**

『もう一人は、魔法世界から来た天才魔獣使い、**シズル**。彼女は瘴気に抗うため、己の星の魔物や、あろうことか「民」までをも錬金術で融合させ、瘴気耐性を持つ強靭な【合成獣キメラ】を量産しています』

「なっ……! 民を魔物と混ぜるだと!?」

 大賢者マグナスが、円卓の端で怒りに立ち上がった。

『彼女に悪気はないのです。「こうすればみんな泥に溶けずに生きられる」という純粋な狂気。……放置すれば、彼女の星は外宇宙のバグと完全に同化し、最悪の『生体瘴気兵器の巣』と化すでしょう』

#### 3. 理系と軍師の対策、そしてテイマーの結論

「……状況は理解した。どちらも物理的な外圧(瘴気)より、内面(精神)が完全にバグっている状態だな」

 カイトが眼鏡を押し上げ、即座に対策を構築する。

「Case 1の自爆ゲーマー(ハクト)については、メテオの電子頭脳と俺の演算鏡をリンクさせ、要塞の自爆システムを外側からハッキング(オーバーライド)する。物理的に引きこもりのコンセントを引っこ抜いてやる」

「Case 2のキメラ使い(シズル)は、武力で制圧しても根本的な解決にならない」

 ジンが腕を組む。

「融合させられた民や魔物を元に戻さなければ、彼女は永遠に狂ったままだ。だが、不可逆の錬金術を解く方法など……」

「俺に任せて!」

 静かに会議を聞いていたリオンが、ポンッと胸を叩いた。

「ハクト君は、一人ぼっちでゲームしててつまんないだけだよ。だから、俺が『もっと面白いマルチプレイのゲーム(箱庭の遊び)』に誘ってあげる! コメット(半人馬)の背中でレースしたり、ノヴァ(神機獅)と鬼ごっこしたら、絶対楽しいもん!」

「……ええ。彼の自爆を止めるのは、その無邪気な暴力が一番効くでしょうね」とアイリスが苦笑する。

「シズルさんのキメラも大丈夫! みんな痛くて泣いてるなら、俺の【神羅万象の絆】で優しく撫でてあげれば、心の糸が解けて、体も元通りに分離できるよ! 前にジャンク・イーター(メテオ)も直せたから絶対いける!」

>

> ※カイトの脳内演算。「愛で不可逆の錬金術を分離する」という、現代魔術の常識を粉砕する方程式がなぜか成立してしまった。

>

「よし、決まりだね!」

 リオンが満面の笑みで宣言する。

「ゲームに飽きた子と、魔物作りを間違えちゃった子! どっちも俺の箱庭に連れてきて、本当の『スローライフ』を教えてあげる!」

#### 4. 神の過保護と、次なる航海へ

『カッカッカッ! 素晴らしい! やはりリオンの慈愛は全宇宙のバグを直す究極のパッチ(修正プログラム)よ!』

 アルトワールが、ここぞとばかりに立ち上がり、扇子を振りかざした。

『彼らが箱庭に来た時のために、私から最高のギフト(環境)を準備しておこう! ハクトには「全宇宙の神ゲーが無限にプレイできる、絶対に通信落ちしない超・魔導ゲーミングルーム」を! シズルには「誰も傷つけずに済む、スライムの品種改良専用の安全なふれあい牧場」を創り出してやろう!』

『……アルトワール。貴方は本当に、転生者をダメにする天才ですわね』

 アイゼルがため息をつくが、その表情はどこか安堵していた。

『輪廻神よ。お前が撒き散らした火種は、我が使徒がすべて極上の「お茶会のゲスト」に変換してやる! これ以上、若き魂たちを泣かせるようなら、私が神界のシステムを書き換えるからな!』

『は、ははぁぁぁっ!! アルトワール様、リオン様! 何卒、よろしくお願いいたします!』

 クロノアが、見事な土下座の姿勢のまま感涙に咽び泣いた。

「ジンさん、カイトさん! メテオ! 次の星の座標を入力して!」

『リョウカイ、マスター。目標、自暴自棄ノ要塞都市……ワープ機関、チャージ開始』

 緊急事態(Sランク)を乗り越え、戦艦の火力も乗員の知恵も、そして過保護神の「お節介」もさらにパワーアップしたアストラル・クルーザー・マキナ。

 心を病んだ転生者たちを「強制的に癒やす(テイムする)」ための、容赦なきスローライフ救出ツアーが、星の海を再び疾走し始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ