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第83話:魔術の死星と大賢者――雷光の救済と、神の二度目の土下座

### 第83話:魔術の死星と大賢者――雷光の救済と、神の二度目の土下座

 第九銀河の果て。かつて魔法が絶対の理とされた異世界から、抗体アンチウイルスとして召喚された一人の男が、星の命運と共に燃え尽きようとしていた。

 彼の名は**大賢者マグナス**。

 あらゆる属性魔術を極め、神にすら等しい叡智を持った彼は、瘴気の海に沈みゆく『魔術の死星』において、背後にそびえる「真理の大図書館(生き残った数千の民がコールドスリープで眠る聖域)」を守るため、数百年にわたり、たった一人で絶望的な防城戦を繰り広げてきた。

#### 1. 死の淵:崩壊する大賢者の防壁

「……ハァッ……ハァッ……。……くそっ、魔力マナの変換効率が、ついに瘴気の増殖速度を下回ったか……!」

 マグナスの白銀のローブは黒く汚れ、その端正な顔は疲労と絶望で歪んでいた。

 彼の視界を埋め尽くすのは、星の残骸から無限に湧き出す漆黒の化け物たち。中でも、彼の眼前にそびえ立つのは、山のように巨大な四つ腕の怪物——**『絶望の暴食獣グラトニー・ベヒーモス』**だった。

「――【極大殲滅・七重連炎陣(セブンス・ノヴァ)】!!」

 マグナスが枯渇しかけた命の力を振り絞り、最強の魔術を放つ。七色の業火が暴食獣を包み込むが、怪物はまるでそよ風を浴びたかのように無傷で炎を引き裂いた。

 瘴気による絶対耐性。もはや、この星の魔術法則は完全に書き換えられてしまったのだ。

『ギシャァァァァァッ!!』

 暴食獣が、死神の鎌のような巨大な爪を振り上げる。

 マグナスは膝から崩れ落ち、迫り来る死の爪を見上げた。

(……ここまで、か。すまない、皆……。私の魔術では、君たちを救えなかった……っ)

 大賢者は目を閉じ、死を覚悟した。

 爪が振り下ろされ、彼の体を両断する――その、コンマ一秒の隙間の出来事だった。

#### 2. 雷光の救済:間に合った神速

 ――**ガァァァァァァァァッ!!!!**

 宇宙の真空を引き裂くような、獣の咆哮。

 直後、マグナスの閉じた瞼の裏まで焼き尽くすほどの**「白き雷光」**が、死の星の大地を駆け抜けた。

「な……っ!?」

 マグナスが目を開けると、彼の体を両断するはずだった暴食獣の巨大な腕が、根本から綺麗に消失(プラズマ化)していた。

 そして、彼の目の前には、全身からバチバチと神々しい白雷を放つ、巨大な**「白虎」**が立ちはだかっていたのだ。

「ギリギリセーフ! ライガ、ナイススピード!!」

 白虎の背から、一人の少年がふわりと飛び降りてくる。

 琥珀色の瞳を持った少年――リオンは、驚愕で固まるマグナスの肩にポンッと手を置いた。

「怪我はない? 痛いところ、全部治してあげるね!」

 リオンの手から、温かく、そして大賢者の理解をはるかに超えた「理外の慈愛の魔力」が流れ込む。枯渇していたマグナスの魔力が一瞬で全快し、体の傷跡すらも跡形もなく消え去った。

「君は……。いったい、何者だ? 神の使い……いや、天使か?」

「俺はリオン! 通りすがりのテイマーだよ!」

 リオンがニカッと笑う。

 マグナスは、本来ならば極めて用心深い性格であった。見知らぬ者が突然現れれば、まず幻術や罠を疑うのが大賢者の常である。

 しかし、己の命が完全に終わる「最後の一撃」を間一髪で弾き飛ばされ、さらにこの絶対的な温もりを与えられたことで、彼の心に「疑心暗鬼」など入り込む余地は一ミリもなかった。

「……ふっ、ハハハ……。通りすがりのテイマーが、絶望の化身を雷の一撃で消し飛ばすものか」

 マグナスは、数百年の孤独から解放された安堵で、自然と涙をこぼしながら笑った。

「だが……恩に着る。君のおかげで、私の民の命は繋がった」

#### 3. 圧倒的な制圧と、お引っ越し(物理)

 マグナスとリオンが言葉を交わしている間にも、上空から飛来したアストラル・クルーザー・マキナの仲間たちが、残存する瘴気の怪物たちを文字通り「蹂躙」していた。

「カイト! 対象の魔術構成を解析した。……遅れているぞ、理系!」

「ふん、軍師風情が。すでに『暴食獣』の自己再生バグの係数は特定済みだ。メテオ、ノヴァ、主砲のロックを敵のコアへ」

>

> ※カイトの演算。ライガの雷速の運動量とノヴァのプラズマエネルギーの飽和により、敵の質量は完全にゼロへと収束する。

>

 ジンとカイトの指揮のもと、SSS級の化け物たちによる一方的な「お掃除」が開始され、数百年マグナスを苦しめた軍勢は、わずか三分で宇宙の塵へと消え去った。

「……信じられん。私の究極魔術が通じなかった怪物どもが、まるで赤子のように……」

 マグナスが呆然とする中、リオンが指を差す。

「マグナスさん! あの大きな図書館に、君の仲間が眠ってるんだよね? この星ももうボロボロだから、俺の船の『箱庭』にお引っ越ししよう!」

「ひ、引っ越し? いや、あの大図書館には数千の民がコールドスリープで眠っているのだぞ。質量的に船に乗るわけが……」

『キュルルゥゥゥン!』

 マグナスの常識は、上空から舞い降りた天鯨リヴァイが、大図書館を地盤ごと「パクリ」と優しく丸呑みにしたことで、見事に粉砕された。

「……な、なるほど。次元収納機能を備えた神話級の鯨か……。私の数百年の苦労とは、いったい……」

 大賢者は、すべてを諦めたような穏やかな顔で、リオンに手を引かれて白銀の戦艦へと乗り込んでいった。

#### 4. 神の二度目の土下座と、大賢者の休息

 リオンの【無限の箱庭インフィニット・ファーム】。

 緑豊かな森の一角に無事に配置された「真理の大図書館」のテラスで、マグナスはルミナスの淹れた極上の紅茶を飲み、昇天しそうなほどリラックスしていた。

「……美味い。瘴気を含まない、純粋な水と茶葉……。夢のようだ」

「お疲れ様ですわ、大賢者様。さあ、こちらの手作りクッキーもどうぞ」

 そこへ、お約束の黄金と白銀の光が降り注ぐ。

 過保護神アルトワールと、前回に引き続きバツの悪そうな輪廻神クロノアの登場である。

『……マグナスよ』

 クロノアは、大賢者の前に進み出ると、一切の躊躇なく**「ジャンピング・ドゲザ(二回目)」**をキメた。

「なっ!? り、輪廻神様!? なぜ貴方のような最高位の神が土下座を!?」

 マグナスが慌てて立ち上がる。

『本当に、本当に申し訳ありませんでしたぁぁッ!! 異世界から勝手に引き抜いた挙句、数百年間もワンオペで防城戦を強いるなど、神としてあるまじきブラック労働!! どんな罵詈雑言でも受け入れます!』

「い、いや、私は結果的にこうして救われましたし、民も無事ですから……頭を上げてください!」

 生真面目なマグナスが恐縮して神を宥めていると、アルトワールがドヤ顔でしゃしゃり出てきた。

『カッカッカッ! クロノアの謝罪など形だけのもの! 本当の「誠意」とは、こうやってギフトで示すものだ! リオンよ、お前もこの働き者の賢者が、箱庭でゆっくり休めるよう祈ってやれ!』

 アルトワールが指を鳴らすと、マグナスと、眠りから覚めつつある民たちの頭上に、神の光が降り注いだ。

> **【マグナスへの付与:|大賢者の究極・全自動魔導デスク&無限カフェインレス・コーヒーメーカー《スマート・ワーク&リラックス・ブリュー》】**

> **効果:** 数百年のワンオペで染み付いた「過労のクセ」を強制的に癒やす神具セット。デスクに座るだけで、マグナスが頭で考えた魔術理論や本の内容が「自動で最高級の羊皮紙に清書」され、執筆の疲労が完全にゼロになる。さらに、備え付けのコーヒーメーカーからは、どれだけ飲んでも胃が荒れず、カフェインレスなのに魔力が全回復する「宇宙一美味いコーヒー」が無限に湧き出す。

>

「……なっ、これは。私が生涯をかけて開発しようとして頓挫した、究極の魔導具の完成形……! しかもコーヒーが美味すぎる……っ!」

 マグナスが、デスクの椅子(神域のエルゴノミクス構造)に座った瞬間、そのあまりの快適さに「ふにゃぁ」とだらしない声を出してとろけた。

> **【民たちへの付与:|真理の速読と眼精疲労無効・小《マイナー・スピードリーディング&アイケア》】**

> **効果:** 戦闘力は一切上がらない! だが、どれだけ暗い場所で本を読んでも絶対に目が悪くならず、難しい魔導書も「絵本のようにスラスラ読める」ようになる、超・文化系種族のためのQOL爆上がりスキル。

>

「「「おおおおおっ!!」」」

 目覚めた民たちが、図書館の本を読みながら「目が疲れない!」「内容がスッと入ってくる!」と歓喜の涙を流して本にすり寄っている。

「これでマグナスさんも、俺たちの家族だね! 箱庭にはいろんな本があるから、ゆっくり読んでね!」

「……ああ。リオン君、君は本当に不思議な少年だ。君の船に乗っていれば、宇宙の深淵すらも、ただの賑やかな図書室に思えてくるよ」

 疑心暗鬼に陥る隙すら与えない、雷光の如き神速の救済。

 そして神々の土下座と過保護ギフトによって、かつて異世界で最強を誇った大賢者は、完全に「コーヒーを愛する箱庭の愉快な図書館長」へとクラスチェンジを果たした。

 宇宙に散らばる同郷・異世界の転生者たちを救う、リオンの「強制スローライフ救出ツアー」。

 次なるSOSの座標へ向け、最強の魔物たちと新たな家族を乗せた白銀の戦艦は、再び星の海へと光の尾を引いていくのだった。


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