第81話:閑話・万象の円卓――星の海に散った「同郷の魂」と神々の驚愕
### 第81話:閑話・万象の円卓――星の海に散った「同郷の魂」と神々の驚愕
リオンという規格外のテイマーが、絶望の外宇宙で星喰いをペットにし、長命種を「全自動カフェ店員」として箱庭へ迎え入れていた頃。
すべての宇宙を俯瞰する絶対神域——**『万象の円卓』**では、各次元と銀河を管理する最高位の神々が集結し、かつてない規模の緊急神議が開かれていた。
#### 1. 神々の緊急招集:ぶっ壊れた宇宙の観測データ
『――静粛に。これより、第七外宇宙セクターにおける「異常なシステム変動」についての報告を始める』
円卓の中心で、宇宙の歴史を記録する**観測神オメガ**が、巨大なホログラム星図を展開した。
その星図には、漆黒に塗りつぶされていたはずの外宇宙の一部が、突如として「清浄な白銀の光」と「未知の星雲」によって塗り替えられている様子が映し出されていた。
『一万年間、我々神ですら手出しできなかった瘴気の海……そこに生存していた長命種の救出。さらに、特異災害である深淵の星喰い(ヴォイド・リヴァイアサン)の浄化。……いや、浄化ではない。対象は【銀河創星の天鯨】へと超常進化を遂げ、一個人の「ペット」として登録されている』
観測神オメガが、震える声で演算結果を読み上げる。
円卓を囲む数多の神々——炎の神、水の神、機械の神——が、一斉にざわめいた。
『馬鹿な! あの星喰いは、神の権能ですら消滅させる宇宙のバグだぞ!?』
『それを手懐け、あまつさえ神話級(SSS)に進化させただと!? いったいどこの宇宙艦隊がそんな奇跡を起こしたのだ!?』
混乱する神々の中、一柱の神がバンッ! と円卓を叩いて立ち上がった。
『カッカッカッ!! 驚くがよい、全知全能の同胞たちよ!! それをやったのは、この私が見出した最強にして最高の使徒、いや愛娘ならぬ愛息子……リオンである!!』
過保護神アルトワールが、後光をテカテカに輝かせながらドヤ顔で言い放つ。
その隣で、冥界神アイゼルが「……誰か、この親バカを宇宙の果てに捨ててきてくださいませ」と頭を抱えていた。
#### 2. 輪廻神の告白:宇宙に散らばる「転生者」たち
『……アルトワールの使徒の異常性は、ひとまず置いておきましょう』
空間を揺るがすような静かな声で場を鎮めたのは、魂の循環を司る**輪廻神クロノア**だった。彼女は憂いを帯びた瞳で、星図のあちこちに点在する「赤い光点」を指し示した。
『今回、リオンが外宇宙へ進出したことで、宇宙全域の「瘴気の連鎖」に大きな揺らぎが生じました。その結果、瘴気に隠れて観測できなかった**「他の転生者たち」**の現在地が、多数判明したのです』
「他の……転生者、ですって?」
アイゼルが顔を上げる。
『ええ。実は数千年前から、この外宇宙のシステム・エラーを食い止めるため、各次元の管理神たちは密かに「特異な魂」を召喚し、抗体として宇宙の各地へ配置していました』
クロノアが空中に展開した数式は、宇宙の崩壊を防ぐための「魂の配置方程式」だった。
>
> ※宇宙のバグ密度 \rho_{\text{Bug}} の総量に対し、N 人の転生者の魂のエネルギー \Psi が上回らなければ、宇宙は崩壊する。
>
『驚くべきことに、その「抗体」の多くは、リオンと同じ**【地球(日本)】**という極小の惑星から引き抜かれた魂です。あの星の魂は、なぜか「異世界の不条理」に対する異常な適応力を持っているのです。……さらに、地球以外の、高度な科学文明や魔法文明を持つ別の宇宙からの転生者も確認されました』
#### 3. 壮大なる伏線:星の海で戦う者たち
星図に映し出された赤い光点——それは、今この瞬間も、宇宙のどこかで絶望と戦っている「リオン以外の主人公たち」の痕跡だった。
『観測データを共有します』とオメガがホログラムを切り替える。
* **【観測対象A:同郷(地球)の転生者】**
* **座標:** 第四銀河・機械帝国跡地。
* **状況:** 凄まじい科学知識で独自の星間帝国を築き上げ、武力によって瘴気を制圧している「覇王」。しかし、その精神は長き戦いで摩耗し、冷酷な独裁者へと変貌しつつある。
* **【観測対象B:異世界の転生者】**
* **座標:** 第九銀河・魔術の死星。
* **状況:** 魔法が絶対の理である世界から来た大賢者。瘴気を魔術で相殺し続けているが、星の寿命と共に孤立無援の防城戦を強いられている。
* **【観測対象C:同郷(地球)の転生者】**
* **座標:** 外宇宙の最深部・特異点付近。
* **状況:** リオンと同じく「日本」から来た少女。絶望的な環境の中、わずかな生存者たちを守るため、自らの命を削って防壁を張り続ける「聖女」。限界は近い。
『彼らは皆、宇宙を救うために召喚されながら、あまりに過酷なバグの海で、孤立し、狂い、あるいは死を待つのみの状況にあります』
クロノアの悲痛な報告に、神々は沈痛な面持ちで俯いた。
#### 4. 過保護神の怒りと、次なる「指針」
その重苦しい沈黙を、アルトワールの雷のような怒声が切り裂いた。
『ふざけるなァァァッ!!』
アルトワールは円卓を蹴り飛ばし、他の神々をギロリと睨みつけた。
『宇宙を救うためとはいえ、うら若き魂たちを地獄に放り込み、放置するなど神の恥! ましてや、私の愛するリオンと「同じ故郷」の魂たちを泣かせているだと!? 万が一リオンが彼らの惨状を見て、「神様ってひどい!」と私を嫌いになったらどうするのだ!!!』
『……結局、お前の怒りの理由はそこ(過保護)ですか』
アイゼルが冷たい視線を送るが、アルトワールは止まらない。
『ええい、オメガ! クロノア! その「他の転生者たち」の座標データを、すべて私によこせ! リオンの【全知の図鑑】のナビゲーションに、今すぐこっそりインストールしてやる!』
『なっ……!? アルワトール、正気ですか!』
他の神々が慌てて制止しようとする。
『彼らは戦いの中で狂気や疑心暗鬼に囚われている者も多い! 圧倒的な力を持つ覇王が、無防備に近づくリオンを敵と見なし、攻撃してくる可能性もあるのですよ!?』
『カッカッカッ! 愚問だな!』
アルトワールは、高らかに笑い飛ばした。
『私のリオンの「慈愛」を侮るな。いかに冷酷な独裁者だろうと、孤高の大賢者だろうと、リオンが笑顔で「お茶会しよう!」とタルトを差し出せば、五分で「箱庭の愉快な仲間たち(農作業担当)」にクラスチェンジするわ! むしろ彼らの方こそ、リオンの非常識なスローライフに巻き込まれる被害者よ!』
その言葉に、神々は絶句し……そして、かつてリオンの「慈愛の暴力」によってギャグキャラにされた魔物たちの姿を思い出し、妙に納得してしまった。
『……確かに。リオンの船には今、SSS級の化け物が二匹、最強の軍師と理系、エルフの王女に獣人の戦士が乗っています。……他の転生者たちが束になっても、武力でもスローライフ力でも勝てませんわね』
アイゼルが、どこか同情するような目で星図を見つめた。
#### 5. 宇宙規模の「お友達救出ツアー」へ
『決まりだ! 宇宙のバグを直すついでに、ブラック企業(神々)に使い潰されかけている可哀想な同郷の魂たちを、すべてリオンの【無限の箱庭】に保護してもらう!』
アルトワールの強権発動により、アストラル・クルーザー・マキナのメインコンピューター(メテオ)の深層に、密かに「転生者たちのSOS座標」が転送された。
宇宙の各所で、孤独に絶望と戦い続ける転生者たち。
彼らはまだ知らない。
間もなく、自分たちの悲壮な戦場に、**「超弩級の白銀の戦艦に乗り、SSS級の宇宙怪獣をペットとして引き連れた、無邪気で過保護すぎる同郷の少年」**が、紅茶とケーキを持って物理法則ごと突撃してくるということを。
神々の驚愕と裏工作を経て、リオンたちの銀河航海は、未知の魔物探索に加え、**「全宇宙・転生者同窓会(強制スローライフへの招待)」**という、さらにカオスで壮大なミッションへと舵を切るのだった。




