第78話:神々の驚愕と、星の海を漂う『長命種』のSOS
### 第78話:神々の驚愕と、星の海を漂う『長命種』のSOS
SSS級へと進化した【超新星の神機獅】のノヴァを新たな家族として迎え入れ、リオンたちは機巧の死星を後にした。
白銀の巨艦『星海巡洋機甲』のラウンジでは、恐るべき神話級の猛獣が、まるで巨大なゴールデンレトリバーのように仰向けになり、リオンにプラズマの腹を撫でられて「ゴロゴロ」と喉を鳴らしていた。
「よしよし、ノヴァ。プラズマのたてがみ、フワフワで温かいね!」
『……通常、超高熱プラズマニ触レレバ分子レベルデ蒸発シマスガ……アルトワール神ノ【|絶対安全・モフモフ触覚変換】ニヨリ、マスターニハ極上ノ羽毛ニシカ感ジナイヨウデス』
船のメインシステムと完全に同化している機神竜メテオが、冷静かつ呆れたような電子音声で解説を入れる。
「……平和だ。宇宙の深淵にいるはずなのに、実家よりくつろげる空間になってるぞ」
シンがソファーでコーヒーを飲みながら苦笑いした、その時だった。
**ピピッ……ピピピピッ!!**
作戦室(円卓)のメインホログラムが突如として赤く明滅し、強烈なノイズと共に、二柱の神の姿が実体化する勢いで立体投影された。
#### 1. 神の驚愕:絶望の海に灯る「生命の奇跡」
『ジン! カイト! 今すぐメインモニターの星図を更新しなさい!!』
冥界神アイゼルが、いつになく声を荒らげて叫んだ。その表情には、神としての冷静さをかなぐり捨てるほどの「驚愕」が張り付いている。
「アイゼル様? いったい何が……」
ジンがホログラムを操作しようとした瞬間、カイトの演算鏡が勝手に異常な数値を弾き出した。
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> ※外宇宙における生命存在確率。ゼロに収束するはずの数式が、奇跡的に「1」を維持し続けている異常値。
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「……馬鹿な。外宇宙の瘴気嵐のド真ん中に、バイタルサイン(生命反応)だと!?」
カイトが眼鏡を落としかける。
『その通りだ、カイトよ!』
過保護神アルトワールが、アイゼルの横から身を乗り出してきた。
『我ら神でさえ、とうの昔に全滅したと思っていた! いや、この瘴気の海で生き残れるはずがないのだ! だが、つい先ほど、空間の歪みが晴れた一瞬の隙間から、強烈な【救難祈祷】が神界に届いた!』
アイゼルがホログラムに、座標データと一枚の不鮮明な映像を投影する。
そこに映っていたのは、紫の瘴気に飲み込まれようとしている、美しい透明なクリスタルで覆われた小さな惑星。
そして、そのクリスタルの防壁の内側で、祈りを捧げる**「長く尖った耳と、透き通るような銀髪を持つ、美しい人型生命体」**たちの姿だった。
「……エルフ、ですか? いや、私よりもずっと耳が長く、魔力の質が根本的に違う……!」
エルフの王女アイリスが、映像を見て息を呑む。
『あれは**『星詠みの民』**。数万年の寿命を持ち、かつて星と星の間の調和を司っていた超長命種の末裔ですわ。……信じられません。彼らはこの一万年間、たった一つの星に引きこもり、瘴気の海の中で防壁を張り続けて生き延びていたのです!』
#### 2. 啓示と危機:迫り来る「深淵の星喰い」
神々ですら諦めていた、絶望の海での生存者。
しかし、奇跡はまさに今、終わりを迎えようとしていた。
『だが、事態は一刻を争う!』
アルトワールが、クリスタルの星に迫る「巨大な影」を指差した。
『一万年耐え抜いた彼らの防壁をこじ開けようと、外宇宙でも最悪クラスの特異災害——**『深淵の星喰い』**が接近している! 防壁の崩壊まで、計算上、残り一時間もない!』
「一時間!? この宙域からじゃ、光速で飛んでも間に合わない距離だぞ!」
シンが叫ぶ。
「リオン様! このままでは、一万年を耐え抜いた気高き民が、泥に飲まれてしまいますわ!」
ルミナスが扇子を強く握りしめ、リオンを見た。
リオンはすでに、ノヴァの腹を撫でていた手を止め、艦長席へと走っていた。
その琥珀色の瞳には、揺るぎない決意が燃えている。
「一万年も、ずっと暗い宇宙で怖い思いをしてきたんだね。……カイトさん、メテオ! 絶対に間に合わせる方法、あるよね!?」
リオンの絶対的な信頼を向けられ、カイトは不敵に笑って白衣を翻した。
「……愚問だな、リオン君。俺たちの船のメインエンジンを誰だと思っている?」
#### 3. 急行:空間跳躍の限界突破
『マスターノ命令ヲ受諾。……カイト殿、メインエンジン(超光速魔導ワープ機関)ト、ノヴァ殿ノ【超新星プラズマ】ヲ直結シマス。物理法則ノ限界ヲ、力技デ突破シマス』
メテオの電子音声が響くと同時に、船の最下層から、新入りであるSSS級の神機獅ノヴァが『ガァァァァァッ!!』と力強い咆哮を上げた。
ノヴァのプラズマエネルギーが、メテオの推進器に直接叩き込まれる。
「ジン! 船の操舵は任せた! ルミナス様、アイリス、船体の崩壊を防ぐため、内側から防壁の展開を! ……俺は神の過保護を数式に組み込んで、空間を無理やり『ショートカット』する!」
カイトの指がキーボードの上で残像を描く。
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> ※空間の折りたたみを飛び越え、目的地と現在地を「重ね合わせる」バグ技。
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「総員、衝撃に備えろ! ――アストラル・クルーザー・マキナ、超・空間跳躍!!」
ジンの号令と共に、リオンが艦長席のメインレバーを押し込んだ。
**ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!**
宇宙空間に、星一つが爆発したかのような光の波紋が広がる。
アストラル・アルカは白銀の流星すらも置き去りにし、次元の壁を物理的にぶち破って、漆黒の虚無の中へと消えた。
#### 4. 決戦の宙域へ
――そして、数秒後。
空間がガラスのように砕け散り、巨大なクリスタルの星の眼前に、白銀の巨艦が強引に実体化した。
「……到着したぞ! 防壁の残存魔力、わずか数パーセント! 間に合った!!」
眼下には、ひび割れたクリスタルの防壁と、その中で祈る長命種たちの姿。
そして、その防壁に文字通り「噛み付いて」いる、星より巨大な漆黒の深海魚のような怪物——『深淵の星喰い』の姿があった。
「わぁ……おっきいお魚! でも、みんなをいじめる悪い子は……俺の家族たちがお仕置きだよ!」
リオンが艦長席から立ち上がり、前方を指差す。
「メテオ、主砲斉射! ノヴァ、出番だよ! ――あの中で泣いてる人たちを、絶対に助け出す!!」
『リョウカイ、マスター。全火器、対象ニロック』
『グルルォォォォォォッ!!!』
神々すら諦めかけた一万年の孤独と絶望を終わらせるため、最強のテイマーと過保護な家族たちの、前代未聞の「星間救助ミッション」が、今、爆音と共に火蓋を切った。




