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第82話:星果ての聖女と、輪廻神の平謝り(土下座)

### 第82話:星果ての聖女と、輪廻神の平謝り(土下座)

 神界の裏工作により、アストラル・クルーザー・マキナのメインコンピューター(メテオ)に密かにインストールされた「転生者救済座標」。

 その最初のポイントに向け、白銀の戦艦は光速の彼方へと跳躍していた。

「マスター。外宇宙最深部、第七特異点付近ニ到着。……極地的大規模瘴気嵐バグ・ストームノ中心ニ、微弱ナ生体反応群ヲ確認シマシタ」

「ありがとうメテオ! ジンさん、カイトさん、急ごう! 同じ日本から来た女の子が頑張ってるんだって!」

 リオンが艦長席から身を乗り出す。

 メインモニターに映し出されたのは、宇宙の暗黒すらも飲み込むような土黒い瘴気の渦。その中心で、今にも割れそうな「薄氷の結界」に守られた、わずかばかりの岩石の欠片(星の残骸)だった。

#### 1. 孤立無援の聖女:限界の防城戦

 その星の残骸では、一人の少女が膝をつき、血を吐きながら祈りを捧げていた。

 彼女の名前は**ナナミ**。かつて地球(日本)で普通の女子高生だった彼女は、輪廻神によって「瘴気を浄化する聖女」としてこの地獄に召喚され、五年もの間、たった一人でわずかな民たちを守り続けてきた。

「……聖女様。もう、結界を解いてください。貴女の命が削れていくのを見るのは、これ以上耐えられません……っ」

 痩せこけた民の長が、涙ながらにすがりつく。

「ダメ……私が祈りをやめたら、みんな、泥に飲まれちゃう……。もう少し、もう少しだけ……」

 ナナミの視界はすでに赤く染まり、ステータスの【HP】と【MP】は限界を示す警告音を鳴らし続けている。

 防壁の外には、無数の瘴気の獣たちが群がり、結界をガリガリと削り取っていた。

(……神様。私、もう頑張れないよ……。日本に、お母さんのハンバーグが食べたいよぉ……)

 ナナミの意識が、永遠の闇に落ちようとした、その瞬間だった。

**ピカァァァァァァァァンッ!!!!**

 漆黒の瘴気嵐が、文字通り「物理的に」真っ二つに裂けた。

#### 2. 規格外の救出劇:天使チートの降臨

「え……?」

 ナナミが虚ろな目を開けると、そこには、絶望の泥を掻き分けるように降下してくる「白銀の超巨大戦艦」があった。

『グルルォォォォォォッ!!!』

 戦艦の底部から飛び出した、超新星のプラズマを纏う巨大な黄金の獅子(SSS級:ノヴァ)が、群がっていた瘴気の獣たちを一足飛びで消し炭に変える。

『キュルルゥゥゥン!』

 さらに、星屑を纏う巨大な水晶の天鯨(SSS級:リヴァイ)が宙を舞い、結界の周囲の瘴気を一口でパクリと飲み込んで、美しい星雲へと浄化してしまった。

「な……なに、これ。幻覚……? 天使様のお迎え……?」

 呆然とするナナミの前に、ハクヤ(凍土の神狼)の背に乗った琥珀色の瞳の少年が、ふわりと舞い降りた。

「間に合って良かった! 君がナナミちゃんだね! 俺はリオン、同じ日本から来たんだ!」

「……え? 日本……?」

「うん! ずっと一人でみんなを守ってたんだね、すごいよ。でも、もう頑張らなくていいからね。……お腹、空いてない?」

 リオンが差し出したのは、箱庭で採れた極上の苺で作られた、甘い匂いのするショートケーキだった。

 ナナミは震える手でそれを受け取り、一口食べた瞬間。五年分の緊張と絶望が崩れ去り、子供のように声を上げて泣き崩れた。

「うわぁぁぁん!! ケーキだぁぁ!! 甘いよぉぉ!! ずっと泥水すすって祈ってたのにぃぃ!!」

「よしよし、いっぱい食べてね」

#### 3. 箱庭へのお引っ越し(物理)と、圧倒的スローライフ

「さて、この星の残骸も長持ちしない。……リオン君、いつもの『お引っ越し』をやるぞ」

 カイトが白衣を翻してタブレットを操作する。

「うん! リヴァイ、お願い!」

『キュゥゥン!』

 天鯨リヴァイが大きな口を開け、ナナミと民たちがいる岩石の街を、土台ごと優しく丸呑みにした。

 そして次の瞬間、ナナミたちが吐き出された先は——暗い宇宙ではなく、澄み切った青空、緑豊かな大地、そして世界樹がそびえ立つ【無限の箱庭インフィニット・ファーム】の中だった。

「……え? ここ、どこ? 天国?」

 ナナミと民たちが、ふかふかの芝生の上でポカンとする。

「ナナミ様、こちらへどうぞ。まずは『神域の露天風呂』で五年分の汚れと疲れを落としていただき、その後はフルコースの歓迎会ですわ」

 優雅に微笑むルミナスと、バスタオルを持ったサラに連行されていくナナミ。

 数時間後。

 ピカピカの肌になり、最高級のシルクのドレスを着せられたナナミは、箱庭のテラスで特大のハンバーグを頬張りながら「……日本の実家より快適なんですけど。私、もう一生ここでニートします」と、聖女の威厳を完全に放棄していた。

#### 4. 輪廻神の土下座と、お約束のギフト

 ナナミと民たちが平和を噛み締めているテラスに、黄金と白銀の光の柱が降り注いだ。

 過保護神アルトワールと、そして……どこかバツの悪そうな顔をした輪廻神クロノアの顕現である。

『……ナナミよ』

 クロノアは、ナナミの前に進み出ると、神の威厳もかなぐり捨てて、**勢いよく土下座ジャンピング・ドゲザをキメた。**

「ええっ!? か、神様!?」

『本当に、本当に申し訳ありませんでしたぁぁッ!!』

 宇宙の魂を司る神が、地面に額を擦り付けて平謝りする異常事態。

『宇宙のシステムを維持するためとはいえ、何の罪もない日本の女子高生を地獄のような環境に放り込み、五年間も放置したこと……神として万死に値する失態! いかなる罰も受けます!』

「い、いや、もう助かったし、今ハンバーグ美味しいんで大丈夫です……!」

 ナナミが慌てて神を宥める。

『カッカッカッ! 輪廻神よ、謝って済むなら私の過保護システムは必要ないのだ!』

 アルトワールが、ここぞとばかりに扇子をバサァッと広げてしゃしゃり出てきた。

『よくぞ耐えたナナミ! そして民たちよ! ブラック企業(神々)に使い潰されかけたお前たちに、この過保護神から最高のお詫びと歓迎のギフトを授けよう!』

 アルトワールが指を鳴らすと、ナナミと民たちの頭上に光が降り注いだ。

> **【ナナミへの付与:完全無休の聖女休暇パーフェクト・ホリデー】**

> **効果:** どれだけ寝転がって漫画を読んでいようと、ケーキをドカ食いしようと、自動的に「神聖な祈りを捧げている」という判定になり、周囲に浄化のオーラを垂れ流す超絶サボりスキル。さらに、カロリーはすべて魔力に変換され、肌ツヤは常に「エステ直後」の最高状態をキープする。

>

「……えっ。何これ、最強のニート化スキルじゃん。……神様、一生推します」

 ナナミが感動で震える。

> **【民たちへの付与:|ささやかなる感謝の祈り・マイナー・サンクス・ブレス】**

> **効果:** 戦闘力は一切上がらない! だが、食前に「いただきます」とお祈りするだけで、どんな安いお茶菓子でも「王宮御用達の高級スイーツ」の味に変化し、肩こりや腰痛が一瞬で全快する、QOL(生活の質)爆上がりスキル。

>

「「「おおおおおっ!!」」」

 過酷な宇宙で泥水をすすってきた民たちが、配られたクッキーを食べて「美味すぎる!」と泣きながら万歳三唱を始めた。

『……アルトワール。貴方はまた、生態系だけでなく「真面目に生きる尊さ」まで破壊する気ですか』

 遅れてホログラムで通信を繋いだアイゼルが、呆れ果ててため息をつく。

『ですが……五年間の孤独の報酬としては、これくらい甘やかしても罰は当たらないでしょう』

「これでナナミちゃんも、俺たちの家族だね! 箱庭ここなら絶対安全だから、いっぱい遊ぼう!」

 リオンが無邪気に笑うと、ナナミは満面の笑みで頷いた。

 絶望の星で孤立無援だった聖女は、リオンの「慈愛(と暴力的なまでの救助力)」、そして神の「土下座と過保護ギフト」によって、最高の引きこもりスローライフを手に入れた。

「さて、ジンさん、カイトさん! ナビにはまだ、他のSOSの星がいっぱいあるよね! 全部助けに行こう!」

「ああ。宇宙のバグ掃除と、同郷の魂の回収……忙しくなるぞ」

 リオンの無軌道な優しさは、宇宙の理不尽を次々と「楽しい箱庭の日常」へと塗り替えながら、次なる転生者が待つ星系へと、白銀の航跡を伸ばしていくのだった。


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