第80話:外宇宙の真実と、恒例の「星ごと(物理)お引越し」
### 第80話:外宇宙の真実と、恒例の「星ごと(物理)お引越し」
深淵の星喰いを『キラキラの宇宙鯨』へとクラスチェンジさせ、一万年ぶりに星詠みの民を救出したリオン一行。
歓喜に沸くクリスタルの森の中心で、長の女性は、震える声でこの外宇宙の過酷な真実を語り始めた。
「……リオン様。この宇宙は、もはや生命が住める場所ではございません。光熱を放つ恒星はすべて瘴気に飲まれて『冷たい泥の星』と化し、空間そのものが理性を削り取る『虚無の吹雪』に満ちています」
長は、悲しげに天を仰ぐ。
「我らは防壁の中で、細々と星の残存魔力を啜りながら生き延びてきました。ですが、星の命もすでに限界……。怪物が去ったとしても、この星の土はあと数年で完全に崩壊し、我々は宇宙の塵となる運命でした」
その悲痛な言葉に、エルフのアイリスが顔を伏せ、ルミナスも扇子で口元を覆う。一万年の孤独の末に待つのが「緩やかな星の死」だという現実は、あまりにも残酷だった。
しかし。
我らが最強にして最凶の無自覚テイマー、リオンの辞書に「絶望」の二文字はない。
「……そっか。このお星さま、もう寿命なんだね」
リオンはポンッと手を叩き、まるで『明日ピクニックに行こうよ』とでも言うような、極めて軽いトーンで提案した。
「だったら、**俺の『箱庭』にお引っ越しすればいいよ!**」
#### 1. 恒例行事:物理法則を無視した超次元お引っ越し
「……は、はい?」
長をはじめとする星詠みの民たちが、ポカンと口を開けた。
「俺の船の中には、すっごく広くてポカポカな『無限の箱庭』があるんだ! そこなら瘴気もないし、ご飯も美味しいし、温泉もあるよ! 星の土がダメなら、君たちの街ごと、そのまま箱庭にズボッと植え替えちゃおう!」
「ま、街ごと……? 船の中に、ですか……!?」
長が白目を剥きそうになる横で、ジンとカイトが「ああ、また始まった」と深くため息をついた。
「驚くことはない、エルダー殿。うちの主は、過去にも『浮遊島』や『エルフの森』をそのまま船に丸呑み(お持ち帰り)してきた前科がある。……カイト、収容スペースの演算を」
「メテオと合体した今の『星海巡洋機甲』の空間拡張能力なら、このクリスタルの街一つどころか、小惑星を丸ごと飲み込んでもペイロード(積載量)は$0.01%$も埋まらない。問題ない」
理系転生者と軍師が、秒速で「星ごとのお引っ越し」の物理的裏付けを完了させる。
#### 2. 過保護神の閃き:究極の『星天リゾート』創造
そのやり取りを聞いていた過保護神アルトワールが、バンッ! と膝を打って割り込んできた。
『おおおおっ!! さすがは私のリオン! 絶望した民を、自らの楽園に迎え入れるその慈愛、まさに神の器!!』
アルトワールは感動のあまり鼻水を啜りながら、急に真顔になった。
『……だが待てよ? この星詠みの民は、一万年も宇宙のクリスタル環境で引きこもっていた超・インドア派の長命種。そんな彼らを、いきなり箱庭の大自然(土と緑)に放り込んだら、環境の変化で風邪を引いてしまうのではないか!? リオンが「みんな具合悪いの? 俺のせいだ……」と悲しむようなことになっては一大事だ!!』
「いや、アルトワール様。エルフの末裔ですから自然には適応できると……」
アイリスのツッコミを完全に無視し、神の過保護システムが猛烈な勢いで起動した。
『そうと決まれば、おじさんが一肌脱ごう! ――【無限の箱庭】、エリア拡張!!』
アルトワールが天に扇子を突き上げると、リオンの船内にある箱庭空間のさらに奥深く、次元の壁がメキメキと音を立てて拡張された。
そこに新設されたのは——。
* **【星天の水晶森】**
* **環境:** 彼らの故郷を完全に再現した、透き通るような青い水晶の森。ただし、地面はふかふかの星屑でできており、温度・湿度は常に「極上の春の夜」に固定。
* **設備:** 星の光を吸収して自動で発光・保温する「全自動クリスタル・コテージ」。さらに、長命種が飽きないように、先ほど付与した「異世界ネトフリ見放題」を最高環境で楽しめる「超大型ホログラム・シアター(ポップコーン永久湧き出し機能付き)」を広場に完備。
『カッカッカッ! どうだ! これぞ長命種のための究極の引きこもり……いや、安らぎの居住区! これなら環境の変化によるストレスはゼロだ!』
#### 3. 更なるお節介:ギフト【星民の極上おもてなし】
「わぁ! すごい! 神様、ありがとう! これならみんな、すぐにくつろげるね!」
リオンが大喜びで拍手するのを見て、アルトワールはさらに調子に乗った。
『フハハ! 礼には及ばん! だがリオンよ、これだけではないぞ! 彼らが箱庭の住人となるからには、我が使徒であるお前に「最高の癒やし」を提供できる存在でなくてはならん!』
アルトワールは、唖然としている長たちの頭上に、本日二度目となる神の光を降り注がせた。
> **【|星民の極上おもてなし・全自動同調】**
> **効果:** リオンが「お茶を飲みたい」「お菓子を食べたい」と思った瞬間、その日のリオンの体調や気分に合わせた『宇宙で一番美味しい紅茶と星屑のクッキー』を、星詠みの民が【無意識のうちに完璧なタイミングで淹れてしまう】超常スキル。さらに、彼らの服は常に星の光でコーティングされ、絶対に汚れず、リオンが抱きつくと「高級羽毛布団」のような柔軟性と良い匂いを放つようになる。
>
「「「…………」」」
星詠みの民たちは、自分たちの体が突如として「究極の執事・メイド仕様(しかも高級羽毛布団機能付き)」にアップデートされたことに気づき、呆然と互いを見つめ合った。
『これで完璧だ! リオンが箱庭の水晶森に遊びに行けば、いつでも極上のお茶会とモフモフのハグが約束されるというわけだ!』
「……あの、神様。それって彼らを助けたというより、リオン君のための『超便利な全自動カフェ』を作っただけでは……」
サラが引きつった笑顔で呟く。
『……ええ。一万年の孤独を耐え抜いた気高き民が、今日から「リオン専属の癒やし系クッション兼カフェ店員」に転職しましたわ。……もう、勝手にしなさい』
冥界神アイゼルは、宇宙の絶望すらも「スローライフのダシ」に使う過保護神の所業に、ついにツッコミを放棄してホログラムの通信を切った。
#### 4. 賑やかなる新生活の始まり
「さあ、みんな! 荷物をまとめて! 宇宙のクジラさん(リヴァイ)と、機械のドラゴン(メテオ)が、街ごと運んでくれるからね!」
リオンの無邪気な号令と共に、宇宙規模の超・お引っ越し大作戦が始まった。
SSS級の天鯨リヴァイが、クリスタルの街の地盤ごと優しく魔力で包み込み、星海巡洋機甲の巨大なハッチへと次々に格納していく。
「……まさか。我らの星が、このような温かな場所へ移れる日が来ようとは……」
長は、箱庭の【星天の水晶森】に降り立ち、その完璧すぎる気候と、甘い星屑の香りに涙を流した。
「リオン様……そして神様。この御恩、星の瞬きが尽きるまで決して忘れません。さあ、皆様! リオン様のために、まずは極上の『星屑のパウンドケーキ』を焼きましょう! なぜか完璧なレシピが頭の中に浮かんでおります!」
「おおー! ホログラムシアターで新作アニメを見ながら、みんなでケーキを焼きましょう!」
一万年の絶望と悲壮感は、神の斜め上のギフトにより、わずか数十分で「超絶ポジティブな引きこもりエンジョイライフ」へと完全に上書きされてしまった。
かくして、外宇宙の過酷な環境に怯えることなく、リオンの『無限の箱庭』はさらに一つの文明を飲み込み、より広大で、よりカオスで、最高に居心地の良い楽園へと進化したのである。
「よーし! お引っ越しも終わったし、次の迷子を探しに出発だぁ!」
リオンの元気な声が響き、白銀の戦艦は、新たな「お友達」と「スローライフの具材」を求めて、再び漆黒の星の海へと光の尾を引いていくのだった。




