第79話:深淵の星喰い(SSS)と、一万年ぶりの「お約束(神の過保護)」
### 第79話:深淵の星喰い(SSS)と、一万年ぶりの「お約束(神の過保護)」
漆黒の宇宙空間。一万年の間、瘴気の海に耐え抜いてきたクリスタルの星を、巨大な絶望が丸呑みにしようとしていた。
外宇宙の特異災害——**『深淵の星喰い』**。
木星サイズの惑星すら一口で咀嚼する、暗黒の深海魚のような怪物。その無数の牙が、ついに星詠みの民の防壁を砕こうとした、その瞬間。
「メテオ、ノヴァ! あの星からお魚さんを引き剥がして!」
『リョウカイ。主砲【アストラル・バスター】、発射』
『グルルォォォォォォッ!!!』
アストラル・クルーザー・マキナの艦首から放たれる白銀の閃光と、船体下部から飛び出したSSS級神機獅ノヴァの【超新星プラズマ】が、宇宙空間で螺旋を描きながら星喰いの巨体に直撃した。
**ギャォォォォォォォォンッ!!!**
理不尽なまでの超火力を浴び、星喰いが苦悶の咆哮を上げて防壁から引き剥がされる。
その隙に、ジンが操舵輪を切り、白銀の戦艦が星の防壁と星喰いの間に滑り込んだ。
「よし、対象を星から引き剥がした! だがデカすぎる。カイト、質量を削り切れるか!?」
「問題ない。あいつの装甲を構成する『瘴気密度』の弱点係数は演算済みだ。第三射で完全にデリート……」
「ストップ!! カイトさん、撃っちゃダメ!!」
カイトが引き金に指をかけた瞬間、艦長席からリオンの鋭い制止が入った。
#### 1. ついで(?)の救済:二体目のトリプル(SSS)爆誕
「リオン君!? なぜ止める! 相手は星を喰らう特異災害だぞ!」
「違うよ! カイトさん、あの子、お腹が空いてるだけじゃない。瘴気が体中に詰まって、苦しくて泣いてるんだ!」
リオンの【深淵の対話者】には、星喰いの咆哮が「痛い、苦しい、誰か助けて」という悲痛なSOSとして聞こえていた。星喰いもまた、外宇宙のバグに汚染され、正常な生態系から狂わされた哀れな被害者だったのだ。
「メテオ! ノヴァ! 傷つけてごめんねって、俺の魔力(回復)を込めたミサイルを撃って!」
『……マスターハ、宇宙ノ摂理ヨリモ優シサヲ優先サレル。……リョウカイシマシタ。全ミサイル・ポッド、弾頭ヲ【神羅万象の絆】ニ換装』
白銀の戦艦から、数百発のミサイルが放たれる。しかしそれは爆発せず、星喰いの巨体に触れた瞬間、温かな黄金の光の波動となって怪物を包み込んだ。
「……キュ……ォォ……?」
星喰いの体から、どす黒い瘴気がインクのように溶け出し、宇宙空間へ浄化されていく。痛みが消え、満たされた怪物は、凶暴な牙を隠してリオンの戦艦にすり寄ってきた。
『ピコンッ!』
『深淵の星喰いのテイムに成功しました!』
「よし! 君も俺の家族だ! おっきくて、銀河を泳ぐクジラみたいだから……名前は**『リヴァイ』**だね!」
――そして、またしても「それ」は起きた。
**ピカァァァァァァァァンッ!!!!**
宇宙空間全体が、ビッグバンを起こしたかのような白光に包まれる。
暗黒の怪物だったリヴァイの巨体が、星々の煌めきを内包した「透き通るような宇宙水晶の天鯨」へと姿を変えた。その周囲には、新たな星雲がオマケのように発生している。
『ピコンッ! ピピピピピピピーーーーッ!!!』
『名付けによる超常進化を確認しました。』
『深淵の星喰いは、**【銀河創星の天鯨】(SSS級)**へとランクアップしました!』
「…………」
カイトが、割れた眼鏡をそっと懐にしまった。
「またSSS……。もう驚かねえぞ。……たぶん」
シンが、白目を剥きながらソファーに倒れ込んだ。
星を救うついでに、星を創れるレベルの神話級ペット(二匹目)を増やしてしまったテイマーは「わぁ、リヴァイ、キラキラで綺麗!」と無邪気に喜んでいる。
#### 2. 長命種との邂逅:一万年ぶりの訪問者
脅威が「キラキラのペット」に変わったことで、星詠みの民たちの星を覆っていたクリスタルの防壁が、ゆっくりと解かれた。
リオンたちはアストラル・クルーザー・マキナを降下させ、透き通るような青い森が広がる地表へと降り立った。
そこには、地上のエルフよりもさらに長く尖った耳と、星の光を編み込んだような銀髪を持つ、美しき長命種たちが、震えながら集まっていた。
「……あ、貴方様は。一万年ぶりの、外の星からの……」
群衆を掻き分け、長い杖を持った長の女性が、涙を流しながらリオンの前に跪いた。
「我ら星詠みの民、もはや滅びを待つのみと覚悟しておりました。……あの深淵の怪物を一瞬で浄化し、従えるとは。貴方様は、我らが創造主の御使い様でいらっしゃいますか?」
「御使いじゃないよ、俺はリオン。困ってる声が聞こえたから、遊びに来ただけだよ!」
リオンが満面の笑みで手を差し伸べた、その時。
『カッカッカッ!! リオンは私の使徒ではなく、私の愛する「息子」のようなものだ!!』
#### 3. 神々の降臨と、怒涛の「お約束」
**カアァァァッ……!!!**
星詠みの森に、黄金と漆黒の光の柱が突き刺さった。
過保護神アルトワールと、冥界神アイゼルの直接降臨である。
「そ、創造主様ァァッ!!」
一万年ぶりの神の顕現に、星詠みの民全員が額を地面に擦りつけて平伏する。
『面を上げよ、気高き長命種たち! お前たちが一万年間、この地獄の宇宙で理性を保ち続けたこと、神として誇りに思うぞ!』
アルトワールが、いつになく荘厳な態度で頷く。星詠みの民たちは感動の涙に咽び泣いた。
『さあ、苦労を掛けたお前たちに、神からの「お詫びとご褒美」を授けよう! 受け取るがよい!!』
アルトワールが指を鳴らすと、星詠みの民全員の頭上に黄金の光が降り注いだ。
誰もが「星を再生する奇跡の魔法」や「外宇宙を浄化する力」を期待した。
しかし。
> **【|神域の全自動肩もみ&超・娯楽空間《リラクゼーション・アンド・エンタメ・アンリミテッド》】**
> **効果:** 一万年もの間、防壁を張り続けてガチガチに凝り固まった肩と腰を、神の力で永続的にほぐし続ける。さらに、数万年生きる彼らが「長生きしすぎて暇」という長命種特有の鬱にならないよう、全宇宙・異世界の映画、アニメ、漫画が脳内ホログラムで無限に見放題になる究極の暇つぶしセット。
>
「「「…………えっ?」」」
感動に震えていた長たちの動きが、ピタッと止まった。
『長命種はな! 寿命が長すぎて生きる目的を失いがちなのだ! だがこれがあれば、あと十万年は引きこもってオタ活……いや、有意義な文化研究ができるであろう!!』
アルトワールがドヤ顔で言い放つ。
「神様……。一万年頑張った人たちに、ネトフリの永久無料アカウント配っただけじゃない……?」
リオンが、純粋すぎるツッコミを入れた。
「しかも肩こり解消って……長命種の尊厳が……」
エルフのアイリスが、遠い目をしながら額を押さえる。
『……アルトワール。貴方は本当に、場の空気を読むという概念が欠落していますわね』
アイゼルが冷ややかにため息をつき、リオンに向き直った。
『リオンよ。貴方が今回、星を救っただけでなく、深淵のバグ(星喰い)までSSS級に進化させてテイムしたこと……神として、もう驚くのにも疲れましたわ』
アイゼルは、上空でキラキラと星屑を撒き散らしながらノヴァとじゃれ合っている天鯨リヴァイを見上げて、力なく首を振った。
『ですが、貴方のその狂気的なまでの「慈愛」が、この絶望の宇宙に新しい生態系(キラキラした何か)を創り出しているのは事実。……まったく、貴方の図鑑が完成する頃には、この宇宙はどうなってしまうのでしょうね』
「えへへ、もっと賑やかで楽しい宇宙になるよ!」
神々の降臨とお約束の「斜め上の過保護ギフト」。
そして、SSS級のペットが二匹に増えたアストラル・クルーザー・マキナ。
絶望の海だった外宇宙は、リオンという無軌道な光によって、着実に「最高に楽しくて騒がしいスローライフの遊び場」へと塗り替えられつつあった。




